猫からうつる厄介な皮膚病『疥癬』原因や症状、治療法を解説

猫からうつる厄介な皮膚病『疥癬』原因や症状、治療法を解説

愛猫ちゃんが耳まわりを必要以上に掻いていたら、何らかの皮膚病に罹っているサインかもしれません。今回の記事では、代表的なものとして「疥癬」を紹介します。どんな病気なのか、飼い主のみなさんはぜひ知っておいてください。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の疥癬は要注意

疥癬に感染した猫

疥癬は「かいせん」と読み、ネコショウセンコウヒゼンダニ(以下、ヒゼンダニ)がきっかけで起こる皮膚感染症です。狂犬病や鳥インフルエンザ、エキノコックスと同じように、動物との接触で人間も感染します(人獣共通感染症)。

ヒゼンダニは、肉眼レベルでは見えないほど微小なダニです。皮膚の角質層にトンネルを掘るように入り込み、寄生し始めると、排泄したり、卵を産みつけたりします。

孵化から成虫になるまでは約2週間、感染から発症するまでの潜伏期間は約2~6週間です。

ヒゼンダニそのもの、あるいは、残した排泄物に対してアレルギー反応が起こると、症状として強い痒みがあらわれます。

この症状があらわれると疥癬のサインかも

耳を掻く猫

人間が感染すると、一時的に症状は出ますが、ほとんどのケースで自然に回復します。ただし、猫の疥癬はかなり厄介です。症状があっという間に全身へと広がっていきます。以下のチェック項目に当てはまると、愛猫が疥癬にかかっているかもしれません。

  • 耳の先端がかさぶたになる
  • 皮膚の厚みが増し、乾いたように硬くなる
  • フケや発疹、赤いぶつぶつが目立つ
  • しきりに頭を振る
  • 激しく掻きむしる

疥癬の症状は、多くの場合、耳まわりを中心にあらわれ始めます。そして、非常に問題なのは、強烈な痒みです。思わず掻きむしらずにはいられないほどで、皮膚炎になったり、出血、化膿を伴ったりすることもあります。

とりわけ、免疫力が弱い子猫やシニア猫は要注意です。症状が悪化しやすく、程度によっては命に関わることもあるため、決して楽観視できません。

どうやって感染するのか?

外猫たち

疥癬は、感染した個体との接触を通じて、猫から猫へと広がっていきます。いちばん感染リスクが高いのは、他の猫たちと接触機会の多い外飼い猫です。

また、多頭飼育下では、必然的に感染拡大の危険性が高くなります。タオルやブラシといった共有グッズでも感染するので、個別に使い分けるなどして、しっかり対策しましょう。使用後は消毒することも感染拡大を予防する手段として重要です。

猫同士の直接的な接触以外にも、感染ルートがあります。たとえば、飼い主のみなさんも外で他の猫と戯れる機会があるかもしれません。

もし疥癬に感染した猫だった場合、知らないうちに、服に付着したヒゼンダニを持ち帰っている可能性も考えられます。

疥癬はねこちゃんに強烈な痒みをもたらすストレス源です。人が寄生されると強烈な痒みをもたらします。他の猫と関わった後は、十分に気をつけてください。

疥癬の治療法とは?

イベルメクチン

まずは、感染の有無を調べるため、皮膚検査(皮膚掻爬検査、セロテープ法など)です。診断の結果、感染が判明すると、イベルメクチン(注射、あるいは内服薬)、セラメクチン(スポットタイプ)などの駆虫薬を使い、身体に広がったヒゼンダニを取り除いていきます。

一回の治療で症状はかなり改善されますが、これらの薬剤はヒゼンダニの卵には効果がないため、孵化から成虫になるタイミング(約2週間後)を見計らって、複数回、投与する必要があります。完治可能な皮膚病なので、早めに病院に連れていってあげてください。

ちなみに、イベルメクチンを発見したのは北里大学特別栄誉教授の大村智博士です。その功績を称えられ、2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。

まとめ

病院の猫

猫の疥癬は、猫同士の接触で感染します。いったん感染してしまうと、耳、顔、首、さらに全身にかけて症状が拡大。掻きむしるほどの激しい痒みは、猫ちゃんの幸せな暮らしを壊す脅威です。

人間と違って、放っておいても猫の疥癬は治りません。適切な治療が不可欠です。症状があらわれ始めたら、すぐに動物病院に行きましょう。

予防対策として、完全室内飼育、常日頃から清潔な生活環境を整えることも大切です。ねこちゃんの疥癬予防効果がある薬を毎月投与することも大事でしょう。

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