宇宙船からビデオを送信
小惑星へ向け飛行中のNASA宇宙船「Pcyche」から、レーザー通信を使って地球へビデオが送信されました。
約1900 万マイル(3100 万キロ)も離れたところから届いたビデオには、「Taters」という名前のおちゃめな茶トラ猫が、レーザーポインターの赤い光を追いかけてソファの上を移動している姿が映っています。
NASAがレーザー技術を使って、遠く離れた深宇宙からビデオをストリーミングしたのはこれが初めてのことで、「深宇宙光通信実験」(DSOC)の一環で、フライト・レーザー・トランシーバーという装置により地球に送信されました。
今回の実験成功により、将来人類が火星のような遠い場所へ探査を広げたとき、この技術を使ってデータや画像、ビデオを迅速に送れるようになるかもしれないのです。
遠い宇宙との通信が可能に
送信時、宇宙船と望遠鏡の距離は、地球・月間の80倍もの距離がありました。しかし、レーザーが地球に到達するまでの時間は、1画像につきわずか101秒だったとか。
このレーザーは、NASAが通常使用している通信システムの10~100倍の速さでデータを送ることができるといいます。今回の実験は、近赤外線レーザーを使い、これまででもっとも遠い宇宙と地球との間で送受信を行ったものです。
「この成果は、将来のデータ光通信を広げる上で重要なものです。深宇宙探査には通信の進歩が不可欠です。この技術が改良されることで、将来は、惑星間での通信方法も大きく変わることでしょう」とNASA副長官Pam Melroyさんは声明を出しています。
猫のビデオを実験に使用
宇宙船「Pcyche」には映像の撮影手段は搭載されていないため、この通信実験では通常実験用に作った映像データが使用されるといいますが、今回猫の映像を使ったのにはちゃんと意図があったとか。
ジェット推進研究所の深宇宙光通信プロジェクト・マネージャーBill Klipsteinさんは声明のなかで、「今回の成功を印象深いものにするためにデザイナーと協力して、猫のかわいい姿を映したビデオを作ることにしたのです」と語っています。
このビデオには、飛行の軌道や受信する望遠鏡のドームの形のほか、Tatersの被毛の色や品種、心拍数を示す画像も含まれています(ちなみに、TatersはNASAスタッフの愛猫だそうで、現在3歳なのだとか)。
同研究所の受信機エレクトロニクス責任者Ryan Rogalinさんも「ビデオの内容は、この技術の成功を飾るにふさわしい、すばらしいものです。みんな猫のTatersが大好きですよ」とコメントしています。
また、猫に関するビデオが今回採用されたのは、1928年に初のテレビ放送実験が行われたときに「猫のフェリックス」が放映されたことにもちなんでいるとか。
出典:NASA laser message beams video of a cat named Taters back to Earth, and it’s a big deal