愛猫との「キス」は危険?チューで感染する可能性のある病気4選

愛猫との「キス」は危険?チューで感染する可能性のある病気4選

愛猫とよくキスをするという方は、感染症について少し考えてみてもいいかもしれません。猫との過度な接触で感染しやすい病気を紹介します。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

1.パスツレラ症

舌なめずりをする猫

パスツレラ症は、パスツレラ菌によって発症する感染症です。動物から人、人から動物へ移行して感染する「人獣共通感染症」のひとつとして知られています。

パスツレラ菌は猫の口内にほぼ100%存在している常在菌で、主な感染経路はキスや口移しなどの経口感染です。また噛まれたり引っ掻かれたりすることで経皮感染を起こしたり、多くはありませんが飛沫感染もあります。

猫に症状が見られることは少ないですが、人間が感染すると気管支炎や肺炎など呼吸器系疾患を起こすことに。風邪程度で終わることもありますが、抵抗力が低下していると重篤な症状を起こすこともあります。また経皮感染した場合は、噛まれた箇所が炎症を起こしたり、敗血症になることも。

糖尿病など基礎疾患がある方や高齢者は、猫とキスをしないように気を付けた方がいいでしょう。

2.トキソプラズマ症

妊婦さんと猫

猫とのキスで感染する病気として、トキソプラズマ症も挙げられます。これはトキソプラズマと呼ばれる寄生虫によって引き起こされる感染症で、自然界のあらゆる動物に感染します。

ただし繁殖できるのはネコ科動物の体内のみ。便と一緒に排出された卵がセルフグルーミングの際に猫の口内に移動し、猫とキスをした際に人間に移るという仕組みです。

トキソプラズマ症に感染してもほとんどの場合、症状が出ることはありません。稀に発熱や倦怠感、筋肉痛などインフルエンザのような症状が現れますが、一時的なものです。

ただし妊娠さんの感染には注意が必要です。妊娠中に初めて感染すると、流産や死産を起こす可能性があるためです。それだけでなく、お腹の赤ちゃんに視力障害や脳障害が起こることも。胎児への感染率が高まるのは妊娠末期ですが、妊娠初期の方が重症化しやすい傾向にあります。

猫への感染が判明した場合は駆虫薬での対処になりますが、トキソプラズマ原虫を完全に除去することは困難です。万が一妊婦さんに感染したときは抗生物質での治療を行いますが、猫とのキスは極力控えた方が賢明でしょう。妊婦さんは排泄物の処理にも気をつけてください。

3.コリネバクテリウム・ウルセランス症

咳込む女性と猫

2018年、猫からの感染で女性が死亡したとして話題になったのが、コリネバクテリウム・ウルセランス症です。ジフテリア菌と近縁の細菌で、症状もよく似ています。

感染経路としては飛沫感染や経口感染することが確認されており、猫とのキスや接触で感染します。

発症初期段階では風邪のような症状が表れますが、重症化すると呼吸困難になることも。また経皮感染で皮膚炎を起こしたという事例もあります。

コリネバクテリウム・ウルセランス菌に感染している猫は、咳やくしゃみなどの風邪症状や、皮膚炎を起こしていることが多いそう。猫にそのような症状が見られたときは早めに動物病院に連れていきましょう。あわせて飼い主さんも、手洗いやマスクなどで自衛することが大切です。

4.カプノサイトファーガ感染症

老女と猫

カプノサイトファーガ感染症は、カプノサイトファーガ・カニモルサス、カプノサイトファーガ・カニス、カプノサイトファーガ・サイノデグミという3種の細菌が原因となる感染症です。これらは猫の口腔内の常在菌で、猫自身が発症することはありません。

犬猫の常在菌でありながら発症事例が非常に少ないことから、感染から発症に至る確率は極めて低いものと考えられています。またその症状も、発熱や倦怠感などの風邪症状を表しますが、ほとんどは自然に治ると考えられています。

ただし稀に敗血症や多臓器不全など重症化してしまうことがあり、気を付けるに越したことはありません。世界では死亡例も確認されており、その危険性は未知数です。発症事例があった年齢は95%以上が中高年だったそうなので、とくに高齢者や持病のある方は猫とのキスを控えた方がいいでしょう。

まとめ

猫とキス

猫は飼い主さんとのスキンシップがとても好きですが、キスで感染する病気があることも覚えておかなければなりません。とくに高齢者や持病がある方は注意が必要です。猫と飼い主さんの健康を守るため、適度な接触を心掛けましょう。

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