猫の「性別」による相性度
ペットフードに関連するある社団法人の調査によると、猫を飼っている家庭の1世帯あたりの平均頭数は1.77匹で、同じく犬を飼っている家庭の1.24匹と比較すると、猫の方が多頭飼育の比率が高いということが分かります。
多頭飼育をする場合、飼い主さんが最も気にするのは猫同士の相性ではないでしょうか。せっかく多頭飼育するのですから、飼い主さんと猫の関係だけではなく、猫同士にも家族として仲良く暮らしてほしいと思うのは当然のことだからです。
猫同士の相性を考えると、親子や兄妹などの血縁関係がある猫を同時に迎え入れることが、最も理想的でしょう。しかし実際には、先住猫がいるご家庭に、血縁関係のない新参猫を迎え入れることになるケースがほとんどなのではないでしょうか。
血縁関係のない猫を先住猫のいるご家庭に迎える場合は、猫同士の相性を見極めて新参猫を選び、十分に時間をかけてゆっくりと仲良くさせていくことが大切です。
猫同士の相性は個々の性格によるところが大きく、特定の条件をクリアすれば問題ないというものではありません。それでも、できるだけ早く仲良くさせるためには、なるべく相性が良い組み合わせを考えることも重要です。
猫の相性に関しては、専門家による研究や愛猫家による経験知も含め、年齢、性別、去勢・避妊手術の有無などに左右されることが分かっています。
例えば、1999年にアメリカのジョージア大学獣医学部が「完全室内飼育されている去勢・避妊手術済みの猫のペア」を調査した結果、オス同士、メス同士、オスとメスといった性別によって、親和的な行動や攻撃的な行動のあらわれる割合が変わることが分かりました。
このことからも、猫同士の相性に性別が関わっていることは否定できないでしょう。
そこで今回は、猫の「性別」による相性度について考えていきたいと思います。
オス同士
先のジョージア大学の研究では、オス同士のペアが最も親和的な行動の頻度が高くみられるという結果でした。オスはメスよりも縄張り意識が高いため、オス同士の多頭飼育は相性が悪いという説もありますが、去勢済み同士であればあまり問題にならないようです。
実際、我が家も別々の場所で捨てられていたオスの子猫(未去勢)を2匹同時に迎え入れましたが、去勢手術をする前から特に大きな問題もなく、仲良くお互いに遊び仲間として接していました。
よく観察していると、一緒に過ごしている時間もあれば、それぞれがお気に入りの場所で別々に過ごしていることもあり、それぞれの主たる縄張りを上手に棲み分けているのが分かりました。
なお、片方が去勢済みでもう片方は未去勢だった場合、未去勢のオスが一方的に去勢済みのオスを攻撃する可能性があるため、相性はあまり良くないことが多いと考えられています。
メスとオス
まず、メスとオスとで多頭飼育をしたいのであれば、原則として去勢・避妊手術をすることが大前提となるのが一般的です。なぜなら、あっという間に多頭飼育崩壊を招くほど増えてしまうからです。人為的に繁殖をコントロールする場合も、発情時の猫のストレスを考えるとやはりおすすめできません。
こういった理由も含め、去勢済みのオスと避妊済みのメスの相性度は、かなり良いと言えるでしょう。先にご紹介したジョージア大学での研究報告でも、この組み合わせは去勢済みのオス同士の次に親和的な行動の頻度が高いと報告されています。
双方がまだ若い時期であれば、より仲良くなりやすいでしょう。我が家の場合、先にご紹介したオス2匹の1年後に、捨てられていたメスの子猫(未避妊)を迎え入れました。2週間ほどで徐々に慣れてきて、最終的には3匹で仲良く過ごせるようになりました。
お互いに好奇心旺盛で、同程度の体力と遊びたい気持ちを持っていることで、遊び相手となりやすいようです。
メス同士
メスはオスほど縄張り意識が強くないため、メス同士は比較的相性が良いと思われがちですが、意外なことにジョージア大学の研究では、もっとも攻撃的な行動が見られたのがメス同士のペアでした。
理由は解明されていませんが、「メス同士なら大丈夫だろう」という思い込みは捨てるべきで、避妊済み、未避妊に関わらず、メス同士の相性はあまり良くないと考えた方が良さそうです。
ただし、猫は一緒に暮らしている時間が長くなると喧嘩が少なくなり、次第に付かず離れずの、いわゆる家族のような関係になっていくという報告もあります。メス同士でもこの関係の変化は当てはまるので、決して仲良くなれないというわけではありません。
新参猫を迎え入れた後も先住猫を変わらず優先的に扱うことで、新参猫に対する嫉妬心を持たせないようにする工夫が役に立つことでしょう。
まとめ
先住猫がいるご家庭に新しく新参猫を迎え入れたい場合、性別や年齢を考慮した上で候補の猫を選び、必ず実際にお試し期間を設けた上で迎え入れることをおすすめします。特に先住猫が老猫で新参猫が子猫だった場合、性別にかかわらず、子猫の活発で好奇心旺盛な振る舞いが老猫のストレスになる可能性が高いです。
ただし、子猫に刺激されて老猫にも活気が戻ったという話しもありますので、やはり実際にお試し期間を設定して見極めるのが、最も確実な方法だと言えそうです。お試し期間は、最低でも2週間は設けることをおすすめします。