「アニマルセラピー」とは
「アニマルセラピー」という言葉は一見英語のように見えますが、実は和製英語です。正式な英語での名称は『Animal Assisted Interventions』で、日本語では「動物介在介入」といいます。
広義では『動物と触れ合って心が癒やされること』も含まれますが、日本で「アニマルセラピー」と呼ばれているのは、対象者がいて目的が設定され、それを実現するために動物が関わって実施される活動です。
具体的には以下の3つの活動に分けられます。
- 動物介在活動(AAA:animal assisted activity)
- 動物介在療法(AAT:animal assisted therapy)
- 動物介在教育(AAE:animal assisted education)
日本では1986年に『公益社団法人日本動物病院福祉協会(JAHA)』が、『コンパニオンアニマル・パートナーシップ・プログラム(CAPP)活動』として始め、以来全国各地で獣医師や一般の飼い主さんとその伴侶動物たちによるボランティア活動として行われてきました。
「動物介在活動」は、高齢者福祉施設などで高齢者の生活の質の向上などを目指すふれあい活動です。「動物介在療法」は、医師や療法士などと一緒に病院や施設などで治療目的のプログラムを行います。「動物介在教育」は、小学校や図書館などで子どもたちに動物との触れ合いを通して多くの経験を積んでもらう活動です。
これらの活動に関しては、人と動物の関係に関する国際組織『IAHAIO(International Association of Human-Animal Interaction Organizations)』という世界的組織が世界基準を定めており、JAHAのCAPP活動もこの基準に準拠しています。
「アニマルセラピー」に参加できる動物たち
海外では、犬や猫、馬などの伴侶動物の他に、イルカといった野生動物が参加するプログラムもありますが、ここでは日本における『公益社団法人日本動物病院福祉協会(JAHA)』のCAPP活動をご紹介します。
1986年からの活動実績報告によると、29,775人の獣医師、168,059人のボランティア、126,828頭の犬、24,205頭の猫、7,776頭のその他の動物により、全国164ヵ所の施設に22,571回の訪問活動が行われてきたそうです。
参加できる動物の種類は、犬、猫、ウサギ、モルモットなどの人と一緒に暮らしてきた伴侶動物たちです。中でも犬や猫は、活動の中心となっています。猫が犬の1/3程度の頭数なのは、犬と比べて適性面のハードルが高いからだといえそうです。
CAPPで定めている犬・猫の適性チェック表には、下記のような項目が設定されています
1.人間が大好きで人見知りをしない
2.他の動物達とも仲良くできる
3.見慣れないものや、大きな音などにも平気
4.おすわり、マテなどの基本的なしつけができていて飼い主が確実にコントロールできる(犬の場合)
5.定期検診や予防などの健康管理をしっかり行っている
6.満1歳以上である
上記チェック項目の1〜3までは、もともと警戒心が強く臆病な子が多い猫には、ハードルが高いかもしれません。
猫の「アニマルセラピー」で期待されている効果
ではここからは、猫の「アニマルセラピー」において期待されている効果について解説します。
1.そこにいるだけで癒やしの効果
猫の可愛さは、それ自体が癒しです。また喉を鳴らして出す低いゴロゴロ音は、人の副交感神経に働きかけるためリラックス効果を期待できます。
言葉で表現することが苦手な方でも、猫となら苦手意識が芽生えづらく、孤独感の緩和やストレス解消により、精神疾患や認知症の改善効果も期待できます。
2.猫の自由奔放さがお手本に
犬のようにルールに縛られず自由に行動する猫を見て、精神疾患の患者さんたちはリラックスでき、自分もあんなふうに生きたいと憧れたり、あんなふうに生きてもいいんだという気付きを得たりするのだといわれています。
3.楽しく運動ができる
猫と一緒に過ごしたりスキンシップを図ることで、筋力が衰えてきた高齢者の方も、無理せず自然に、そして楽しく体を動かすことができます。
4.生活する意欲が向上する
特に施設内で飼育しているなど、対象者が直接猫のお世話をする機会が増えると、「自分がしっかりしなければ」という責任感や使命感が湧いてきて、生活意欲が向上します。
猫の「アニマルセラピー」における注意点
では、猫の「アニマルセラピー」で注意すべき点とは一体どのようなことなのでしょうか。
セラピーキャットには適性が必要
愛猫をセラピーキャットにしたくても、適性がなければ愛猫に強いストレスを与えるだけです。
セラピーキャットにしたい場合は、できるだけ多くの人たちとの接触機会を作り、たくさん褒め、嫌な思いや怖い思いはさせないような育て方を心がけましょう。
愛猫のストレスサインに早く気付けること
愛猫をセラピーキャットにした場合、飼い主さんは愛猫のストレスサインにいち早く気付けなければなりません。
また、CAPPは社会活動なので、飼い主さんは対象者と愛猫、まわりのスタッフや他の動物達への気配りもできなければなりません。
自宅で愛猫に癒やされたい場合
アニマルセラピーへの参加ではなく、自宅で愛猫に癒やされたい飼い主さんの注意点は、決して無理強いしないことです。
こちらからではなく、愛猫から近づいてくるのを待つことが、愛猫と仲良くなる一番の近道です。
まとめ
犬と比べると少しハードルは高いかもしれませんが、猫もアニマルセラピーの場で活躍させることが可能です。
もし愛猫と一緒に参加されたい場合は、愛猫をセラピーキャットに適した穏やかで人懐こい猫に育てましょう。