おうちの猫ちゃん「避妊手術」してますか?避妊手術の重要性を現役獣医が解説

おうちの猫ちゃん「避妊手術」してますか?避妊手術の重要性を現役獣医が解説

猫ちゃんをおうちに迎える際に、飼い主さんの責任として必ず考えなければならないのが避妊手術を行うかどうかということです。手術というとリスクなどを考えて躊躇する飼い主さんも多いと思います。避妊手術とはどんな手術なのでしょうか?

猫の避妊手術とは?

横になって獣医師にお腹を触られる猫

猫の「避妊手術」という言葉自体は聞いたことがある言葉だと思います。

実際に飼い主さんが避妊手術を行う判断をしなくても、たとえば保護猫さんをお迎えした場合などはすでに避妊手術を行われていることが多かったりします。

最近では地域猫さんで避妊手術を済ませている場合に、避妊手術が済んでいることのサインとして耳に切り込みを入れているため、「さくら猫」という呼び名が一般的だったりします。

また、猫に避妊手術を行うかどうか選択する際にも、どんなものなのかわかっていないと、躊躇してしまうこともあるでしょう。それでは、「避妊手術」とはどんな手術なのでしょうか。

卵巣や子宮を摘出することで妊娠しないようにする方法

避妊手術とはその名の通り、妊娠を避けるために行う手術です。妊娠に関連する卵巣や子宮を摘出することで妊娠をさせないようにします。

  • 卵巣だけ摘出する
  • 卵巣と子宮の両方を摘出する

など手技は様々です。

卵巣や子宮は腹腔内に存在する臓器であるため、基本的には開腹手術によって行う手術です。そのため、日帰りの手術ではなく入院になる可能性も高いです。

麻酔を用いて行う手術

開腹手術であり、メスを用いて行う手術であるため、痛みや出血を伴う手術です。きちんと猫ちゃんへの負担をかけないために麻酔を用いて、痛みや感じたり、術中に暴れてしまうことが無いように行います。

猫ちゃんは眠っている状態で行なう手術であるため、術中に痛みを感じることはほとんどありません。しかし、麻酔をかけるということは、体に負担をかけることになります。

麻酔をかけても問題が無いかどうか、事前に全身状態を把握するための検査を行うことが一般的ですが、極度の恐怖を感じたり、興奮をしてしまう猫ちゃんの場合はこの検査は省略する場合もあります。

一般的には麻酔をかけている間も、安全に維持が出来るよう、心拍数や呼吸数などを管理するケースが多いです。

現在では開腹手術だけでなく腹腔鏡を用いて手術する方法も

子宮や卵巣は腹腔内にある臓器のため、避妊手術は一般的には開腹手術で行ないます。最近では医療技術も進歩しているため、腹腔鏡を用いて回復をせずに行う方法も一般的になってきました。

メリットは、傷口も小さく体への負担が小さいこと、開腹をしないため入院日数を減らすことが期待できるなどが挙げられます。

デメリットは腹腔鏡のある動物病院に限定されるため、どの動物病院でも受けられるわけではないことなどが挙げられます。

かかりつけの先生がどのような手技で行なうのかということも、事前に確認しても良いでしょう。

猫の避妊手術の必要性

額を合わせて仲が良さそうな2頭の猫

手術を行わなくて済むのであれば、体に負荷をかけない方が良いかもしれません。

しかしそれでも避妊手術を行った方が良い理由があります。

望まれない次世代を生み出さないために

避妊手術を受ける目的は妊娠を避けることが一番の目的です。計画的でない乱繁殖は、飼育崩壊や保健所での保護などにもつながる可能性があります。

猫ちゃんの場合、繁殖のシステムが交尾排卵と呼ばれ、女の子の発情が来て交尾を行なうと、交尾が刺激となり排卵が促されるため、妊娠をする確率が高いです。

発情期が来た女の子のフェロモンは男の子を誘うため、お家に一緒に飼育していなくても、近隣の男の子たちを誘ってしまい、お外の猫ちゃんがお家に入ってきて交尾をして妊娠してしまうというケースも考えられます。

