猫はなぜ「環境の変化」を嫌がるの?
猫は慣れない場所や新しい環境に身を置くと、強いストレスを感じてしまいます。なぜそれほどまでに環境の変化を嫌うのでしょうか?
今回は、猫が「環境の変化」が嫌いと言われる理由を紹介いたします。合わせて、日頃からできる配慮についても解説していきます。
1.行動範囲が狭い動物だから
猫といえば自由奔放で、果てしなく何処へでも出かけてしまいそうなイメージがありますよね。しかし実際は、行動範囲がとても狭い動物なのです。
元々肉食動物である彼らは、食糧を求めて遠征する必要がありません。そのため、ある一定の範囲内で生活する習慣を持っています。メス猫であれば半径約600m、オス猫は自分自身の縄張りを確保してしまえば約200mの範囲内で事足ります。家猫の場合は更に狭い100m程だといわれています。
つまり、本能的に遠出をすることに抵抗があるというわけです。猫を連れた外出は動物病院の受診程度に留め、できるだけ手短に済むようにしてあげると良いでしょう。
2.においが変わってしまうから
猫は動体視力こそ優れているものの、通常の視力は人間の10分の1程度しかありません。
その代わり嗅覚が発達しているので、状況把握・縄張りの認識・猫同士の会話などはにおいを通して確認しています(正式には聴覚も含む)。
家猫であれば家のにおいや、自身が頬擦りをしてマーキングしたにおいによって安心感を得ています。そのため、極力模様替えや引越しをしないのが理想的なのです。
とはいえ、やむを得ず引越しをすることがあるでしょう。その場合、愛猫の私物(トイレ・寝具・おもちゃなど)はひとまず新調せずに持ち込んであげましょう。慣れ親しんだにおいがあることで、新しい環境に慣れやすくなります。
3.脳の構造的な問題
猫が環境の変化を苦手とする理由は、習性によるものだけではありません。脳の構造的な特徴も影響を及ぼしています。
猫の前頭葉(端的にいうと額周辺の部位)は、人間や犬と比較すると小さいつくりになっています。この部位では、「プランを立てる」「円滑に実行する」「臨機応変に動く」という作業が行われています。
前頭葉が小さいことで、変化に対して機敏な反応を起こすことが苦手なのです。つまり、ある程度は仕方がないものと割り切ってあげなければならないということになります。
ただし家猫の場合は、工夫次第で適応能力をアップさせることができます。それは飼い主さんの存在です。
大嫌いな動物病院も、できれば避けたい転居も、飼い主さんがそばにいることで少しずつ確実に慣れていきます。大好きな人がいてくれる安心感が、習性や脳の働きという壁を突破する鍵になるでしょう。
まとめ
猫が新たな環境に馴染めないのは、「行動範囲の問題」「においが変化することによる混乱」「脳の特徴」などの要素が深く関わっていました。
そのため、頻繁に模様替えをしたり、家具を新調したり、引越しをすると、猫はストレスを感じてしまいます。可能な限り、環境の変化は控えるに越したことはありません。
やむを得ない事情がある場合は、猫が愛用しているものはそのまま持ち込んだり、模様替えの際も処分せず、いつも以上に甘えさせてあげるなどの気配りをしてあげてください。
『家猫は環境の変化が嫌いな反面、適応するスピードが早い』といわれるゆえんは、何よりも飼い主さんの存在があるからです。
猫のためには避けてあげたい「環境の変化」をどうしてもせざるを得ない場合には、猫にとって不要なものはできるだけ避け、超えなければならない壁に対しては乗り越える勇気を持たせてあげましょう。