平均寿命や毛色が一味違う
メス猫には、次のような独特の気質やオス猫と違う身体的特徴があります。
1.オス猫より一般的に長生きする
メス猫の平均寿命は15歳という研究がありますが、これはオス猫の13歳より2年も長いのです。メス猫は、交尾相手を求めて外をうろつくことが少なく、交通事故やほかの動物に襲われる危険が少ないからではないかといわれています。また外飼いの猫は伝染病などにかかりやすいのです。避妊手術ずみのメス猫は、そうでない猫に比べ0.6年分長生きするともいわれています。
2.右利きのメス猫が多い
75%の猫には、人間のような「利き手(というより足)」があります。右利きの人間は大半を占めますが、メス猫では52%です。でもオス猫は52.3%が左利きなので、メスはやや右利きが多いといえるでしょう。
3.メスの「茶トラ猫」はめずらしい
茶トラ猫を見かけたら、きっとオス猫でしょう。毛色を決める遺伝子が性別に関係あるからです。茶トラ遺伝子は、X染色体がもたらします。メスは2つのX染色体、オスはXとY染色体を持っていて、メスが茶トラの毛色になるためには、2つのX染色体が同時に茶トラ遺伝子を持ち合わせている必要があるのです。でも一般に染色体には黒色遺伝子が多いので、結果として、茶トラの80%は単一のX染色体だけで発現するオス猫になるのです。
4.「三毛猫」は、ほとんどがメス
2つのX染色体に異なる対立遺伝子が含まれるとき、三毛猫の複雑な毛色が生まれます。そして2つのX染色体からは、かならずメス猫が誕生します。三毛のオス猫がいるとすれば、その猫は余分なX染色体を持ち合わせているのです。この現象はめずらしく「クラインフェルター症候群」(Klinefelter’s syndrome)と呼ばれています。
繁殖の不思議いろいろ
5.避妊手術を受けていないメス猫は「クイーン」と呼ばれる
去勢していないオス猫が英語圏で「トムキャット」(Tomcat)と呼ばれるように、メス猫の場合は「クイーン」(Queen)といいます。避妊手術をしたメス猫を「モリー」(Molly)と呼ぶ地域もあるようです。
6.生後4ヵ月で早くも妊娠可能になる
メス猫は生後16週になると、早くも繁殖可能になることがあります。でも思春期のあと、生後6ヵ月ごろに最初の発情期が起こるのが普通です。思わぬ妊娠を避けるには、生後4~6ヵ月までに避妊手術を行うのが理想的です。
7.年間を通して妊娠可能である
春と夏が繁殖シーズンといわれますが、実はメス猫は、1年じゅう妊娠が可能です。日照時間が長い地域では、冬に妊娠するケースも多いのです。
8.毎年2、3回は発情する
猫は繁殖期には何度も発情します。妊娠しなかったメス猫は、ほんの数ヵ月間に何度も発情することがあるのです。
9.メス猫は「誘発排卵」をする
メス猫はオスと何度か交尾しないと排卵しません。これを誘発排卵といいます。妊娠の確率を高めるための自然の摂理なのです。
10.子猫の父親が複数いることも…
発情したメス猫は、ふつう複数のオスと交尾します。このため生まれた子猫たちの父親が異なることもあるのです。この現象を「過授精」といいます。
想像妊娠やマーキングも
11.想像妊娠することもある
妊娠していない猫が、まるでしているようにふるまうことがあります。実際に交尾して誘発排卵したものの、妊娠しなかった場合などに起こります。1~3週間ほどの間、行動や外見が変化し、お腹が膨らんできたり母乳が出てきたりするのです。
12.妊娠期間は2ヵ月間
猫の妊娠期間は60から65日間ほど。妊娠3週間目には外見も行動も明らかに変化します。食欲が亢進して体重が増え、お腹が膨らんで乳首がピンク色になります。
13.メス猫もマーキングをする
マーキングといえばオス猫の専売特許のように思われがちですが、メス猫もするのです。室内で家具にされてしまうと、飼い主にとっては大迷惑ですね。この行動は、繁殖期だったり自分の領地を守るためだったり、あるいはストレスや病気によって起こります。獣医に診てもらって問題がない場合は、避妊手術をするのが一番。ストレスを軽減して猫を落ち着かせることもお忘れなく。
14.避妊手術を受けていないメス猫は、子宮蓄膿症のリスクが高い
ホルモン変化によって起きる子宮蓄膿症は、通常は高齢猫や避妊していない猫に見られます。高熱や食欲減退、腹部の膨張などが見られる恐ろしい病気なので、命を守るためにも避妊手術は大切です。
15.メス猫の避妊手術には、オスよりお金がかかる
開腹して手術するメス猫の避妊には、オス猫の場合より費用がかかります。でもきちんと手術をすることで、問題行動や病気を防ぎ、健康な一生を送ることができるのです。飼い主の責任として、早めに行いたいですね。