1.排泄後は無防備なため
猫がハイになる理由は、野生時代のトイレの場所にヒントがあります。
猫が好んだとされるトイレスポットには、2つの説があります。
ひとつめは、縄張りから離れたところで済ませていたというもの。排泄中、とくに排便中は長時間無防備になるため、敵に見つからない場所で済ませる必要がありました。このことから、「無防備な時間が終わった」という安心感でハイになると考えられています。
ふたつめは、テリトリー内にトイレスポットがあったというもの。自分のテリトリーであることを他の猫に告げる格好のアピール方法ですが、敵に見つかりやすくなるという面もあります。そのため、排泄が終わったら即座に逃げる必要があったというわけです。
また、排泄後に必死の形相で砂をかけるのは、できるだけ便のニオイを消したいからだと考えられます。
2.自律神経が切り替わるため
自律神経が「トイレハイ」に関わっているという仮説もあります。
排泄中は無防備になりやすいということからもわかるように、副交感神経が優位に働きます。排泄が終わると今度は交感神経が優位になり、一時的に興奮状態に。走り回ったり砂かけに夢中になるのは、自律神経の切替によって起こっているというわけです。
ちなみに排泄前も交感神経が優位に働くため、トイレに行く前に猛ダッシュする猫もいます。部屋中を走り回ったと思ったら、そのままトイレに入っていった…なんて光景を見たことがあるかもしれませんね。
しかし、排泄によって自律神経が切り替わるのは猫だけではありません。犬でもトイレハイのような行動が見られることもありますが、人間で共感できる人は多くないのではないでしょうか。そのため、自律神経だけがトイレハイの要因になっている可能性は低いといえます。
3.飼い主にアピールするため
飼い猫に限ったものになりますが、「トイレハイ」をするのは、飼い主さんに対してのアピール、という仮説もあります。
猫はとってもキレイ好きな動物です。トイレが汚れているのを非常に嫌うため、「早く掃除してほしい」という意味でハイになっているのかもしれません。
とくに普段からおしゃべり好きな猫では、排泄後に「ギャオー」と大声を張り上げることがあります。この行動は確かになんらかのアピールをしているように見えるため、このような仮説が生まれたのでしょう。
ちなみに、『排泄後は爽快感があるからハイになる』というシンプルな仮説も存在します。「出たぞ~!」という具合に、スッキリして走り回ったり暴れていると考えると可愛らしく思えますね。
放っておいても問題なし!
猫の「トイレハイ」は習性によるものなので、基本的には放っておいて問題ありません。むしろ、本能に関わる行動なので、やめさせることは難しいです。とくに『昔からトイレハイを習慣にしている猫は、しつけでどうにかなるわけではない』ということを覚えておきましょう。
ただし、愛猫の「トイレハイ」が、ある日突然始まってしまった場合は、トイレそのものや周辺環境に不満がある場合があります。野良で生きる猫の中には、周りが見渡せるひらけた環境でトイレをし、その場をゆっくり立ち去る猫もいます。このことからも、「トイレハイ」がトイレ自体や周辺環境への不満から起きている可能性が否定できません。たとえ大好きな飼い主さんであっても、「誰かの存在」が刺激になって「トイレハイ」を引き起こしている可能性も考えられます。
トイレのフチに足をかけながら排泄したり、砂かけもせずに飛び出したりしている場合は、こまめにトイレ掃除をする、場所を変える、より大きいトイレを別で準備する、猫砂の種類をいくつか用意する、トイレ中と後はひとりにしてあげるなどして、猫の気に入るトイレ環境を探ってあげるのがおすすめです。
また、排泄物がいつもと違わないかを確認することも大切です。軟便だったり便秘気味の硬い便だったり、血尿が出ていたりしていないかをチェックしましょう。
あまりにもしつこく泣き続けている、触ると痛がるという場合は、愛猫の排泄物を持参した上で動物病院を受診してください。
まとめ
今回は、「トイレハイ」の理由について紹介しましたが、どれも科学的に証明されているわけではありません。
いずれも猫の習性や状況から人間が考えた理由であり、もしかするともっと違う意味があるのかもしれません。
とはいえ、猫の「トイレハイ」は多くの猫に見られ、猫や人が怪我をするほどでなければ異常行動というわけではありませんので、猫のユニークな一面として温かく見守ってあげましょう。