瞬膜とは
猫の目頭にある白い膜が「瞬膜」です。普段は目の奥に隠れていてあまり目立たないのですが、何らかの原因で出てくることがあります。
瞬膜は猫を含む多くの哺乳類の目に存在する、第三のまぶたで「第三眼瞼(がんけん)」とも呼ばれる器官です。
まぶた内側の目頭のあたりから出ており、通常はまぶたの下に隠れていますが、異常がなくても、猫が瞬きをしたときにみられることもあります。
猫の「瞬膜」にまつわる3つの話
1.瞬膜の役割は「眼球保護」のため
瞬膜の役割は、眼球を保護することです。瞬膜がなければ、目は外部からの刺激や傷害に直接さらされてしまいます。
瞬膜は目を覆うことで、次のような眼球保護の働きをしています。
【異物の侵入を防ぐ】
猫はもともと野生で生活してきた動物です。そのため周囲の環境と言ったら、草が生い茂り土埃が舞い、ライバルとの闘争も避けられないものでした。
そのような過酷な状況では、目にさまざまな異物が入ってきます。瞬膜はそういった異物の侵入を名の通り「瞬時」に防ぎ、かつ万が一侵入を許してもそれを洗い流す役割も担ってるのです。
【目の表面を潤滑に保ち、摩擦から守る】
瞬膜には「瞬膜腺」という器官があり、そこから涙を分泌しています。瞬膜から分泌された涙は均等に眼球の表面を潤し、乾燥から守ります。
【感染症を防ぐ】
猫の目の目表面には、感染症やカビといった猫に害をもたらすものが存在しています。普段それらが悪さをすることはないですが、体調を崩して免疫が落ちると病気のリスクが高くなります。
しかし瞬膜の表面を覆う「リンパ濾胞」というものが、抗体と涙を一緒に分泌して、こうした物質から目を守っているのです。
このように、瞬膜は目の外部環境から眼球を守るフィルターのような役割を果たしています。つまり瞬膜が損傷すると、目にさまざまな障害が起きる危険性が高まるのです。
瞬膜は眼球保護の要であり、その健康な状態が目の正常な機能の維持には不可欠といえます。
2.瞬膜をもつのは猫だけでない
瞬膜をもつ動物は猫だけでなく犬や馬、ホッキョクグマなどの哺乳類や、鳥類・爬虫類・魚類など、さまざまな動物がもっています。
そして瞬膜をもつ動物はそれぞれの生息環境や生活様式に合わせて、瞬膜の役割を進化させてきたのです。
たとえば鳥類であれば飛行時の乾燥や虫の侵入を防いだり、魚類の瞬膜には水中ゴーグルのような役目があったり。
ちなみに人間には瞬膜はありません。かつてはあったようですが、まぶたが発達していったため退化しました。
しかし目頭にある「半月ひだ」というものが、瞬膜の名残なのでは?ともいわれているようです。
3.「瞬膜があるから『まつげ』がない」のは猫だけ?
猫はまつげがないといわれています。その理由は、瞬膜が目を保護しているからないと推測されています。
しかし同じように瞬膜をもつ犬やラクダ、キリンといった動物たちはまつげをもっています。
ではなぜ猫だけが「まつげ」がないといわれるのか…。調べてみましたが、研究者のなかには「猫にもまつげがある」という人もいて、研究者同士でも意見がわかれています。
つまり「なぜ猫にだけまつげがないのか」「そもそも本当に猫にまつげはないのか」という点は、うやむやになっているようです。
猫の瞬膜が出ているときに考えられる病気は?
普段は目の奥に隠れて見えない瞬膜ですが、生理的な理由(あくびやまばたき)以外に次のような病的な理由が原因で、露出することがあります。
結膜炎
結膜炎は、まぶたを覆っている内側の結膜といわれる部分が炎症を起こす病気です。主な原因はウイルスや細菌感染、アレルギー反応であり、他にも多くの要因が関与しています。
通常両目に同時に発生し、症状は数日から数週間続くことがあります。
角膜潰瘍
角膜潰瘍とは、角膜に傷が付いた状態を指します。角膜は目の表面にある透明な膜で、光を屈折させる役割や、異物や細菌などから目を守る役割があります。
角膜潰瘍が生じるとこれらの役割が低下し、進行すれば「角膜穿孔(角膜に穴が開く)」を引き起こして失明に至ることもある危険な病気です。
チェリーアイ
チェリーアイとは、犬や猫のまぶたにある瞬膜の腺組織が飛び出している状態をいいます。
正式には「第三眼瞼脱出」とも呼ばれ、瞬膜が腫れ上がり、チェリーのような見た目になることからこの名前がついています。
ホルネル症候群
ホルネル症候群とは、眼球につながる交感神経に障害が起こることで、眼とその周辺に特徴のある症状が出ることを指します。
一般的には片目だけ発症することが多く、原因もさまざまです。適切な治療を受ければ、数ヵ月ほどで症状はおさまってきます。
まとめ
瞬膜は猫の目を守る大切な器官で、健康状態を知るサインにもなります。今回は瞬膜にまつわる話を3つ紹介しましたが、「知っていた」という話はあったでしょうか?
また瞬膜は猫の病気のサインを見極めることにも役立ちます。そのためには猫の正常な瞬膜の状態を把握し、異常時にすぐに気づけるようにしておくのが大切です。
もし瞬膜が出るもしくは出たままになったら、早めに動物病院を受診して、適切な治療を受けましょう。