有機化合物からニオイが発生
多くの哺乳類は、ニオイによって意思疎通しています。
「Scientific Reports」(2023年11月8日発行)誌上で発表された米国カリフォルニア大学デービス校の研究によると、家猫は肛門腺内の細菌叢により作られる化学物質から出るニオイを利用して、相手に信号を伝えているそうです。
この発見は、今後飼い犬やキツネ・パンダなどの野生動物、そして人間を含む哺乳類全体について、微生物とニオイの関係を解明していくのに役立つと見られています。
猫は、アルデヒド、アルコール、エステル、ケトンなどの揮発性有機化合物を混合することでニオイを発します。
猫同士が意志疎通して、なわばりを主張したり、異性を誘ったり、競争相手を遠ざけたりするために、こうしたニオイが使われているのです。なお、人間はこのニオイを感じ取ることができません。
肛門腺に潜む5種類の細菌
研究チームはDNA配列決定、質量分析、微生物培養を利用して、猫の肛門腺の分泌物に含まれる化学物質と細菌を調べました。
研究の対象となったのは、歯垢除去などの治療のため同大の獣医教育病院を訪れた23匹の飼い猫です。
その結果、どの猫も5種類の細菌(コリネバクテリウム、バクテロイデス、プロテウス、乳酸桿菌、連鎖球菌)を多く持っていましたが、それぞれの構成割合は猫によって大きく異なっていました。
加えて、高齢の猫は若い猫とは違う細菌叢を持つこともわかったのです。
肥満の猫もほかとは違う細菌叢が見られましたが、症例数が少ないため確実なことはわからないといいます。細菌の数は、猫の餌や健康状態、全体的な生活環境などの影響を受けている可能性もあります。
今後の研究に期待
今回の研究で猫の肛門腺から発見された有機化合物は、約100種類にも上っています。さらに遺伝子を分析したところ、肛門腺に生息する細菌が、こうした化合物の生成に関わっている可能性があるとわかりました。
研究チームは、さらに多くの飼い猫やその他の動物について実験を進めていきたいと述べています。
将来は、肛門から採取した細菌や化学物質を調べることで、飼い主が愛猫の感情や体調を知ることができるようになるかもしれませんね。