猫の『伝染性腹膜炎(FIP)』は不治の病ではなくなりつつある?知っておくべき4つのこと

猫の『伝染性腹膜炎(FIP)』は不治の病ではなくなりつつある?知っておくべき4つのこと

「FIP(猫の伝染性腹膜炎)」は、かつては治療ができない怖い病気として知られていましたが、今では回復できる可能性が広がっています。ここでは、最近注目されている新しい治療薬の効果や、発症時の対策についてわかりやすくご紹介します!大切な猫ちゃんの健康を守るため、知っておくべき情報をぜひチェックしてみてくださいね。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

1.伝染性腹膜炎(FIP)とはどんな病気?

見つめる子猫

FIP(伝染性腹膜炎)は、猫に感染するコロナウイルスが原因で発症する病気です。

すべての猫が発症するわけではなく、ウイルスが体内で変異した時にのみ病気が進行します。発症しやすいのは1歳未満の子猫で、致死性が高いことから「不治の病」とされてきました。

FIPは病態によって「滲出型」と「非滲出型」2つのタイプの症状が現れます。

滲出型は腹部や胸部に液体が溜まるのが特徴で、腹部の膨張や呼吸困難などが見られます。

非滲出型は体内に液体が溜まらないタイプで、様々な臓器に肉芽腫(炎症によって生じるしこり)を作り、様々な症状を呈します。目や神経系に問題が現れることもあります。

滲出型と非滲出型は時に同時または時間差で発症することもあり、必ずしも区別されるものではありません。

病態によって症状の特徴は異なりますが、共通するのは「食欲低下」「発熱」「嘔吐・下痢」などの症状です。両方のタイプともに進行すると命に関わる重い症状が出るため、早急の対応が必要になります。

2.新しい治療法の登場!

子猫

FIPはかつて「治せない病気」でしたが、最近では「レムデシビル」や「モルヌピラビル」といった人の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬が、猫のFIPに対しても効果が期待できることがわかってきました。

この薬はウイルスの増殖を抑えるため、早期に治療を開始すれば、多くの猫が元気に回復するまで効果をあげているケースもみられるようになりました。

ただし、これらの抗ウイルス薬は国内で動物用に認可されておらず、新薬であるが故に治療データ数が少ないことや、人間も含め長期的な副作用が不明であることは頭に入れておかなければなりません。また、治療するには高額な費用と時間がかかるため、治療を受ける場合は獣医とよく相談する必要があります。

3.予防と日々のケアが大切

寝ている猫

FIPの直接的な予防法はまだ確立されていませんが、心身ともに猫の日々の健康を保つことが重要です。

そこで、病気の予防として取り組みたいのは「良質なフードを与える」「ストレスの少ない環境を整える」「免疫力を高める」ことです。猫が病気になりにくい体づくりを意識した毎日のケアが予防につながります。

FIPは特に多頭飼いでの発症が多いことから、不衛生な生活環境、過密空間、相性の悪い猫同士の同居といった持続的なストレスがリスク因子と考えられています。

多頭飼いの場合は、「トイレや食器を別々にし、清潔に保つ」「猫同士の相性を踏まえ、不要な接触を減らす」といった感染予防とストレス軽減の対策を取ることも意識して行うようにしましょう。

4.早期発見と治療が回復のポイント

段ボール箱に隠れるネコ

FIPは早めの治療がとても大事です。もし猫がいつもと違う様子を見せたら、すぐに動物病院で診察を受けましょう。

猫は体調不良や病気の症状を隠す傾向があり、飼い主が目に見えてわかる症状に気づく頃には、病気がすでに進行していることが少なくありません。通常とは異なる猫の違和感は、病気のサインとして疑うようにしましょう。できるだけ早く対処することで、回復するチャンスも高まります。

まとめ

上を向く子猫

FIP(伝染性腹膜炎)は、以前は治療法がない病気とされていましたが、最近の研究により新しい治療薬が登場し、回復する例が増えてきています。

ただし、これらの治療薬は日本ではまだ動物用として正式に認可されておらず、入手が難しいことや高額なため、飼い主には経済的な準備や情報取集などが必要です。

また、猫の健康を守るためには、日々の健康状態を注意深く観察し、異変に早く気づくことが非常に重要です。早期発見は、治療の成功率を高めるための鍵となります。最新の情報を取り入れ、猫の命を守るための選択肢を増やしていきましょう。

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