帰巣本能とは
帰巣本能とは、動物が自分の住み慣れた場所や巣に戻る能力を指します。これは多くの動物に見られる現象で、例えば渡り鳥が毎年同じ場所に戻ってくることや、サケが産卵のために生まれた川に戻ることなどが挙げられます。
帰巣本能は、生存や繁殖の成功に不可欠な役割を果たしており、動物たちが迷わずに自分のテリトリーに戻れるように進化してきました。
猫の場合も同様に、どれだけ遠く離れても自宅に戻る力があると言われています。しかし、猫の帰巣本能がどのように機能するのかはまだ完全には解明されていません。
猫の『帰巣本能』についての説3つ
ここでは、猫の帰巣本能について考えられる3つの主要な説を詳しく見ていきます。
1.磁気感受性による帰巣本能
磁気感受性は、動物が地球の磁場を感知し方向を認識する能力です。渡り鳥や海亀がこの能力を使って長距離を移動するのはよく知られており、猫も同様に磁場を利用する可能性があるとされています。
研究者たちは猫の脳内に磁気を感知する細胞が存在する可能性を指摘しており、これが帰巣本能に関連しているかもしれません。
1970年代の実験では、異なる場所から自力で家に戻る猫を観察し、一部の猫が地球の磁場を利用して正確に帰ることができたことが示されました。
2.体内時計による帰巣本能
伝書鳩は太陽の位置から自分の戻るべき場所を見つけているといわれますが、猫にもその力があるのではないかと考えられています。
猫には太陽の位置から時間を感じる体内時計があり、自分の戻るべき場所から離れると、太陽の位置と体内時計にズレが生じ、そのズレから帰る方向がわかるのではないかという説があります。
3.「感覚地図」による帰巣本能
猫の視覚や嗅覚などの感覚をもとに、「感覚地図」という地図を作っているという説があります。
猫は優れた視覚と嗅覚を持ち、テリトリー内の地形や目印を詳細に記憶することが可能です。
また、猫は外出中に建物や木々、道の曲がり角などを記憶し、帰宅の道筋を辿ります。視覚的な手がかりが豊富な場合、猫は迷うことなく目的地にたどり着くことができるといわれています。
猫の帰巣本能を裏付ける事例
ここでは、実際に過去起きた奇跡のような事例をみていきましょう。
約300kmを2ヵ月かけて歩き続けた猫「ホリー」
アメリカで実際に起きた事例で、自宅から約300km離れた場所に外出した際に逃げ出してしまった飼い猫「ホリー」の話です。
飼い主さんはホリーがいなくなった場所周辺を探したり、迷子チラシを配ったり懸命に探したそうですが見つからず途方にくれていました。
ところが約2ヵ月後、飼い主さんの自宅近くに住んでいた女性が保護した猫のマイクロチップを確認したところ、いなくなったホリーだったというのです。
保護された当時のホリーはとても衰弱してやせ細り、肉球の皮はすりむけていたそうで、自力で歩いてきたことをあらわしています。
長野県から東京都まで帰ってきた「トラ」
日本国内にも同様に、猫の帰巣本能を証明する事例があります。
飼い主さんの結婚を機に、自宅のあった東京都から実家の長野県へ引っ越すことになった「トラ」。しかしトラは引っ越し後実家からいなくなってしまいます。
なんとトラは、5ヵ月後に東京都に自力で戻ってきたのだそうです。幸いにも東京都には飼い主さんの姉が近所に住んでいたので、トラは無事に保護されました。
長野県から東京都も、距離にすると200km以上はあります。どのようにして帰ってきたのか非常に興味深い事例でした。
まとめ
猫の帰巣本能についてはまだ解明されていない部分が多く、今後の研究では、より詳細な実験や観察を通じて、猫がどのようにして自宅に戻るのかを明らかにしていくことが期待されます。
今回ご紹介したホリーやトラ以外にも、猫が遠いところから自力で帰ってきたという報告はたくさんあります。人にはわからない、不思議な力が猫にあるのはとても興味深いですね。