ネズミ退治には、猫が適任
ニューヨークには名物がたくさんありますが、ネズミの多さもその1つ。これに目をつけたのがSheila Masseyさんです。彼女は長年、野良猫を捕獲して避妊手術をし、ふたたび地域に戻すボランティア活動を続けてきました。
あるとき「シカゴのビール工場でネズミを駆除するのに、猫たちが役立っている」という話を耳にして、彼女はさっそく「Hard Hat Cats」という動物福祉団体を立ち上げました。
そして、何らかの理由で飼い主を見つけにくい保護猫たちを、ウイスキー蒸留所やビール工場・ホテルなどに紹介する活動を始めたのです。このアイデアは大成功でした。
ペットであり、働く猫でもある「ハイブリッド」
ブルックリンにあるニューヨーク最古の「Kings County蒸留所」では「Hard Hat Cats」出身の猫HaroldとMaudeに会えます。見学対応マネージャーのAline Noceraさんが、この2匹を職員として迎え入れたのです。
「2匹は、従業員みんなとうまく付き合っているし、すすんで接客もしています。人間と動物との関係は、以前とは違いますね。ここの猫たちは、働く動物であると同時に、ペットでもあります。いわばハイブリッド的な存在。新しい概念だといえます」と彼女はいいます。
2匹が働くようになってから、この蒸溜所ではネズミをまったく見かけなくなったとか。そのため、いまや猫たちのおもな業務は、従業員やお客さんにかわいらしく甘えることが中心なのだとか。
醸造所で働くさまざまな猫たち
ほかにも働く猫たちがいます。「Five Boroughs醸造所」の猫Amorは、従業員に正式に家族として迎えられました。片目のオス猫Elizabethは「Torch & Crown醸造所」に勤務していますが、その名がビールの銘柄になったほど愛されています。
さらにブルックリンにある「Evil Twin醸造所」では、猫のMarlonの名がついた各種のエール酒が製造されているうえ、工場内にはこの猫を描いた美しい壁画まであるとか。この猫がちょっと変わっているのは、飼い主が醸造所関係者ではなく、常連さんだということ。愛猫の仕事ぶりを飼い主さんはとても誇りに思っているのだそうですよ。
「Grimm Artisanal Ales醸造所」には、ホップの種名からとったSimcoeという名の猫がいます。
「この猫は人好きな性格で、なでられるのが大好き。でもすごく勇敢で、ネズミを見ると跳びかかって捕まえます。醸造工場だけでなく、近所の通りも見回ってネズミ駆除をしてくれるんですよ」とマネージャーのAiyana Knauerさんはいいます。
コロナ禍で醸造所が休止していた期間に近所を徘徊するようになったというSimcoeは、いまやこの界隈の人気者。最近ではこの猫を見るためだけに人々がやって来るようになり、ネズミ退治より、接客対応のほうが忙しいのだとか。
「Hard Hat Cat」創設者のSheilaさんはこの活動について、次のように語っています。
「この活動によって猫の繁殖を抑えることができると同時に、地域のネズミ駆除もできるのです。だって猫たちが住み着く場所には、ネズミがいませんからね」
保護施設ではなかなかいいご縁に巡り会えなかった猫たちに、仕事を通じてセカンドチャンスを提供するこの画期的な活動。これからも幸せな「従業猫」が増えていくといいですね。
出典:Cats on tap: Meet the New York brewery cats living their best lives