1.「ええ加減にせんかい!」
猫パンチにはシーンごとに強弱があります。もちろん、最もバイオレンスなのは、猫同士の闘争時の猫パンチです。爪を出したうえで高速連打、猛攻撃します。ただ、よほどのことがない限り、飼い主さんに対しては使いません。ある意味、禁じ手です。
とはいえ、爪を出さないまでも、かなり強烈なパンチをお見舞いする状況もあります。多くの場合、猫にとって不快、苦手なことを無理強いした結果です。
定期検診などで動物病院へ連れていく際、キャリーケースになかなか入ってくれずに苦労する飼い主さんもいるかもしれません。言うまでもなく、愛猫は、病院嫌い、キャリーケース嫌い、さらに移動のための抱っこも大嫌いです。
タオルや洗濯ネットを使ってもうまくいきません。愛猫は徹底抗戦の構えです。前回、どうやって入ってくれたのか、それすらもわかりません。飼い主さんは少しぐったり。病院の予約時間は迫っています。
気持ちを入れ換えて、再び挑戦すると、突然、愛猫からかなり強めの猫パンチが飛んできます。思いがけないスピードとハードパンチャーぶりに飼い主さんは驚くばかりですが、一方で、正反対の思いも浮かんできます。
「なんてかわいいんだ!」ポカスカ殴打してくる愛猫に萌え、打撃の痛みさえも甘美に感じてしまう。あんなに怒っているのに、爪を出さない心遣いもたまらない。そんなふうに思う自分はきっとネコ沼の住人…。
今日はやめておくか。そう考え直し、飼い主さんは、事情を話したうえで、動物病院の予約をキャンセルします。
2.「イライラするなぁ!」
猫はしっぽだけでなく、他のしぐさでも自身の感情をあらわします。やや強めで、けれど本気度は薄め、といった猫パンチだった場合、不機嫌やイライラの意味がほとんどです。
たとえば、急に愛猫が甘えてきたとします。飼い主さんは「たまった洗い物を片づけなきゃ」と思っているのですが、愛する者のリクエストなら仕方ありません。というか、めったにないチャンスです。地位も名誉も捨てて、すぐに愛猫のもとへ駆けつけます。
普段はクールな愛猫ですが、いったん甘えモードになると、とんでもなく天使です。やさしく撫でながら、ホクホク気分に浸っていると、すでに異変が…。愛猫がしっぽをパタパタと激しく振っています。「そんなにうれしいんだね!」。猫飼いデビューして間もない飼い主さんは、目的地とは違う電車に乗ってしまったことには気づきません。
やがて、目の前で何かが小刻みに揺れています。サウスポーで連打する愛猫のジャブです。「よっぽど気持ちがいいんだね!」飼い主さんは、悪夢行きの片道キップを握ったまま、もう後戻りできません。数秒後、衝撃の右腕カプリ事件が勃発します。
3.「遊んで遊んで!」
まるで手招きするかのように、ソフトに猫パンチしてきた場合、「遊んで遊んで!」のサインかもしれません。同時に、初めてのものに出会ったとき、リサーチの意味でチョイチョイとパンチすることもあります。
洗濯物を畳んでいる飼い主さんのそばに、愛猫がスッと歩み寄ってきます。じっと見上げながら、誘うようにやさしい猫パンチ。ピンと来た飼い主さんは、最近、ネットで購入したおもちゃのボールを持ってきて、愛猫の前に置きます。
愛猫にとっては初見のおもちゃです。興味津々で近づき、チョイチョイと猫パンチを数発、食らわします。動くたびに鳴る鈴の音に、愛猫の興奮度はアップ。不規則に転がっていくボールを早速、追いかけます。気分はすでにハンターモードです。ボールを小動物に見立て、パンチとアタックを繰り返します。
愛猫のちょっとした行動から意図を読み取り、最適な選択肢を選ぶ。幾度ものトライ&生傷を繰り返し、猫飼いとしてたくましく成長した証拠です。ドッタンバッタン、夢中でボールを追いかけ回す愛猫の姿を眺めつつ、心の中で「してやったり」。飼い主さんは、残りの洗濯物をさっさと片づけます。
まとめ
猫パンチのレベルは、大きく分けて、強、中、弱の3つです。パンチの強さはそのまま愛猫の心理状態をあらわしています。怒っていると強めで、不機嫌やイライラは中ぐらい、遊びのおねだりや構ってのサインはソフトタッチです。
パンチに込めた愛猫の気持ちを読み取り、そのつど適切な対応を心がける。それこそ飼い主さんの鑑かもしれません。かわいいからと言って、猫パンチを誘発する行動ばかりしていると、そのうち、容赦ない鉄拳が飛んできます。ご用心あれ。