猫は孤独が好きなわけではない
猫は群れでなく単独で生活する動物なので、孤独を愛し、他者との交流を好まないというイメージが強いかもしれません。しかしそれならば、なぜ猫は人と一緒に暮らすようになったのでしょうか。
本当に猫が孤独を愛しているのであれば、居心地の良いすみかと安定して食事にありつける利便性との引き換えにするには、人と一緒に縄張りを共有する暮らし方は、代償としては大きすぎるはずです。
最近の研究では、『猫には猫なりの社会性がある』ということも分かってきています。
猫は、決して他者との交流を好まない動物だというわけではないのです。常にベッタリと濃密に注がれる愛情は苦手かもしれませんが、適度な距離感が保たれていれば、母親的な存在である飼い主さんとの交流を望んでいると考える方が自然です。
そう考えた上で愛猫の行動をよく観察していると、飼い主さんのどのような行動が猫に孤独を感じさせ、寂しい思いをさせているのかを汲み取ることができるでしょう。
猫に「孤独」を感じさせる飼い主の行動
では、猫に「孤独」を感じさせてしまう飼い主の行動とは、どのような行動が該当するのでしょうか。
1.長時間留守番をさせる
自由気ままに暮らしているように見える猫ですが、実はとても保守的です。いつもと変わらない環境でいつもと変わらない生活を送ることが、猫にとっての安心できる暮らし方です。
そのため、突然いつもの留守番よりも長い時間をひとりで過ごさなければならなくなると、不安になり孤独を感じます。
毎晩仕事先から帰宅し、翌朝にはまた仕事先に出かけるという生活サイクルの飼い主さんも、時々出張などのように泊りがけで家を空けなければならないことがあるはずです。そのようないつもとは違う長い留守番をしなくてはならない状況が発生すると、猫は孤独によるストレスから体調を崩すことがあります。
帰宅すると床に嘔吐の跡があり、その後も2〜3日はよく吐いたり食欲が減ったりすることがあったりすることなどもその一例です。
2.長時間来客を滞在させる
普段は愛猫と飼い主さんだけで暮らしていて、他者との交流があまりない、というような暮らし方をしている場合、来客は猫の大きなストレスになる可能性があります。
このような暮らし方のご家庭に来客があった場合、来客の滞在中は猫が身を隠してトイレにも出てこなくなることが多いです。
そして来客の間、猫はとても不安で孤独な時間を過ごしていることでしょう。
3.いつまでも無関心を続ける
最近は在宅ワークが普及して、一日中自宅で仕事をされる飼い主さんも多いことでしょう。しかしその場合、在宅時間が長くなっても実際は仕事中なので、愛猫に対して関心を払っている暇はありません。
すぐ側にいるのに、いつまでも無関心でいられる時間が続く状況は、猫にとって孤独で寂しい時間です。ベッタリとした濃厚なコミュニケーションは苦手ですが、全くの無関心も寂しいという猫心を、飼い主さんは理解してあげましょう。
4.新入り猫ばかりかわいがる
何かの縁があって、新しい猫を家に迎え入れることもあるでしょう。その場合、新しく迎え入れた猫への関心が高まったり、新しい子のお世話にかける時間が多くなってしまいがちです。
しかしこれは、先住猫を孤独にさせる大きな要因になります。
たとえ先住猫が成猫で新しく迎え入れた猫が子猫であったとしても、飼い主さんは先住猫への愛情が変わっていないことを積極的に示す必要があるのです。
やむを得ない場合のフォロー方法
ではここからは、出張や急な来客等で、やむを得ず愛猫を「孤独」にさせてしまった場合のフォロー方法について解説します。
長い留守番や来客の滞在後のフォロー方法
出張から帰宅した後や来客が帰った後は、いつもよりも意識して愛猫をかわいがりましょう。
スキンシップを図りながら優しく声をかける時間を増やし、一緒におもちゃで狩りごっこをして遊ぶ時間を長めに取りましょう。
愛猫がひとりで長く過ごしたことを褒め、ねぎらう気持ちを態度で示すことが大切です。
在宅ワーク時のフォロー方法
忙しくて愛猫に関心を向けられない時間が続くこともあるでしょう。しかしどんなに忙しくても、朝仕事を始める前や夜就寝する前などの愛猫の食事時間の前になったら、必ず一緒におもちゃで遊ぶ時間を作りましょう。
できれば、仕事中でも愛猫が自ら近づいてきて甘えたい素振りや関心を引き付けたい素振りを示した場合は、一瞬でも良いので、愛猫をしっかりと見ながら、撫でたり声をかけたりして「決して無関心ではない」ことを示してあげましょう。
新入り猫を迎え入れたときのフォロー方法
新入り猫を迎え入れた場合の鉄則は、何事も先住猫を優先することです。そうすることで、先住猫には「先住猫への愛情が変わらないこと」を伝えられ、新入り猫には「優先されるのは先住猫だよ」と伝えられるからです。
この鉄則を徹底することで、自然と先住猫と新入り猫の関係性も構築されていきます。
まとめ
犬とは異なり、毎日散歩に連れて行く必要もないし、濃密な関係性を築く必要もないからという理由で、猫と一緒に暮らすことを決めた飼い主さんもいるかもしれません。
確かに犬と比べれば、猫は単独行動を好み、ベタベタと構われることを嫌がる傾向があります。
とはいえ、猫は飼い主さんとの関係性を全く求めていないわけではありません。猫にとっての「適度な距離感」を保った上で、飼い主さんとの間にしっかりとした関係性を築きたいと思っているのです。
愛猫の気持ちを汲み、日々のコミュニケーションを大切にして、愛猫との間にしっかりとした絆を結んでください。