猫の命を奪う、年齢別『3大死因』 予防するために今からすべき対策も

猫の命を奪う、年齢別『3大死因』 予防するために今からすべき対策も

年齢問わず猫の死因でもっとも多いのは、腎臓病を含む泌尿器系疾患です。これは日本に限らず、どこの国の猫でも同様で、オスメスの違いもありません。高齢になり免疫力が落ちると病気にかかりやすくなり、病気が死因となることが多くなります。では、年齢別に見た場合、どのようなことが死因となっているのでしょうか。子猫、成猫、高齢猫、老猫の順で解説します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

子猫・若猫(0~3歳)に多い死因と予防法

アメリカンショートヘアの子猫

生まれたばかりの子猫はとても弱い存在である半面、子猫〜若猫は、エネルギッシュが故に命を落とすこともあります。

ここでは、1歳未満の子猫と1〜3歳までの若い猫に多い死因を紹介します。

1.感染症

1歳に満たない子猫が死亡する原因で、もっとも多いのは感染症によるものです。

特に生まれたばかりの子猫は免疫力が低いため、母猫の初乳を通じて抗体をもらっています。

しかし、この抗体は生後2ヵ月ほどで切れてしまうため、適切な時期にワクチンを受けられない子猫は、強いウイルスや寄生虫によって重症化するリスクが高くなります。

子猫をお迎えしたら、まずはワクチンスケジュールについて獣医師と相談し、適切に実施することが必要です。

2.誤食による中毒や閉塞

若い猫は、好奇心も食欲も旺盛です。特に1歳未満の子猫は2歳の猫と比較して3倍以上も誤食が多いというデータもあります。

好奇心旺盛な猫は気になるものは、なんでも口に入れ、噛んで遊んでいるうちに、飲み込んでしまうこともあります。

そのため、子猫〜若猫の死因も誤食による中毒死や腸閉塞は、決して少なくありません。

猫が口にしてはいけないもの(たとえば、ぶどうやチョコレートなどの食べ物、ユリなどの植物)や好奇心を示すようなものの置き場所に注意して、できれば猫の手の届かない場所で保管するようにしましょう。

3.外的損傷

外的損傷は、いわゆるケガによる死亡です。

若い猫は、あと先を考えずに高い場所へ登ったり、走り回って物に激突したりすることがあります。

猫高所落下症候群(フライングキャットシンドローム)という言葉があるように、集合住宅のベランダなどから落下するような事故も若い猫に見られます。

交通事故を防ぐためにも室内飼いを徹底し、窓、ベランダ、吹き抜けなど落下の危険のある高所には猫を近づけない、柵を設けるなどの対策が必要です。

成猫・シニア猫(4~9歳)に多い死因と予防法

グレーのシニア猫

4〜5歳くらいまでは健康だった猫も、7歳以降になると次第にいろんな病気になりやすくなってきます。

ここでは、4歳以上の成猫と7歳を過ぎたシニア猫の死因を紹介します。

1.泌尿器疾患

猫は膀胱炎や結石、腎臓病などになりやすい動物です。猫全体の死因の3割近くを占めているのは、泌尿器系疾患です。

泌尿器系の疾患の初期症状は見てもわかりにくく、症状に気が付いたときには悪化していることが多いため、日頃から市販の検査キットなどでチェックをしておくことが予防の第一歩になります。

泌尿器疾患は6歳以上になるとグッと頻発しますので、積極的な飲水の促進やシニア向けフードの見直し、そして動物病院での定期的な健康診断も欠かさないようにしましょう。

2.循環器系疾患

循環器系疾患とは、心臓や血管に関する病気のことです。猫の心筋症は珍しい病気ではなく、無症状で進行することも多いです。

心筋症は、突然死の原因ともいわれています。初期症状がほとんどない上に、進行具合に個体差が大きいため、重症化するまで気付かないことがあるやっかいな病気です。

全ての年齢で発症する可能性がありますが、やはり加齢とともに発症率は高くなります。

心筋症には、予防方法がないといわれています。遺伝的に心筋症が多い猫種(ラグドール、メインクーン、ペルシャなど)は、あらかじめ食事などにも気を付けておくことや健康診断などの機会にエコー検査を受けるなどの対策がおすすめです。

3.悪性腫瘍(がん)

猫全体の死因のトップは、悪性腫瘍(ガン)によるものです。

4〜6歳まではあまり多くありませんが、高齢になるにつれて腫瘍が発生するリスクが増加し、7歳以上から死因の上位にガンが入ります。

ガンは体中のあらゆる部位に発生しますが、中高齢以上になると多くなります。

乳腺腫瘍などは避妊手術などで発症率を低くするとされる対策がある場合もあります。

老猫(10歳以上)に多い死因と予防法

窓辺の高齢猫

10歳以上になると、若い頃はあまり問題のなかった不調でも、死に至るケースも出てきます。

ここからは、10歳を越えた老猫に多い3大死因と予防法について解説します。

1.泌尿器系疾患

高齢になるほどリスクが高まるのが、泌尿器系疾患による死亡です。

一度悪くなった腎臓は、健康な状態へ戻せません。慢性腎不全になると、多飲多尿からはじまり、食欲不振や嘔吐、脱水、貧血、尿毒症などを経て死に至ります。

「猫が年を取ったら腎臓病になる」といわれるほど、高齢猫には多発する疾患ですが、若いうちからの十分な水分摂取や適切な食事はリスクを軽減できます。

2.悪性腫瘍(がん)

10歳以上の老猫になれば、いよいよガンのリスクも高くなります。

老猫に多いガンは、消化器型のリンパ腫や肥満細胞腫、避妊しなかったメス猫は乳ガンにもなりやすくなります。

猫のガン治療は、手術・投薬・放射線などの方法がありますが、老齢になると麻酔に耐えきれない、専門病院へ通えないなど治療に対してのハードルも上がります。

老猫のガンは免疫力と深く関係しているので、ストレスのない生活を送らせることが最適な予防法といえそうです。

3.消化器疾患

急性膵炎や異物誤飲による腸閉塞などは若猫でもなる可能性がありますが、老猫になると慢性膵炎や便秘などの消化器疾患が死因としてあがってきます。

特に慢性膵炎は無症状か軽症な期間が長く続くため、発見が遅れやすくなります。死因が特定されない死亡猫の半数に膵炎の兆候が見られたとの報告があるように、猫にとっては掛かりやすい病気のひとつです。

身体機能が衰える老猫では、いくつもの病気を連鎖的に発症することがあるため、高齢になったら1年に数回の定期的な健康診断を受けて早期発見を心掛けるようにしましょう。

まとめ

振り返る猫

猫の年齢別死因を解説しました。

猫の平均寿命は年々更新され、2023年では15.79歳でした。最近では、20歳を越える猫も珍しくなくなってきています。

若い猫を飼っている人には、将来のことを考えるのは遠い未来に感じるかもしれません。しかし、若いうちからの良い習慣は愛猫を長寿に導く重要な要素です。

信頼できるかかりつけ病院を持つことも、猫の健康と長寿に欠かせない要素のひとつです。日頃から愛猫の生活環境に気を使い、定期的な健康チェックや予防接種を受けさせましょう。

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