遺伝する猫の病気「多発性嚢胞腎」症状や治療法は?多く見られる猫種も

遺伝する猫の病気「多発性嚢胞腎」症状や治療法は?多く見られる猫種も

老猫が腎臓疾患になりやすいことは有名ですが、残念ながら若くして症状が現れる猫もいます。遺伝性疾患のひとつ「多発性嚢胞腎」について解説します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

多発性嚢胞腎とは

猫の親子

多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)とは、猫が最もかかりやすい遺伝性疾患です。父母どちらかの遺伝子に異常があると、約50%の確率で子猫に遺伝します。

この疾患は、左右の腎臓に「嚢胞」ができるというもの。嚢胞とは液体が入った袋のようなもので大小様々なサイズがあります。嚢胞は徐々に大きくなり数を増やしながら正常な細胞と入れ替わり、腎臓の機能は低下します。

基本的に一度発症すると治癒しませんが、急性腎不全などと比べると進行が遅い疾患です。あまりにもゆっくりと腎機能の形態を変えていくため、体が適応してしまって症状が出ない猫までいます。ただし時として他の臓器で嚢胞ができることもあるので、注意が必要なことは変わりありません。

多発性嚢胞腎の症状

猫とトイレトレー

最も初期の段階では多くの猫が無症状です。定期健診などで腎臓に嚢胞が見つかり初めて気が付くケースが多く、症状だけで初期のうちに判断することは困難です。

少し進行すると、腎臓病のような症状が出ます。お水をたくさん飲んでおしっこを頻繁にする、体重減少、ご飯を食べないなどの変化で気が付くことが多いです。このときの腎臓は、嚢胞が増殖して腎臓機能を低下させている状態です。

もっと進行すると、嘔吐や脱水、貧血などの症状が出てきます。尿毒症が悪化して、口臭がきつくなることも。また嚢胞の中で細菌に感染してしまうと、熱が出たり元気がなくなることもあります。

多発性嚢胞腎の治療法

点滴する猫

多発性嚢胞腎は、残念ながら治療法が確立されていません。そのため検査で嚢胞が見つかったあとは、少しでも猫自身の苦痛をやわらげるための「対処療法」を継続していくことになります。

対処療法の主な目的は腎臓病と同じで、『体内の老廃物を排出させる』ことです。具体的には、点滴で脱水を緩和したり、活性炭の摂取で老廃物を出す治療などがあります。猫の状態に合わせてこれらの治療を施していくことで、進行を遅らせて猫の負担を減らすことが可能です。

また予防法に関しても、遺伝性疾患のため有効なものはありません。定期的に動物病院へ行き、早期発見を目指しましょう。心配な場合には、遺伝子検査で素因があるかどうかを調べることもできます。

唯一ある予防法としては、多発性嚢胞腎の遺伝子をもった猫ちゃんを繁殖しないこと。これはとても大切なことです。

多く見られる猫種

ペルシャ

多発性嚢胞腎は遺伝子疾患なので、「なりやすい猫種」というものが存在します。多発性嚢胞腎になりやすいのは、ペルシャ、スコティッシュ・フォールド、エキゾチック・ショートヘアです。これらの猫種は他の種類に比べて、当該の発症遺伝子を持っている確率が高いことも検証されています。

またペルシャの近縁として、ペルシャ系の雑種も好発品種として知られています。スコティッシュ・フォールドやエキゾチック・ショートヘア系の雑種も同様です。

具体的な検証はされていませんが、アメリカンショートヘアー、ヒマラヤン、ブリティッシュ・ショートヘアなどの発症も多数報告されているようです。

まとめ

猫と飼い主

猫の遺伝性疾患である多発性嚢胞腎は、「嚢胞」が腎臓機能を低下させる疾患です。この嚢胞は徐々に腎臓機能を低下させるため、腎臓病のような症状を発症しながら、腎臓そのものも肥大します。最終的には尿毒症を引き起こして、命を奪ってしまうというものです。

遺伝性疾患であるがゆえに予防法もなく、一度発症すると完治しません。飼い主にとっては恐ろしい疾患ですが、進行が極めて遅いことが不幸中の幸い。状態に合わせた適切な対処療法を実施していくことで、腎臓機能をコントロールできる可能性があります。

ポイントになるのは、点滴やフードなど対処療法ではありますが適切な治療を行うこと。また嚢胞はゆっくりとはいえ徐々に大きくなり数も増えていくので、定期的な検査を欠かさないことも大切です。

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