猫が『自分の毛を毟る』時の原因2つ 対処法と病気の可能性

猫が『自分の毛を毟る』時の原因2つ 対処法と病気の可能性

猫は自分で自分の毛を掴み、引っこ抜くことはできませんが、舐めたりかじったりし続けることで、自分の毛を毟ってしまうことがあります。もともと猫は長時間毛繕いをする習性がありますが、毛を毟ってしまうほどの毛繕いは過剰だといえます。なぜ毛を毟ってしまうのか、その原因や対処法、裏に隠れている可能性のある病気などについて解説します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫が自分で自分の毛を毟る?

猫の舌

「毛を毟る(むしる)」と言うと、手で毛を掴んで引き抜く行為を想像するでしょう。しかし、猫が毛を掴んで引き抜くことは難しいです。猫の場合、「毛を毟る」に当てはまる行為は、舐めたりかじったりすることで毛を抜いたり擦ってハゲさせてしまう程に過剰な毛繕いだといえるでしょう。

毛繕いは、猫の特徴的な行動の一つです。ほぼ全身の被毛を丁寧に舐めます。こうすることで、猫は自分の皮膚を衛生的な状態に保ち、毛の流れを整え、上がった体温を下げ、自分の気持ちを落ち着けているのです。

猫の舌の表面は、とてもザラザラしています。これは、糸状乳頭という小さな突起が喉の方に向かって並んでいるために生じる感触です。この糸状乳頭は、毛をとかしたり汚れを落としたりする櫛の役目や、獲物の骨についた肉をこそげ落とすナイフの役目を果たしています。

糸状乳頭はとても大切な役割を担っているのですが、同じところを舐め続けることで、皮膚を傷つけたり毛をこそげ取ってハゲさせてしまったりしやすいという面も持っているのです。

猫が自分の毛を毟る時の原因

お腹を舐める猫

1.かゆみに対する反応

皮膚炎などの皮膚病の症状に「かゆみ」があります。かゆみとは、ひっかきたくなるような不快な感覚のことで、かゆみを感じると人も猫も、その部位を爪などで引っ掻いて不快感を鎮めようとします。

猫の場合、引っ掻く他に、舐めたり噛んだりすることでもかゆみを鎮めようとします。かゆみが重度で四六時中生じているような場合は、同じ場所をいつまでも舐めたりかじったりしてしまい、それが毛を毟り取ってしまうことに繋がるのです。

皮膚病の場合、かゆみだけではなく、舐めている部位に赤みや腫れ、かさぶた、フケ、膿など他の症状も出ていることが多いので、皮膚の状態をチェックし、できるだけ早く動物病院で診てもらいましょう。

2.ストレス

猫は、興奮したり困惑したり、葛藤やイライラを紛らわして自分の気持ちを落ち着けるためにも毛繕いをします。その場合は、お腹などの自分が最も舐めやすい場所を舐め続けることになります。ストレスが一過性の場合は特に問題になりませんが、ストレス状態が継続すると、毛が毟られるほどの結果に繋がってしまいます。

また、同じ部位を舐め続けることでその部位に細菌などが感染し炎症からかゆみが発生し、毛繕いをやめられなくなるという負のスパイラルに陥ってしまうことも少なくありません。そうなる前に、過剰な毛繕いをやめさせるための対処が必要になります。

猫に毛を毟らせないための対処法

遊ぶ猫

病気の有無を確認する

猫がいつまでも同じ部位を毛繕いすることで毛が毟られてしまう場合、まず最初に考えるべきなのは、病気が隠れていないかどうかを確認することです。猫が長時間毛繕いを続けている時に、遊びやご飯、おやつなどで気を逸らせられない場合は、病気である可能性を考え、できるだけ早く動物病院で診てもらうようにしましょう。

ストレス要因を突き止めて改善する

病気が隠れていなかった場合は、毛を毟る原因がストレスであると考えられます。まずは、ストレスの原因を突き止めましょう。

  • 引っ越しや部屋の模様替えなどで室内の環境が変わった
  • ご家族の生活サイクルが変わった
  • ご家族が増えたり減ったりした
  • 新しい同居動物を迎えた
  • ご飯を異なるフードに変えた

以上のように環境、生活習慣、家族構成、食事内容などに変化がなかったかどうかを振り返り、元に戻せる場合は戻し、戻せない場合は改善を図りましょう。また、新しい環境に慣れてもらうための工夫も大切です。

一般的に「退屈」が引き金になることが多いため、一緒に遊ぶ時間を増やすのも改善に繋がるでしょう。猫の遊びは狩りのシミュレーションです。瞬発力が勝負の猫には、1回の遊び時間が10〜15分程度で大丈夫なことが多いです。食事前の狩りごっこを習慣づけると、過剰な毛繕いが改善することもあります。

毛を毟る裏に隠れている可能性のある病気

診察中の猫

皮膚病

前述の通り、皮膚に赤み、腫れ、かさぶた、フケ、膿、ベトベトしている、皮膚が厚くなっている、黒ずんでいるなどの、かゆみ以外の症状も見られる場合は、迷わずに動物病院で診てもらいましょう。舐め続けて皮膚が傷つき細菌などに感染しやすくなるため、早期治療が大切です。

かゆみを伴う皮膚病は、ノミアレルギー性皮膚炎、食物アレルギー、マラセチア皮膚炎、膿皮症、脂漏症などさまざまです。また、外耳炎や耳ダニなど耳にかゆみがある場合も、頭を振ったり首のあたりを掻いたりすることがあります。

膀胱炎、腎臓病、関節炎

内臓や関節の病気なので、意外かもしれません。しかし、違和感や不快感を紛らわすために、お腹などの舐めやすい場所を舐めたりかじったりし、それが習慣化されてしまって毛を毟ることにつながってしまうことがあります。

皮膚にかゆみ以外の症状が見られないからといって、安易に原因をストレスと決めつけず、まずは動物病院で検査を受けて病気が隠れていないことを確認するようにしてください。

まとめ

手を舐める猫

猫は長時間毛繕いをすることが知られているため、愛猫がいつ見ても毛繕いをしていたからといって、特にご家族が心配されることはないかもしれません。しかし、いつもよりも毛繕いをしている時間が長いな、頻度が多いなと感じた場合は、注意してください。

気が付いたらお腹の毛が薄くなり、皮膚が殆ど見えているような状態だったという話は、決して珍しくはありません。猫に鼻の頭などを舐められて、舌のザラザラの痛さに驚いたご家族も少なくないはずです。それは、愛猫にとってもダメージになることを知っておいてください。

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