猫の税金を検討中
アフリカにあるケニアの首都ナイロビ市当局は、「猫の税金」の導入を提案しています。
この案では、飼い主に年間登録料200ケニアシリング(約223円)と狂犬病予防接種の証明書の提出を義務づけるとともに、飼い猫の行動を管理して、大声で鳴かないようにすることを求めています。
とくに、発情期の猫を屋外に出すことを禁止しています。順守しない場合は、懲役刑を含む罰則が科せられることになります。これは、増え続ける野良猫の抑制と狂犬病の蔓延を防ぐことをめざしたものです。
案に対して、猫好きの市民は大反対の声をあげています。
SNS上では「まず生理用品に課税して、次は猫の飼い主に課税だって? うちの猫に手を出さないでほしいね!」と抗議する意見も多く投稿されています。
野良猫が多い現状では、この提案がどの程度効果があるか疑問視する市民も多いのです。市内の猫の総数は不明ですが、いたるところに大勢の野良猫がいて、道路をうろついたりゴミ捨て場やレストランで餌をあさったりしています。
一方で保健省によると、毎年約2000人が犬や猫に噛まれて狂犬病で亡くなっているといいます。
今後は公聴会で意見を聞き取り
Naomi Mutuaさんは12匹の猫を飼っていて、自分を「猫の母」と呼ぶほど大の猫好きです。彼女はまた約2万5000人の猫好きが参加するFacebookグループを運営しています。今回の市当局の提案が、飼い主や保護団体、獣医団体などに相談もなく進められたことに遺憾の意をあらわしています。
「狂犬病ワクチン接種の義務化は正しい方向ですが、実際にどのように運営されるのかが不明です」と話すNaomiさんです。
「まずは、動物へのケア体制を改善することが先決です。しかも(多くが屋外で飼われている現状では)発情期の猫を家に閉じ込めるのには無理があります」
今後は公聴会が開かれ、新税導入に関する市民の意見を聞くことになります。その後修正案の検討へと進み、条例化される予定になっています。
避妊手術への援助を求める声も
「Kenya Society for the Protection and Care of Animals」(KSPCA)代表の Emma Ngugiさんは、「今回の提案は、ペットの福祉を向上させるために歓迎すべきものです。ただし税の導入によって、飼い主が猫を飼っていることを認めなかったり、猫を捨ててしまう可能性もあるので、実際の効果は薄いと考えています。わたしたちのような地域の保護団体にとっても、人々が無責任な行動をとることで活動がより難しくなるでしょう」と話しています。
Emma さんはさらにこう続けます。
「猫が過剰に繁殖している現状は、大きな問題です。狂犬病に感染した猫は人間の健康にも大きな危険をもたらします。ぜひ政府は低価格の獣医サービスを導入して、飼い猫や野良の犬猫を対象に避妊や去勢手術を大規模に行ってほしいと思います。猫の避妊手術の費用は、一部のケニア人にとって 1ヵ月分の賃金に相当するので、とても難しいからです」