市販薬の成分で、特定の猫に「神経障害」の可能性が 米研究者が研究結果を発表

市販薬の成分で、特定の猫に「神経障害」の可能性が 米研究者が研究結果を発表

市販の寄生虫予防薬によって、一部の猫に重い副作用があらわれる現象を調べた研究者らは、特定の「遺伝子変異」が原因であることを発見しました。一般的に使われる薬ですが、この変異をもつ猫は使用を避ける必要があるといいます。

遺伝子変異をもつ猫には、重い副作用のリスクが

顕微鏡をのぞく研究者たち

画像はイメージです

米国ワシントン州立大学(WSU)の研究の結果、ある遺伝子の変異をもつ猫は、「エプリノメクチン」に対して重い副作用が出る可能性があることがわかりました。そのような猫は、100匹中1匹(つまり全体の1%)いるといいます。

エプリノメクチンの有効成分は、猫用の寄生虫駆除・予防薬の一部に使われています。大部分の猫にとってこの薬は安全ですが、猫が「MDR1遺伝子変異」をもっている場合、副作用はたいへん重く、場合によっては重度の多発神経障害を起こして亡くなることもあるといいます。

研究チームは、遺伝子変異のある猫は「エプリノメクチンなどの薬剤成分が脳に重い神経障害を起こすのを防ぐしくみ」が働かないことを発見しました。

「『飼い猫がエプリノメクチンに対して重篤な反応を起こした』という報告が多数寄せられています。これは薬自体の問題ではなく、遺伝子変異が原因です。米国内には6千万匹以上の飼い猫がいますから、その1%に当たる60万匹は危険にさらされています。これはかなりの数です。こうしたリスクをみなさんに知っていただきたいですね」というのは、今回の研究のリーダーを務めたKatrina Mealey博士です。

神経障害で亡くなる猫も

治療を受ける猫

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「Veterinary Pharmacology and Therapeutics」誌に掲載された研究では、エプリノメクチンを含む製品を使ったあとで副作用を示した33匹の猫について、くわしい調査を行いました。

そして潜在的に神経の障害がある猫を除外した結果、14匹の猫には「MDR1遺伝子変異」以外に特別な問題がないことがわかったのです。そのうち8匹の変異は「ホモ接合体」(「AA」「aa」のように、2つの同じ遺伝子を持っている状態)であり、この状態が発生するのは、ネコ科動物全体の1%未満です。

残念ながら研究対象となった数匹の猫が中毒症で入院し、このうち「ホモ接合体」をもつ3匹は多発神経障害のため亡くなってしまいました。ほとんどが10歳未満の比較的若い猫だったようです。

エプリノメクチンの副作用には、「バランス感覚の欠如」「よだれ」「震え」「部分的な麻痺」「瞳孔の拡張」「昏睡」「発作状態」などがあります。

なかには、エプリノメクチンの使用後、数日から数週間の間は完全に舌を引っ込めたり、使用したりすることができない状態になった猫もいました。

薬には警告表示も必要

寄生虫予防剤を注入される猫

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通常は、寄生虫予防薬は猫の体の一部に塗布するため、全身に吸収されるまでに時間がかかります。副作用も数時間後にあらわれるので、「愛猫に薬を使用したら、最大12時間は様子を観察して注意する必要があるでしょう」とMealey博士らはいいます。

「今回の研究結果でわかったのは、『遺伝子変異を持つ猫は、エプリノメクチンを含む製品によって重篤な副作用を示す危険が高いため、使用を避けるべきである』ということです。将来的には、薬の説明にこうした警告をきちんと表示すべきでしょう」とMealey博士。

なお、愛猫にMDR1遺伝子変異があるかどうかを知るには、遺伝子検査を実施する必要があります。

出典:Genetic mutation could cause severe reactions from feline parasite preventatives

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