猫のしこりの原因
1.腫瘍
腫瘍はしこりを形成する大きな原因の1つです。そのなかには「がん」と呼ばれる悪性腫瘍もあれば、脂肪種のような良性腫瘍もあります。
猫のがんは、猫の死因の32%を占めるほど多い病気です。人でも「2人に1人はがん」といわれ死因第一位で全体の26.5%を占めますが、猫はそれよりも割合が高いので、猫にとってもどれほど身近な病気なのか想像できます。
2.嚢胞
嚢胞というのは、中に液体の入った袋状の病変です。皮膚の表面にボコッと出ていますが、良性のしこりなので、なにか理由がない限り(嚢胞が大きいなど)、切除を行うことは滅多にありません。
中の液体を針を刺して抜くことでしこりを小さくしたり、細菌感染が関与しているのであれば抗生剤を使用して状態の改善をするなど原因に応じて処置を行う場合があります。
3.リンパ節の腫れ
リンパ節が腫れると、しこりとして触れます。とくに肩・脇・股のリンパ節が腫れて硬くなることも。
リンパ節が腫れる原因は、細菌やウイルスがリンパ節に感染するためです。つまり、体に何かしらのSOSがあることを意味しており、治療が必要な場合があるといえます。
4.けがや外傷
けがによって傷口が腫れあがり、しこりを形成することがあります(腫瘤)。初期であれば抗生剤などによって中の膿や炎症などが緩和され、しこりが小さくなるケースが多いです。
時間が経過してしまうと肉芽と呼ばれる物質に変化するため、内科的な治療で大きさを変化させることは難しい場合が多いです。
猫のしこりの原因となる病気は?
悪性腫瘍
猫が発病しやすい悪性腫瘍には次のようなものがあります。
- リンパ腫
- 乳腺腫瘍
- 扁平上皮がん
「リンパ腫」はいわゆる「血液のガン」です。白血球の1つである「リンパ球」がガン化するのですが、その明確な原因は不明です。
リンパ節の腫れで気づくケースが多く、下あご・首・わきの下・鼠径部・膝の裏側のどこに発生したかで4つの型に分けられ、その型や悪性度に合わせて治療を行います。
組織の切除や細胞を針で採取して、検査を行い悪性や腫瘍の種類の特定を行うことが一般的です。
「乳腺腫瘍」とはその名の通り乳腺にできる腫瘍で、良性と悪性があるものの、猫の場合8~9割が悪性といわれます。
乳腺にできたしこりが触れることで気づく飼い主が多いですが、転位するのが早いため発見時にはすでにほかの部位に転位してしまっていることが多いです。
メス猫を飼育している飼い主には非常に恐ろしい病気ですが、生後半年~1歳までに避妊手術を行うことで8~9割と高い割合で乳腺腫瘍を予防することができます。そのため子猫を望まないのであれば、早めに避妊手術を受けるようにしましょう。
「扁平上皮がん」とは、上皮細胞の1つで皮膚や粘膜を形成する扁平上皮細胞ががん化したものをいいます。がんを見落としてしまう飼い主も多いです。
猫の発生部位で多いのは、顔・耳の先・まぶた・鼻の周囲のほか、口の中・指にできることもあります。しかし他にもできやすい場所以外でも腫瘍ができることがあるので注意が必要です。
良性腫瘍
- 脂肪種
「脂肪種」は中年期~高齢期の猫において多く見られる良性腫瘍です。原因は不明で、胸部・腹部・四肢・わきの下によくできます。
良性の腫瘍なので基本的に体に悪さをすることはありませんが、脂肪腫によって物理的に身体機能・運動機能が低下している場合や家族の強い希望があれば外科的切除を行うこともあります。
猫にしこりを見つけたときの対処法
猫にしこりを見つけたときは、動物病院を受診してください。良性腫瘍と悪性腫瘍は獣医師でも肉眼で判断するのは難しいもの。しこりに気づいたら、まずは細胞診などの検査を行って、どんな腫瘍なのかを特定することが大切です。悪性の場合は早期発見・早期治療が重要になるので、早めに診察を受けるのがポイントです。
腫瘍でない場合も、細菌感染や何かしらのSOSである可能性があります。病院に行っても「結局何もなかったね」となることもあるかもしれませんが、愛猫の健康・安心を得るためにも病院を受診しましょう。
まとめ
猫にしこりをみつけたら「がん!?」と心配になる飼い主がほとんどでしょう。しかし猫のしこりは「悪性腫瘍(がん)」だけでなく、さまざまな理由で形成されるものです。
そのため猫にしこりを見つけたら動物病院で診察してもらい、しこりの原因を突き止めましょう。もし悪性腫瘍であった場合は迅速な対応・治療が必要ですが、悲観的にならずに、まずは獣医師の診断や意見を仰ぎましょう。