50匹超の猫が暮らす美術館
ロシアのサンクトペテルブルクにある「エルミタージュ美術館」の地下室には、50匹を超える猫たちが暮らしています。
「koshachiy dom」(猫の家)と呼ばれる大部屋では、美術館の職員が世話を続けており、猫たちの健康を守るために獣医まで待機しています。
建物の中には、ほかの猫を避けて過ごしたい「非社交的な猫」のための特別な部屋も用意されています。どの猫も、地下室の廊下をうろついたり、配管の上に寝そべったり、あちこち歩き回ったりして自由に過ごすことができます。
美術館には、猫のための専属広報担当までいます。彼女によると、猫たちは展示室に入ることは許されておらず、一般の人が目にすることはめったにありませんが、それでもここの「猫人気」は大変なものなのだそうです。
ネズミ捕りのために猫を導入
エルミタージュ美術館には、築300年近い5つの建物があり、当初から猫の住まいになっていました。宮殿の地下室でネズミを捕まえるために、約1200キロも離れたKazanからわざわざ猫を連れてくるよう、エリザベート1世が命じたのが始まりです。
その後、エカテリーナ2世の統治下で、本格的な美術品のコレクションが始まりました。彼女は猫たちを「美術館の守護者」と呼んで褒めたたえたといいます。ここはずっと王室の私設美術館でしたが、1852年になってニコライ1世が一般公開することを決めました。
保護猫たちの安全な「住まい」に
その後はソビエト連邦となったものの、1991年に体制が崩壊して社会は混乱状態に陥りました。国民は生活に困窮してペットを路上に捨てざるを得なくなったのです。
このときエルミタージュ美術館の館長だったPiotrovsky氏は、当時地下室にいた数匹の猫たちに加え、大勢の野良猫を保護して引き取ることを決めました。
その理由について同館長は、猫を受け入れることで「人間性の象徴、動物に対する人間の愛情の象徴」を示したかったと振り返っています。ただし「反対意見もありました。みんなが猫のにおいを好むわけではないですから」とも話しています。
長い間、美術館の職員が勤務時間外に猫たちに餌をやったり世話をしたりしてきましたが、現在では一般からの寄付金も受けています。毎年開かれる美術館の「猫の日」には、多くの子どもたちが集まり、猫について学んだり猫の絵を描いたりして楽しく過ごしています。
もちろん今でも、これらの猫たちは忠実にネズミ捕りの任務を果たしています。最年長は22歳という高齢ですが、立派に活躍しているそうです。
「猫たちの近くを通ったネズミは、必ず捕まえられます。みんなとてもいい仕事をしていますよ」
出典:The real life ‘Aristocats’ of St. Petersburg’s Hermitage Museum