「ネズミ捕り」から「愛するペット」へ…猫のイメージを一新させたのはキャットショーだった 英国

「ネズミ捕り」から「愛するペット」へ…猫のイメージを一新させたのはキャットショーだった 英国

19世紀の英国では野良動物と考えられていた猫。人々の意識を変えたのは、ある男性の熱意でした。彼は初めてキャットショーを開催し、猫が愛らしく美しいペットであることを人々に教えてくれたのです。

キャットショーを初めて開催

飼い主とともにショーに参加したベンガル猫

画像はイメージです

1860年代の英国では、猫は「みすぼらしくてよく鳴く、ネズミ捕り用の野良動物」とみなされていました。猫のかわいらしさや抱き心地のよさ、人間と意思や感情を交流できるすばらしい能力は、まったく評価されていなかったのです。

しかし、ある男性が人々の観念を一変させました。その人の名はHarrison Weir。彼は猫を崇拝し、英国で初めて「キャットショー」を開催しました。

彼は動物好きで、ニワトリやハト、犬、ウサギなども愛したのですが、猫については「もっとも完璧で、ほかのどの動物よりも飼いやすいすばらしいペット」と信じていました。

そんなHarrisonも当初は猫に偏見をもっていたようで、1889年の著書『Our Cats and All About Them』で、「こう考えるようになるまでには時間がかかった」と告白しています。しかし、ひとたび猫好きになった彼は、「その魅力を世間に広める伝道師」へと変身したのです。

彼は猫の洗練された美しさを知ってもらうため、キャットショーを開くことを思いつきました。

猫の美しさと魅力をアピール

ビクトリア時代の扮装をした猫

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彼は審査の正当性を確保して上流階級の観客を引き付けるために、品種や大きさで猫をグループに分け、きびしい審査基準も設けました。そして兄の JohnとReverend Macdona牧師とともに、みずからも審査員をつとめたのです。

イベントマネージャーに任命したF. Wilsonと協力して猫を飼っている知人に連絡し、多くの猫を集めることに成功しました。

当日、ショーに参加するためクリスタルパレス行きの列車に乗っていたとき、偶然出会った友人にHarrisonがキャットショーのことを説明すると、その人は大声でこういったのです。

「猫のショーだって?やめてくれ。わたしは猫が嫌いなんだ」

それでもその日のショーは大成功でした。さまざまな大きさや色、毛並みをもつ猫たちが深紅のクッションに載って飼い主とともに参加し、観衆の目を楽しませてくれました。

会場に居並ぶさまざまな品種が注目を集め、これまで知られていなかった猫の美しさと魅力を人々にアピールすることができたのです。

猫への意識が大きく変わった

ショーで優勝し、メダルをもらった猫

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1871年に初めてのショーが大成功をおさめたことで、猫に対する一般の意識も変わってきました。徐々に猫を飼う家族が増え、全国でショーが開催されるようになったのです。

そこで1887年にHarrisonは「National Cat Club」を設立して、みずから会長をつとめました。同年に開催したキャットショーには、320匹以上の猫が参加したといいます。

しかし数年後、猫の幸せを追求するより賞を獲得することに意欲的な同Clubの会員たちとHarrisonの考え方は対立するようになり、彼は会長としてこの組織にかかわったことを後悔するようになりました。

それでもキャットショーのおかげで、猫がもはや「汚くて邪悪な存在」と見なされなくなったのも確かです。「Lady’s Realm」誌にも1900年に下記の記事が掲載されています。

「Harrisonは、猫に対する意識を大きく変えました。この30年間で、路上で追われる野良から、暖かい暖炉の前でくつろぐぺットへと、猫は変貌しました。かれらの生活環境は大きく変わったのです」

出典:How England’s First Feline Show Countered Victorian Snobbery About Cats

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