猫の攻撃性
猫には「名ハンター」というイメージがあります。そのため、とても好戦的で攻撃性の強い動物だと思われるかもしれません。しかし実際は決して好戦的なわけではなく、ただ警戒心が強いだけなのです。
警戒心が強いのは、生きていくために必要な能力です。つまり、愛猫が身の危険を感じるほどの恐怖や不安、緊張を感じるような状況にならなければ、基本的には猫が飼い主さんや普段仲良く過ごしている同居動物たちに襲いかかるようなことはないといえます。
実際に、猫たちは恐怖や不安を感じると、相手に向かって「威嚇」を行います。威嚇は戦闘開始の合図ではなく、「そこから立ち去れ!さもないと痛い目に遭わせるぞ!」という警告なのです。
ただし、いくら警告を発しても状況が変わらず、猫の警戒心や恐怖心が最高潮に達してしまうと、自分の身を守るために引っ掻いたり咬み付いたりと、名ハンターとしての能力を発揮することになります。それは、相手が飼い主さんや仲の良い同居動物でも同じです。
「猫に近づくと危険」なシーン
今回は、猫に近づくと危険なシーンとそのときの猫の気持ち、そして近づいても大丈夫になったかどうかの見極め方を解説します。
1.低い体勢になりイカ耳で牙をむき出し「シャーッ!」を繰り返す
この状態の猫を見るとすぐにでも襲いかかってきそうな気がしますが、そういうわけではありません。「こっちに来るな!」と警告を発している状態です。つまり、戦闘意欲よりも恐怖や不安の気持ちの方が強いのです。
そのため、そのままそっとその場から離れるのが正解です。無理に近づいて撫でたり抱き上げたり、ましてや怒鳴りつけたりすると、恐怖心を煽ってしまい攻撃に転ずる可能性があります。
2.全身の毛を逆立て尻尾も大きく膨らまして大声で唸る
猫同士が喧嘩をする直前に見せる行動です。「ウワァオォ〜!」といった声で唸り、尻尾を含めて全身の毛を逆立てて体を大きく見せようとしています。これは、猫が極度の緊張状態であることを示しています。
猫が体を大きく見せている場合、それはその猫が優勢であることを意味しています。ただし、相手を立ち去らせようとしている段階なので、ここで飼い主さんが仲裁に入れば喧嘩を止められるでしょう。
素手ではなく、モップや丸めた新聞紙などを間に差し入れて劣勢な猫を素早く逃し、優勢な猫が追いかけないようにしてください。
万が一飼い主さんに向かってこのような唸り方をした場合は、速やかにその場を離れて猫が落ち着くまで待つことです。
3.大声で何度も叫ぶ
「ア〜オ、ア〜オ」と大きな声で何度も叫ぶように鳴いているときは、恐怖のあまり緊張状態が高まっています。猫はイカ耳になり、瞳孔が開いているでしょう。このような状態のときは、(これから嫌なことが起きる!)と察知して興奮していることが多いです。
例えば「動物病院に連れて行こう」とか「爪切りをしよう」など、飼い主さんが猫が嫌がることをしようと目論んでいるときです。そのまま追い詰めると必死に抵抗するため、一旦興奮状態が収まるまで待ち、素早く捕まえるしかありません。
叱っているときにこのような様子を見せた場合は、早々に切り上げてください。追い詰めすぎると、猫が失禁したり、脱糞したりすることもあります。
4.威嚇をしても相手の態度が変わらないため低い唸り声に変わったとき
これまで紹介したのは、猫が最悪の状況を回避するために威嚇するための行動でした。しかしこれらの威嚇に効果が見られず状況が変わらないと、いよいよ猫は攻撃モードにスイッチを切り替えます。
「ヴヴヴヴゥ〜」といったような喉の奥からひねり出すような低い唸り声を出し、尻尾も含めて全身の毛を膨らませ、鼻には思いっきりシワを寄せ、牙を向き出だして目を吊り上げた恐ろしい表情を見せます。
猫同士が喧嘩を始めるときに見られる状況で、こうなったら仲裁に入るのは危険です。引っ掻かれたり噛みつかれたりして、その傷から病原菌に感染することも多いため、こうなる前に仲裁することが大切です。
5.特定の部位を触ると威嚇する、急に攻撃的になった
特定の部位を触ると威嚇する場合は、椎間板ヘルニアや脱臼、骨折などを抱えている可能性が考えられます。
また、今まで穏やかな性格だったのに急に攻撃的になったという場合は、脳腫瘍、脳炎など、脳の病気やホルモン系の病気の可能性も考えられます。
威嚇する原因が見当たらない、歩き方がいつもと異なるなど、他の症状も見られる場合は動物病院で診てもらいましょう。
近づけるようになるタイミングの見極め方
猫が威嚇をするのは、最悪の状況になるのを避けるためであることがほとんどです。そのため、無理に近づいて撫でたり落ち着かせようとするのではなく、その場から離れてしばらくそっとしておくのが一番の良策です。
落ち着かせようと積極的な行動に出るのは、怒鳴るにしろ優しくするにしろ、猫の気持ちを逆なでしてより恐怖感を増長させることにつながります。また猫が落ち着いたように見えても、すぐには近づかないことです。
落ち着きを取り戻し、いつもの状態に戻って甘えたくなれば、自分から飼い主さんに近寄ってきますので、それまではじっと待ちましょう。
なお、同居猫との不仲で頻繁に威嚇する光景が繰り返される場合は、生活する部屋を分けるなどの工夫も必要になるでしょう。
まとめ
足元の愛猫に気づかずに軽く蹴飛ばしてしまい、「シャーッ!」と1回威嚇される程度であれば、「気をつけろ!」程度の抗議なので危険はありません。
しかし、猫が本気で威嚇しているのに状況が変わらないままだと、追い込まれた猫は攻撃モードにスイッチを切り替えます。
猫の気持ちが爆発する前に状況を変え、猫をそっとして自然に落ち着かせることが大切です。