コロナ禍のため猫用ワクチンが不足
クリスマス休暇を前に、深刻な「猫用ワクチン」不足が猫の飼い主の間で心配の種になっています。
パルボウイルスと猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスの3種から愛猫を守る年1回の「F3ワクチン」が、オーストラリア全土で不足しています。獣医は飼い主の需要に応えようと、在庫確保に必死です。
Andrew Kapsis医師はメルボルンにある「Lort Smith動物病院」の院長ですが、彼によると「このワクチン不足な状況は、来年まで改善しないだろう」ということです。
コロナ禍でのペットの需要増とともに、薬品会社が人間用コロナワクチンの製造に重点を置いたため、同病院では猫用ワクチンの納品数が半減してしまったといいます。
「もう20年以上も獣医をやっていますが、今回は最大のワクチン不足です」と彼はいいます。
ワクチンが足りないために、毎月この病院では猫への接種を200匹ずつ遅らせて調整していますが、子猫は感染の危険が高いため、優先的に接種するといいます。
「これまで定期的に接種してきた成猫には、2、3ヵ月程度接種を遅らせても大して危険はありません。そう説明して、飼い主に安心してもらっています。しかし、ワクチン不足が2024年初頭以降も続くとしたら、猫同士の感染を防ぐ手立てを考えなければなりませんね」
ペットホテル経営者に危惧の声
ヴィクトリア州政府は、このワクチン不足について認識しているものの、対策については各自治体に任せると表明しています。
「猫用ワクチンの生産の管理については関与していません。しかし年末には製造数が増えると各社より回答を得ており、来年初頭には通常の供給量に戻ると考えています。各自治体は動物保護団体と協力して、供給量が通常に戻るまではワクチンに代わる製品を探るなどの取り組みを進めていただければと思います」(同州の農業部門担当者)
Peter Walkerさんはメルボルン南東で猫用ホテル「Sophisticat」を経営しています。彼は、今回のワクチン不足で経営に重大な影響が出ることを恐れています。
「ペットホテルは季節需要が激しく、とくにクリスマス・シーズンは人々が旅行に行くため最大のかき入れ時です。これまでコロナ禍で苦労をしたうえに、このワクチン不足で需要が減退すれば大打撃です」
州の規定により、ペットホテルに滞在する犬猫はすべて1年以内にワクチン接種を受けることが義務付けられています。
Peterさんの施設は、クリスマス時期の予約は満杯ですが、すべての予約客に連絡してワクチン接種を済ませているかどうかを確認しなければなりません。問い合わせをしても回答のない客も多く、そうしたペットが規定を順守できるか不明です。
規定が緩和されても、やはり心配
一方、隣のニュー・サウス・ウェールズ州では、来年早々までは成猫のワクチン規制が緩和されています。というのも、ワクチン不足により、動物愛護団体が猫を保護できない状況に陥っているためです。
とはいえ、猫用ホテルを経営するRobyn Schofieldさんなどは、安全性を疑問視しています。
「さまざまな地域から、多くの猫がこのホテルにやってきます。本来ならどの猫にもワクチンを接種してもらったほうが安心ですから、規制が緩和されても、私達はワクチン済みの猫だけを受け入れています。だって、愛猫をホテルに預けるのは、猫が守られていて安全だからこそです」
このワクチン不足による混乱、猫たちの健康のためにも、早く収束するとよいのですが…。
出典:Why a national shortage of cat vaccines may cause holiday havoc with pet owners