【獣医師執筆】トイレの回数が減った?冬に気を付けたい猫のおしっこの異常

【獣医師執筆】トイレの回数が減った?冬に気を付けたい猫のおしっこの異常

寒い時期になると一般的に水を飲む回数はどんなペットでも減りやすいと言われています。そんな中、特に猫は尿の問題を起こしやすい動物です。また、室内飼育での運動不足や肥満、与えている食事の品質、そしてストレスは膀胱炎や尿石症のリスクを高めてしまいます。今回は、冬に気を付けたいおしっこに纏わる病気について解説します。

猫は本能的に排尿回数が少なく、おしっこのトラブルが起きやすい

仰向けで寝る猫

猫は砂漠に暮らす哺乳類の子孫で、本能的に水分摂取量も排尿回数も少ないため、おしっこのトラブルが起きやすいです。

猫の尿に異常を起こす病気は、約60%が特発性膀胱炎、20%が尿石症、10%が細菌性膀胱炎と言われています。いずれの病気も下記のいくつかの症状が見られます。

  • おしっこの回数が増えた
  • おしっこが赤色やピンク色になる
  • おしっこがなかなか出ない
  • うめいたり、踏ん張ったりしながらおしっこする
  • トイレ以外の場所でおしっこをする
  • 陰部を頻繁に気にする

具体的な病状について

おしっこを見つめる猫

では、尿に問題を抱えている場合の病気について、詳しく解説していきます。

1.特発性膀胱炎

原因がはっきりしない膀胱炎のことを言います。

比較的若い猫に多く、治っても再発しやすいという特徴があり、もともとの猫ちゃんの体質と、何らかのストレスが引き金となって発症すると考えられています。

2.尿石症

腎臓から尿管、膀胱、尿道の中に結晶や結石ができる病気です。

猫自身の体質や細菌感染、不適切なキャットフードのために、おしっこの中にマグネシウム、リン、カルシウム分などのミネラル成分が増えたり、尿のpHバランスが崩れたりすることで結晶や結石ができやすくなります。

3.細菌性膀胱炎

膀胱の中は通常「無菌」ですが、その膀胱に細菌が侵入してしまい炎症を起こしてしまったことによって起こる病気です。

何かしらの原因で免疫力が低下してしまった状態の猫ちゃんに多く見られます。

病気かな?と思ったら、動物病院の受診を

診察を受ける猫

おしっこの異常が見られて病気かな?と思ったらなるべく早く動物病院を受診しましょう。

進行して、結石が尿管や尿道などに詰まって尿が出なくなってしまうと、尿路閉塞を起こすことがあります。そうなると、急性腎不全になってしまうケースも否めません。

急性腎不全は、嘔吐や痙攣などの症状を起こします。急性腎不全は進行が非常に早く、治療が遅れると命に関わります。

どんな治療をするの?

病院で横たわる猫

猫の尿に異常がある場合、「尿検査」、「超音波検査」と「レントゲン検査」を行います。

「尿検査」は尿を取り、試験紙や顕微鏡で出血・細菌・結晶などの有無を確認します。「超音波検査」と「レントゲン検査」では膀胱自体の状態や膀胱内に結石がないかを確認します。

いくつかの検査で尿の中に結晶が発見された場合、抗生物質や消炎剤の注射や内服薬での治療と、療法食を使い結晶を溶かすことと再発の予防を行います。

まとめ

毛布をかぶる猫

冬は自然と水分量が減り、おしっこの回数が減る猫も多くいます。そんな中でおしっこの異常を見つけるには、日ごろから愛猫の様子をよく観察し、トイレの回数を気にかけてあげることが大切です。

執筆者

藤野獣医師

アニホック往診専門動物病院
総獣医師長/株式会社TYL 取締役
藤野 洋(ふじの ひろし)氏

日本大学生物資源科学部(旧 農獣医学部) 獣医学科卒業後、獣医師としてペットの総合商社に入社。主に獣医師として小動物臨床に従事しながら、ペット用品及び生体販売、フランチャイズ展開の知見を深める。2007年3月に株式会社フジフィールド創業。動物病院とトリミングサロンのドミナント多店舗展開を行い、複数店舗の開業/運営を果たす。2017年3月に株式会社フジフィールドをファンドに株式譲渡。動物病院のグループ化とIPOの土台を築くために、譲渡先であるファンド出資の会社にて代表取締役としてM&A推進と既存グループ動物病院及び店舗の運営全般を行う。2021年2月TYLに取締役として参画。

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