なぜ猫は肉食動物なのに植物を食べることがあるのか
人と一緒に暮らすことにより肉食から雑食に変化した犬とは異なり、猫は人と一緒に暮らしながらも、頑なに完全肉食性を崩さずに貫いています。
にもかかわらず、猫は時々草を食べることがあります。猫草などのイネ科の植物で、便秘の解消や飲み込んで胃に溜まった毛玉を吐き出すために、胃腸を刺激するのが目的だと考えられています。
また、見たことのないものに対する好奇心から口に入れてしまう場合や、ストレスがきっかけとなり食物以外のものを食べることが癖になってしまったケースもあります。
いずれにしても、完全肉食性の猫にとって、植物はなかなか消化しづらい食材で、食べることで下痢や嘔吐を起こすことも少なくありません。また、たとえ人間にとっては薬用の効果が見込まれる成分であっても、体重が人間よりも遥かに少ない猫にとっては毒となり、強い中毒症状を引き起こす場合も多いです。
多くの観葉植物のように、虫も寄り付かないような植物はすべて猫にとって毒性があると考えておいた方が良いでしょう。
今回は、秋になると身近でよく見かけることのある秋の花の内、猫に対して毒性のあるものをご紹介します。
猫の毒となる危険な「秋の花」
猫が口にしてしまったら危険な秋の花と、口にしてしまった場合の症状について解説します。
1.桔梗
キキョウ科キキョウ属の落葉性多年草です。「秋の七草」としても知られています。
根や茎にサポニンが含まれており、人に対しては鎮咳作用があり薬になりますが、体重が遥かに軽い猫にとっては毒になりますので、食べさせてはいけません。
<経口摂取>
・嘔吐
・下痢
・胃腸炎
・溶血性貧血
2.彼岸花
ヒガンバナ科ヒガンバナ属(リコリス属)の落葉性多年草です。
草全体に、毒性のあるアルカロイドが含まれています。特に球根部分の鱗茎(りんけい)は毒性が強いとされています。
<皮膚接触>
・かぶれ
<経口摂取>
・嘔吐
・下痢
・腹痛
・流涎
・中枢神経麻痺
・死亡
3.シクラメン
サクラソウ科シクラメン属の球根植物です。
草全体に、サポニン配糖体のシクラミンを含んでいます。毒性は弱く、正しく対処すれば死亡することは稀です。
<経口摂取>
・胃腸炎
4.菊
キク科キク属の常緑性多年草です。日本では、仏花としておなじみの花です。
草全体にセスキテルペン、ラクトンなどの成分が含まれます。
<皮膚接触>
・皮膚炎
<経口摂取>
・嘔吐
5.コスモス
キク科コスモス属の一年草です。
菊と同様に、セスキテルペン、ラクトンなどの成分に毒性があります。
<皮膚接触>
・皮膚炎
<経口摂取>
・嘔吐
6.ダリア
キク科ダリアの球根植物です。
キクやコスモスと同様に、セスキテルペン、ラクトンなどの成分に毒性があります。
猫に現れる症状
<皮膚接触>
・皮膚炎
<経口摂取>
・嘔吐
猫が危険な花を口にしてしまった時の対処法
とにかく重要なのは、動物病院に連れて行ってすぐに診てもらうことです。食べた量によっても症状の重さが変わってきますので、「食べた可能性がある」場合は動物病院に連れて行きましょう。
その際、「いつ」「何を」「どのくらい」「どうやって」取り込んだのかということを、分かる範囲でできる限り詳しく獣医師に伝えることが大切です。現物が残っていれば、持参しても良いでしょう。
まとめ
もともと猫は完全肉食性のため、植物を上手に消化することが苦手です。しかも、人間にとっては薬草であったとしても、人間よりも遥かに体重の軽い猫にとっては、強い中毒症状を引き起こす毒になりかねない植物がたくさんあります。
だからといって、猫と一緒に暮らす限り、身の回りに一切植物を置いてはいけないというのでは、豊かな生活を楽しむことができなくなるでしょう。猫にとって中毒性のない、無害な植物もたくさんありますので、猫との暮らしも植物との暮らしも楽しみたい方は、ぜひ猫にとって安全な植物を調べてください。
また花粉に毒性がない植物であれば、猫が入れない部屋に飾る、猫が近寄れないような柵を設置するといった工夫により、安全性を確保することもできるでしょう。愛猫にとって安全で、かつご家族にとっても豊かな暮らしを楽しめるような工夫を図ってみてください。