多くの猫を苦しめる腎臓病
猫がかかる病気にはさまざまな種類がありますが、なかでも中高齢の猫の多くが患っていると言われる腎臓病は猫の死因で上位に入る恐ろしい病気です。
腎臓病には一気に悪化する急性とゆっくり進行する慢性の2種類がありますが、どちらも腎機能が低下して猫の寿命を縮めてしまう可能性があります。
急性腎臓病は程度によっては症状の軽減ができる可能性がありますが致命的な状態に陥る危険性もあります。慢性腎臓病の場合は時間の経過とともに、腎臓の機能の低下をしていくことが一般的です。治療や予防方法としていかに腎臓の機能の低下を緩やかにするかということが大切であるため、猫を飼う上で腎臓病対策を避けて通ることはできません。
腎臓病によって現在も多くの猫たちが苦しめられ治療法などの研究が行われていますが、将来治療や予防の大きな力となってくれる可能性があるのが、今回解説する「AIM」なのです。
AIMは猫が持つタンパク質の一種
腎臓の健康維持に配慮したフードやおやつに、AIMという文字が入っているのを目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
AIMという表記を見ると新たに発見された成分のように思えますが、『Apoptosis Inhibitor of Macrophage』という英語の頭を取った略語で、実は猫がもともと血液中に持っているタンパク質の一種です。
AIMには体の中に溜まっている不要なゴミ(細胞の死骸や毒素など)の掃除をサポートしてくれる働きがあります。
腎臓内にある尿の通り道(尿細管)にゴミが溜まると腎機能が低下していくのですが、AIMの働きによってゴミの場所を目立たせることで、回収を担当する細胞たちがスムーズに回収でき機能改善につながるのです。
猫のAIMは機能しない
なぜ猫にもAIMがあるはずなのに腎臓病になりやすいのかというと、猫を含めたネコ科の動物は血液中のAIMが機能しないからです。
普段AIMは別の種類のタンパク質とセットになっていて、通常は腎機能が低下するとAIMが尿の中に移動して働きます。
しかし、猫が持つAIMは先天的にセットになっているタンパク質から離れにくく、腎臓の機能が低くなっているのに尿の中に移動しようとしないのです。
AIMが機能しないとゴミがうまく回収されず溜まる一方になり、腎臓の状態は徐々に悪くなって食欲低下や嘔吐などの症状を引き起こします。
AIMが猫の寿命を伸ばす可能性
現在研究が進められているのが、腎臓病の猫にAIM製剤を定期的に注射することで改善させるという治療法です。
まだ治療法として確立されていない上に、研究は途中段階であるため、個体差であったり病の重さ、併発している病気の有無によっても効果は異なる可能性や、不明な点も多いです。しかし、研究の進展次第では、猫の平均寿命を大きく伸ばす可能性を秘めています。
まとめ
最近注目を集めている「AIM」は、猫が血液中にもともと持っているタンパク質の一種です。
多くの猫が苦しむ腎機能の低下に対して改善の効果が期待でき、寿命を大幅に伸ばしてくれる可能性を秘めています。
現在AIMによる腎臓病対策の研究が進められていますが、一般的な腎臓疾患の予防や対策の選択肢の一つには挙げられていません。定期的な健康診断や、早期発見、早期治療や日々のケアなどの腎臓病対策に努めましょう。