望まれない次世代の繁殖やその結果、地域に放されてしまったり、処分されてしまう子たちを減らすためにも避妊手術は大切です。

病気の予防

妊娠や出産にも前向きなご家庭であっても、もう一つ考えなければならないのが病気の予防です。性ホルモンが関連する病気の予防のためにも避妊手術は有効です。

もっとも有名なのが乳癌です。乳腺腫瘍は良性のものと悪性の癌のタイプの両方がありますが、猫ちゃんの場合悪性になる確率が高いと言われています。乳癌の予防のために、避妊手術を早期に行うことはとても効果が高いと言われています。

併せて、猫ちゃんは発生率が低いですが、子宮蓄膿症の予防にも繋がります。

子宮蓄膿症は子宮に膿が溜まってしまう疾患ですが、程度がひどい場合、子宮が破裂したり、全身状態が悪くなってしまって死につながる危険性があるため注意が必要です。

これらの疾患の予防のためにも、避妊手術は検討しなければなりません。

猫同士のトラブル防止や問題行動の防止に

猫ちゃんの問題行動につながる一つの要因として、発情があり得ます。

猫ちゃんの女の子の発情期は大きな声で鳴くことや性格が急に変わったりすることで、飼い主さんも気付きやすい傾向があります。飼い主さんの生活に、猫ちゃんの行動が負担をかけてしまうことがあるため、困る飼い主さんが増えます。

また、同居している猫ちゃんがいる場合に、発情している猫ちゃんのフェロモンに誘われて、男の子も性格が変わったり、何匹かの猫ちゃんが女の子を奪いあう喧嘩に発展するなどのトラブルにつながる危険性もあります。

特に多頭飼育をしている場合は、避妊手術を行うことで、猫ちゃん同士の関係のトラブルの軽減や問題行動の削減につなげられるでしょう。

猫の避妊手術のデメリット

術後服を着ている猫

避妊手術は病気や乱繁殖、問題行動の予防のために大切なものではありますが、同時にデメリットもあります。

メリットとデメリットを合わせて考えた時に、どちらがお家の猫ちゃんに与える影響が大きいのかを判断すると、後悔の無い決断につなげられると思います。

肥満になりやすくなる

避妊手術を行うことで、性ホルモンのバランスの乱れなどから肥満になりやすくなる傾向があるとされています。

肥満になることで、糖尿病などの病気につながるリスクがあり、関節などにも負担をかけるため注意が必要です。

持病があったり、食欲のコントロールが難しい子の場合は、食欲の増加は避妊手術後の生活に大きな影響を与える可能性が高いでしょう。

麻酔をかける際のリスク

麻酔をかけることは体に負担をかけることになることが多いです。全身状態が良い子であれば安全性は高いですが、持病がある子や年齢、全身状態が悪い子などは注意が必要です。

麻酔をかけるということは、どんなに簡単な手術であっても100%の安全は無いと言われています。そのためにも、事前に全身状態を把握したり、その日のために全身状態をより良くするなどの対処をすることが多いです。

お家の猫ちゃんの全身状態などを含めて、術前にリスクについてかかりつけの先生と相談しておくとより安心でしょう。

精神的なストレス

猫ちゃんにとっては、病院に連れてこられること自体がストレスになることが多いです。

さらに、手術を行い、入院や術後の痛み、抜糸などで飼い主さんとの距離が大きくなってしまったという話も良くお聞きします。

精神的なストレスをより軽減するためにも、入院日数の相談や、術後の鎮痛剤の使用の検討、抜糸の要らない縫合方法などをあらかじめ相談しておくと、猫ちゃんにとってもより安心と思います。

まとめ

人の膝の上に乗って可愛がられている猫

避妊手術は、望まれない妊娠を防ぐためにも、病気を防ぐためにもとても大切な手術です。

少しでもリスクやお家の猫ちゃんの不安やストレスが軽減できるよう、飼い主さんの持つ猫ちゃんの性格などの情報と、かかりつけの先生が知っている全身状態などとを合わせて、より良い方法が見つけられると良いでしょう。

不安に思うこともかかりつけの先生とぜひよくお話をして、問題点が解決されたうえで手術に臨めるとより理想的と思います。

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