目指すは元気なシニア猫
昭和の頃の猫達は、自由に外出し、ご飯と残り物のおかずなどを食べることが普通でした。最近では完全室内飼育が普及し、良質なフードも簡単に手に入るようになった上、去勢・避妊手術やワクチン接種などの予防医療も一般的になってきました。
これらの要因が組み合わさったためか猫の平均寿命は徐々に延び、今では15歳強となりました。その代わりに、長く持病を患ったり老化による認知症や寝たきりという生活になったりするケースも少なくありません。
そこで多くのご家族は、「元気に長生きしてほしい」と願うようになりました。一見気ままなように見えて臆病で神経質な猫は、実はストレスに弱く、ストレス性の病気も多いです。愛猫を心身共に健康で元気なシニア猫にし、長生きさせるための秘訣をご紹介します。
元気なシニア猫の長寿の秘訣とは
では、元気に長生きしているシニア猫の長寿の秘訣とは、いったいどのようなことなのでしょうか。
1.食事
人間と同様に、猫もライフステージや妊娠・授乳期間中は、それぞれに必要な栄養バランスやカロリーが異なります。また、去勢・避妊手術をすることで太りやすくなるため、術前と同じ量だけ食べさせてしまうとすぐに肥満になってしまいます。
愛猫のライフステージ、健康状態、運動量などに合わせて、常に適正体重・体型を維持できるような食事内容と量の管理を行いましょう。また、新鮮な水をいつでも自由に飲めるようにしておくことも、とても大切です。
2.生活環境の整備
猫は、単独で縄張りを守りながら暮らしていました。そのため人と一緒に暮らす猫達も、縄張りである家の中を守ろうとし、室内のちょっとした変化や見知らぬ訪問客などがとても強いストレスになります。また、猫は高い場所を利用して縄張りを監視し、ご家族(飼い主さんや同居動物たち)と上手に縄張りを共有します。
家具の上を解放したりキャットタワーを設置したりして室内を立体的に使わせ、身を隠せる隠れ家を用意して、ストレスの軽減を図りましょう。
3.ストレス発散
猫はハンターです。人と一緒に暮らし始めた理由も、ネズミなどを狩る能力が見初められたからだといわれています。そのため、自ら食料を調達する必要がなくなっても、本能的に狩りをせずにはいられません。
毎日、できれば食事の前に10〜15分程度の時間を作り、猫じゃらしなどのおもちゃで愛猫と狩りごっこをして遊びましょう。本能が満たされ、ストレスを発散でき、穏やかな気持で過ごせるようになります。
4.健康管理
一部の大型猫種を除き、基本的に猫は1歳でおとなの体になります。そこで、1歳になった時点で血液検査、尿検査、画像検査などを含めた総合的な健康診断を受け、愛猫の健康状態を把握しましょう。そのためにも、できるだけ早くかかりつけの動物病院をつくりましょう。
またご家族が喫煙される場合は、できるだけ速やかに禁煙されることをおすすめします。ご家族の喫煙は、猫の悪性リンパ腫の発症率を2.4倍に高めることが分かっています。
猫の成長段階ごとに注意すべきこととは
ではここからは、長寿猫を目指すために子猫の頃から注意しておくべき点について、猫の成長段階別に解説いたします。
1.子猫期
子猫期とは、生まれてから生後6ヵ月齢までの期間です。この時期は好奇心旺盛なため、体験から多くのことを学びます。
特に、2〜9週齢頃までの時期を社会化期といい、母猫やきょうだい猫達と一緒に過ごしながら猫としての社会性を身につけていく大切な時期です。
その後も、できるだけたくさんの友好的な人達や動物達と触れ合わせ、多くの体験をさせることで、おおらかな素地を身につけさせましょう。
2.青年期
青年期とは、生後7ヵ月齢〜2歳までの期間です。どんなに元気な猫でも、生涯を通して怪我も病気もしないということはないでしょう。
また必要なお手入れをストレスと感じさせずに行えるようにするためにも、この時期は積極的にスキンシップを図り、全身のどこをさわっても嫌がらないように慣らしていきましょう。
3.成猫期
成猫期とは、3〜6歳までの期間です。青年期までは病気知らずだったかもしれませんが、猫によってはそろそろ体の不調が現れはじめる子も出てきます。
最低でも年に1回は総合的な健康診断を受け、不調の早期発見に務めましょう。
4.壮年期
壮年期とは、7〜10歳までの期間です。人間でいうと40代後半から50代前半頃にあたり、猫もまだ活発ではあるものの、少しずつ代謝量や運動量が減りはじめ、成猫期と同じように過ごしていても太りやすくなります。
肥満は猫にとっても万病のもとであり、良いことは一つもありません。これまで以上に適正な体重・体型の維持に気を遣い、健康診断の頻度もできれば年に2回に引き上げると良いでしょう。
5.高齢期
高齢期とは11〜14歳までの期間で、いわゆるシニア期です。この時期になると、ほとんどの猫に慢性腎臓病や変形性関節症がみられるようになります。
病気と共に老化のサインも見逃さず、愛猫の状態に適した環境の整備を心がけましょう。
6.老猫期
15歳以上が老猫期です。徐々に老化の症状が本格的になり、いつの間にか視力や聴力、嗅覚などが衰え、足腰が弱り、高いところへ上れなくなります。中には認知症を発症する場合もあります。
愛猫の様子に少しでも変化が現れたら、かかりつけの動物病院に相談し、より暮らしやすい環境になるよう工夫を凝らしましょう。
まとめ
愛猫を元気なシニア猫にする鍵は、食事、環境、ストレス発散、健康管理です。愛猫の様子をよく観察し、小さな変化を見逃さないようにしましょう。そのためには、体重・食事量・飲水量・排泄の量や状態などを意識的にチェックし、記録することをおすすめします。
また猫はとても歯周病になりやすく、重症化すると歯周病菌が他の臓器にも感染してしまいます。意外かもしれませんが、愛猫の健康と長寿には、歯磨きがとても大切です。歯磨きを習慣づけることも強くおすすめします。