動物愛護法に明記された飼い主の責任
動物の愛護と適切な管理のために、1973年に「動物の愛護及び管理に関する法律(※)」(以下、動物愛護法)が制定されました。その第7条には、飼い主が果たすべき責任として、6つのポイントが挙げられています。
- 健康と安全の保持と迷惑防止
- 病気の知識と予防
- 逸走防止
- 終生飼養
- 繁殖制限
- 身元表示(所有表示)
少し難しい表現もありますが、簡単に言うと「他人(周辺)に迷惑かけることなく、快適な飼育環境を整え、最後まで責任を持ってお世話しましょう」ということです。
みなさんにとっては当たり前の内容かもしれません。ただ、道義上だけではなく、動物愛護法の上でも飼い主の責任が明記されている点は、ぜひ覚えておいて欲しいことです。
猫(ペット)を飼うことは、命を預かること。動物愛護法は、その責任の重さを改めて伝える内容となっています。
※1973年成立当時の名称は「動物の保護及び管理に関する法律」。1999年の改正時に「動物の愛護及び管理に関する法律」に変更されました。
改正法ではマイクロチップ装着が義務化に
動物愛護法は、これまで計4回改正されています。その中でも、大きな変化があったのは、2019年6月の改正です。
その理由として、動物虐待や多頭飼育崩壊、悪質ペット販売業者などの社会問題があります。前項でも触れた飼い主としての責任を明確化し、不適切な飼育に対する罰則を強化しました。
みなさんにとって身近な変化は、やはり、マイクロチップ装着の義務化でしょう。動物愛護法第39条の2関係に「マイクロチップの装着に係る義務」として記されています。
マイクロチップは、直径1~2mm、長さ8~12mmぐらい、細長いカプセル状の電子標識器具です。世界にひとつしかない15桁の個体識別番号が記録されています。この番号に紐付けする形で、飼い主の個人情報がデータベース化(自身で要登録)されるしくみです。
2022年6月1日に改正内容が施行され、以降、ブリーダーやペットショップなど、販売業者から迎え入れる犬猫については、あらかじめマイクロチップが装着されるようになりました。
また、施行前から犬猫を飼っている人や譲渡を受けた人、保護団体に対しては、マイクロチップ装着を「努力義務」として規定しています。
阪神大震災や東日本大震災などの災害時、数多くの犬猫が迷子や行方不明になりました。マイクロチップの義務化は、そういった教訓のもと、導入された背景があります。
条例で知る自治体の取り組み
法律だけでなく、各自治体が定める条例もまた、みなさんには無縁ではいられません。例として、2つの自治体を紹介します。
和歌山県の取り組み
和歌山県は、地域の環境保全と猫の殺処分削減を目的として、2017年4月1日に「和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例」を改正施行しました。飼い主のみなさんにも関わる項目は、以下の通りです。
- 所有者を明確にする義務(飼い主の名前と連絡先が記入された首輪、名札、マイクロチップの装着)
- 糞の後始末の義務(公の場所やよその家でした場合)
- 屋内飼養の努力義務
県知事指導のもと、助言、勧告、命令を経て、それでも改善されない場合、5万円以下の過料が料せられます。
鹿児島県奄美市の取り組み
一方、沖縄県などの離島では、希少野生動物保護も重要な問題になります。たとえば、鹿児島県奄美大島全5市町村は、国の特別天然記念物、アマミノクロウサギを含む希少野生動物保護の観点から、2017年に「飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例」を改正しました。
以下は、奄美市の条例の一部抜粋です。
- 飼い猫の登録
- 首輪やマイクロチップの装着
- 外飼い猫の不妊去勢手術
- 飼い猫の譲渡、引っ越し、死亡の際は市役所へ報告する
- 飼い猫以外にみだりに餌を与えないこと
- 多頭飼育(5匹以上)希望の場合は、市役所に許可申請する
以上のルールを守らず、行政からの指導、勧告、命令でも従わないと、5万円以下の過料となります。
まとめ
今回の記事では、猫にまつわる法律や条例をテーマに、動物愛護法と2つの自治体の取り組みを紹介しました。
時代や社会情勢に合わせ、法律や条例の内容もそのつど変化していきます。昨今の際立った特徴は、不適切な飼育に対する罰則の強化と屋内飼育の推奨、マイクロチップ装着の義務化と言っていいでしょう。
飼い主としての責任を改めて見つめ直し、法律や条例上のルールを守りつつ、これからも愛猫を大切にお世話してください。