猫が思わず『釘付け』になるモノとは
「猫には幽霊が見える」という説がまことしやかに広まり、フェレンゲルシュターデン現象という名前までついたことがありました。しかしこれは誤情報でした。今では、猫には幽霊など見えていないと思っている方がほとんどでしょう。
そもそもこの誤情報が広まった背景には、猫が突然何もない空間を凝視して釘付けになってしまうのを、多くの人が見ているという事実があったと考えられます。確かに、我が家の猫たちも突然何もない壁を凝視して、その場に釘付けになってしまうことがよくあります。
もちろん、私たち人間にも見えるものを凝視していることもあります。しかし、確かに何に釘付けになっているのか分からないことが多いのも事実です。
今回は、猫が思わず釘付けになってしまうものについてご紹介します。
1.獲物を連想させるもの
猫の本能の中でも根幹を成しているのが、狩猟欲求でしょう。そもそも人間が猫と一緒に暮らし始めたきっかけも、猫のネズミを狩る能力にありました。猫の獲物はネズミのような小動物や小鳥、昆虫などの体の小さな生き物です。
そして猫は、その小さな獲物がチョロチョロと素早く動く姿を察知する動体視力に、ずば抜けた能力を有しています。そのため、獲物を連想させる小さくて素早く動くものを察知すると、猫は思わず釘付けになってしまうのです。
突然釘付けになって壁の一点を凝視し始めたとき、その視線の先にはごくごく小さな虫がいるのかもしれません。また、屋根裏に潜んでいるネズミの鳴き声や足音に反応しているのかもしれません。ベランダの手すりに止まった鳩に注目しているのかもしれません。
とにかく、獲物を連想させるものを察知すると、その対象に釘付けになってしまうのです。
2.敵を連想させるもの
猫はとても優秀なハンターであると同時に、自らも天敵から狙われる獲物でもあります。そのため、獲物に敏感なのと同じくらい敵にも敏感です。敵とは、猫を捕食する大型動物であったり、自分の縄張りに侵入しようとする他の猫や別の動物であったりとさまざまです。
窓辺に釘付けになって外を凝視しているときは、自分の縄張りに敵が侵入して来ないかどうかを監視しています。庭に野良猫が侵入したときなどは、猫にもよりますが家の中にマーキングをするなど、人間にとっては問題となる行動を起こしてしまうこともあります。
また猫にとっては、来客も不審な侵入者です。そのため、来客時には恐怖心から身を隠しながらも、物陰から来客の様子をしっかりチェックしています。
3.縄張り内の変化
猫は非常に縄張りに執着します。縄張りの中がいつもと変わらない状態でいることが、最も落ち着ける環境なのです。
猫はよく、棚や冷蔵庫、レンジフードなどの上に悠然と座り、家の中を凝視していることがあります。これは、縄張り内の様子がいつもと変わりがないかを監視し、気になるものを見つけると釘付けになって観察したり、近づいてニオイを嗅いだりして確認するための行動なのです。
4.未知のもの
前述の通り、縄張り内の様子がいつもと変わらないことを望んでいる猫にとって、未知なものは警戒の対象です。見たことのないもの、聞いたことのない音、嗅いだことのないニオイを察知すると、その正体を見極めようと釘付けになります。
私たち人間には何も見えない空中や壁、天井などを凝視して釘付けになっているときは、見えないくらい小さな虫や、壁の向こう側の排水管を流れる水音、虫や動物の声など、普段とは異なる音やニオイなどを察知している可能性が高いです。
5.テレビ
もちろん猫にもよりますが、多くの猫はテレビをよく見ます。ただぼんやり眺めているだけという場合もありますが、突然テレビ画面に釘付けになったり、画面のすぐ目の前に行って凝視したり、画面をバンバン叩いたりすることもあります。
そのような時にテレビに映っているのは、小さい物が素早く動く映像だったり、鳥が羽ばたく映像だったり、猫が自由に野山を歩き回っている映像だったりします。つまり、獲物を連想させたり敵を連想させたりするものだということです。
我が家の場合は、F1レースやテニス、サッカーの試合、猫のドキュメンタリー番組などに釘付けになります。十数年前に流れていたCMで、真っ白な背景に真っ黒で小さな円が動き回りながら増えていくというアニメーションが流れると、画面の前から離れませんでした。
テレビの映像は人間の視覚に合わせて作られているため、猫には少しカクカクしたような動きに見えるらしいのですが、それでも獲物や敵らしき姿を見つけると釘付けになるようです。
猫が釘付けになるのは視覚情報だけではない!
猫も人間も、多くの情報を視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚という五感から得ています。しかし、人間はその殆どを視覚に頼っているのに対して、猫は聴覚や嗅覚に多くを頼っており、静止しているものを見る視力は、人間の近眼レベルだということが分かっています。
つまり、猫が釘付けになる対象は視覚で認識できるものだけではありません。音やニオイにも敏感に反応して、釘付けになるのです。
そのため、私たちから見ると「幽霊でも見えているのかしら?」と思うような行動に見える場合もあるのです。
まとめ
猫が突然釘付けになり、窓の外や壁や天井、テレビなどをじっと凝視したり、長い時間高い場所に釘付けになって部屋の中を見回しているのは、狩猟欲求や縄張り内の監視のためだということが分かりました。
突然猫がこのような素振りを見せた場合は、刺激せずにじっくりと気になる対象に集中させてあげましょう。