猫のかぎしっぽの由来
短くて丸まっていたり、途中で折れ曲がっているしっぽのことを「かぎしっぽ」と呼びます。
鍵というよりも鉤(フック)をイメージするといいでしょう。しっぽの状態をそのまま表した、「尾曲がり猫」という呼称もあります。
かぎしっぽというと、長崎を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。というのも、長崎には他県の約2倍のかぎしっぽ猫がいるのです。それではなぜ、長崎にはかぎしっぽ猫が多いのでしょうか。
それは長崎の猫の多くが、かぎしっぽ猫が多い東南アジアから輸入されたためです。江戸時代に日本が鎖国していたとき、長崎だけが他国と貿易できたことは有名ですね。
このときに東南アジアから持ち込まれたかぎしっぽ猫が繁殖したため、長崎はかぎしっぽ猫であふれることになったのです。
猫のかぎしっぽの特徴
かぎしっぽの最大の特徴は「折れ曲がっている」ことです。一般的に猫のしっぽはまっすぐですが、かぎしっぽは途中でくの字を描くように折れてしまっています。
ちなみにしっぽの形状には種類があり、長くても途中で折れたり捻じれたりしたしっぽは「キングドテイル」。
極端に短くて丸まっていたり、クルクルしているしっぽは「ボブテイル」と呼ばれます。ジャパニーズボブテイルやアメリカンボブテイルは、先天的にこのようなしっぽの特徴を持つ代表的な猫種です。
厳密にはキングドテイルとボブテイルはまったく別種類のしっぽですが、単純に「折れ曲がっているしっぽ」を総称して「かぎしっぽ」と呼ぶことが一般的です。
猫のかぎしっぽの原因
個性的な印象のかぎしっぽですが、しっぽが折れ曲がる原因のほとんどは先天的なものです。
研究は現在も継続されていますが、生まれながらにかぎしっぽを持つ猫種から遺伝子の変異が見られたそう。遺伝子変異は純血種より雑種に見られることが多く、純血種のかぎしっぽ猫はほとんどいません。
一方、後天的にかぎしっぽになるパターンもあります。ドアに挟まったり交通事故に遭ったりして、しっぽの一部が変形してしまうことが原因です。かぎしっぽの野良猫が多いのは、飼い猫よりも事故に遭いやすいためでしょう。
幸運を呼ぶと言われる理由
かぎしっぽの猫は幸運を呼ぶと言われますが、そのルーツは江戸時代にまでさかのぼります。
昔は猫は不吉なものとされ、『猫が死ぬと猫股になる』と恐れられていました。そんな話とともに言い伝えられたのが、かぎしっぽを持つ猫は猫股にならないというウワサ。
これを受けた江戸時代の人々は、当然ながらかぎしっぽ猫ばかりを家に迎え入れます。その結果かぎしっぽ猫が増えたため、今でも日本はかぎしっぽ猫が多い国なのです。
江戸時代は今より科学が未発達だったので、縁起物をとても大切にしていたのですね。
また、もっとシンプルな理由として、『フックのようなしっぽが幸運を引っかけてくれるから』というものもあるようです。なんだか軽い冗談のようですが、かぎしっぽの猫がさらにチャーミングに見えてきますね。
まとめ
幸運のシンボルとして、古くから人々に愛されていた「かぎしっぽ」。しっぽが折れる原因は「遺伝子変異」「事故による怪我」などですが、猫を恐れる風潮があった江戸時代の日本では大変に重宝されました。浮世絵では、短いしっぽやかぎしっぽの猫が描かれることが圧倒的に多かったようです。
このような背景があったため、世界でも日本はかぎしっぽ猫が多い国として知られています。日本ではかぎしっぽの猫は比較的身近ですが、猫好きでも見たことがないという国もあるのです。
短くてくるんと巻いたかぎしっぽ、長いけれど途中で折れ曲がったかぎしっぽなど、さまざまな種類があるので、かぎしっぽ猫を見かけたときにはそのあたりにも注目してみると面白いかもしれません。