猫を迎え入れる前に知っておこう
見た目がとても可愛らしい猫は、いかにも私達を癒やしてくれそうです。しかも「猫は狭い部屋でも大丈夫だし、散歩の必要もないから手がかからない」などと聞いてしまうと、「自分も!」と考え、愛猫との楽しい暮らしに想像の翼を広げるかもしれません。
しかし猫は、ハンターとしてネズミを狩る能力を見込まれて人と一緒に暮らすようになった動物です。猫なりの思考をし、感情も持っています。一緒に暮らしていく上で、手がかからないわけがないのです。
愛猫との幸せな暮らしだけを思い描き、ごく軽い気持ちで迎え入れてしまってどうにも手に負えなくなり、結局手放したいなどという不幸な結果にならないように、大変なこともたくさんあるということを知った上で、迎え入れるかどうかを考えていただきたいと思います。
猫と一緒に暮らす上で大変なこと
ではここからは、実際に猫と一緒に暮らす上で大変なことを具体的に確認していきましょう。これから猫をお迎えしたいと思っている方の参考になれば幸いです。
1.お金がかかる
猫との暮らしには、思った以上にお金がかかります。
猫の平均寿命は約15歳ですが、20歳前後まで長生きしてくれる猫も珍しくありません。その生涯を通して、食費、毎日使うペットシーツなどの消耗品費等が不可欠です。高齢になれば、介護用品を買い揃える必要も出てくるでしょう。
何より高いのは医療費です。ペット保険に加入したとしても、保険適用外の予防医療にもかなりの費用がかかります。対症療法により愛猫のQOL(生活の質)を維持するための治療が長期間必要となる病気も多いです。
2.家がボロボロになる
猫は、名うてのハンターです。そんな猫にとって大切な武器の一つが「鋭い爪」。
猫の爪は層状構造をしていて、古くなった外側の爪を剥がすと、内側から新しい鋭い爪が出てきます。この外側の爪を剥がす行動が、爪とぎです。
爪とぎは本能により組み込まれている行動なので、止めさせることはできません。爪とぎ器の与え方次第で家具で爪とぎをさせないこともできますが、そううまくはいきません。壁紙や椅子の脚、ソファなどはボロボロになるでしょう。
3.服は毛だらけ
猫の毛は想像以上に抜けます。とにかく家中毛だらけになります。
猫の立ち入りを禁じている部屋に吊るしている服にまで、猫の毛が付いている始末です。
4.猫のお世話にも体力は必要
人間の子育てと同じように、愛猫のお世話にも休みはありません。それどころか、子どもと違い猫は成長しても自立してくれません。どんなに体調が悪くても、必ず毎日の食事、トイレ掃除、持病のある猫の場合は投薬といったお世話が必要です。
お腹が空けば、鋭い爪などを駆使して起こされます。猫は汚れたトイレを使いたがらずに排泄を我慢して泌尿器系の病気になることが多いため、排泄したらすぐにトイレを片付けなければなりません。もっとも猫の排泄物のニオイはかなりきついため、ご自身のためにもすぐに片付けたくなることでしょう。
病院へ連れて行ったり、爪切りや歯磨き等のために捕まえるのも一苦労です。隠れる、威嚇する、引っ掻かくといった方法で必死に抵抗します。気力も体力もかなり必要です。
5.家を長期間空けづらくなる
猫にもよりますが、長時間の留守番が得意ではな猫もいます。充分な準備と対策をすれば、猫だけで1泊2日程度の留守番は可能ですが、帰宅すると床に嘔吐していたり、数日は体調を崩したりもします。
猫は環境変化に弱く、自分が暮らしている世界(縄張り)の変化や侵入者にはとても敏感です。そのため、猫を連れて一緒に出掛けたり、馴染みのない人に世話を依頼したりするのも猫のストレスになるため、基本的に長期間家を空けるのは難しくなるでしょう。
6.散歩の代わりに遊びが必要
猫に散歩は必要ありません。しかし、名ハンターの血が今でも脈々と受け継がれている猫にとって、狩りは必要不可欠な行動です。とはいえ、実際に獲物を狩らせる必要はありません。
食事の前に10〜15分程度、ご家族がおもちゃで一緒に狩りごっこをしてください。しっかり遊んで体力やストレスを発散させておかないと、明け方の4時頃に突然家中を走り回られ、眠っているお腹の上にダイビングされたりするでしょう。
7.ある日突然食べなくなる
猫は案外食べ物の好みにうるさいです。ようやく食べてくれるフードを見つけたと思っても、ある日突然見向きもしなくなるということも度々です。
愛猫との知恵比べを楽しめることが大切
犬と違って猫はしつけられないという話をよく耳にします。たしかに、猫にしつけをするのは難しいことですが、全くできないわけではありません。
猫が学習する主な方法は、下記の2つです。
- ある行動をした→直後に嫌な事があった→その行動をしようとしなくなる
- ある行動をした→直後に良い事があった→積極的にその行動をしようとする
猫にとっての「嫌な事」と「良い事」を選別して適切なタイミングで与えれば、猫の行動をある程度誘導できるのです。
もっとも、してほしくない行動は猫ができないような環境にすることが最も簡単な解決法です。
猫の習性を知り、猫との知恵比べを楽しむことができる方にとっては、猫との暮らしは最高に楽しいものなるでしょう。
まとめ
今回ご紹介した内容は、猫のご家族ならおそらく誰もが経験されたことです。実際に猫を飼ったことがない方にとっては、文章で読んだだけではなかなか実感が湧かないかもしれません。
しかし、たった数日なら我慢できることも、15年、20年と1日も休まずに続くのだと思うと、少しは大変さが分かるのではないでしょうか。
とはいえ、その大変さを乗り越えたからこそ得られる愛猫との楽しい時間は、一度味わってしまえば魅了されてしまうことは間違いありません。
大変なことがあるということも知った上で迎え入れるのであれば、きっとその大変さの先の楽しい時間を、愛猫と一緒に手に入れられるでしょう。