ため息の効能
ため息とは、深く息を吸って溜めた息を長く吐き出す行為です。心理的な原因で出てしまう行為だと考えがちですが、実は体が欲して出る行為なのだということをご存知でしょうか。
ストレスや緊張した状態が続くと呼吸が浅くなり、血液中の酸素が不足気味になります。それを補うために、体は交感神経を働かせて血管を収縮させ、血圧を上げて全身へ酸素を供給しようとします。
交感神経は血圧や心拍数を高めて体を活性化させ、副交感神経は体をリラックスさせますが、この両者がバランスよく働くことで、生命活動が支障なく行われるのです。
ため息をつくことで、筋肉の緊張で浅くなっていた呼吸が深い呼吸になり緊張がほぐれます。酸素が不足気味だった血液は、血管が収縮して酸素の供給量が増えます。交感神経だけが優位だった状態から、副交感神経もしっかりと働く状態になることで、体や血液の状態が改善されるのです。
このため息の効果は人間に限った話ではなく、猫も同じなのです。では、具体的に猫がため息をつくタイミングと、その理由や心境を紹介していきましょう。
1.緊張状態からリラックス状態へ切り替わる時
猫は、緊張状態からリラックスした状態に切り替わる時に、ため息をつきます。いくつか、具体的なシーンを例示してみましょう。
遊び終わった時
猫にとって、遊びは狩りのシミュレーションです。息を殺すほど真剣に獲物を狙い、集中しています。そのため、遊び終わった後に鼻から「フーッ」と息を吐いてため息をつくことがあります。やりきって達成感に浸っている瞬間かもしれません。
窓から外を眺めている時
猫にとって家の中は大切な縄張りです。窓から見える庭先や道路を通る野良猫、通行人、車などは、自分の縄張りに侵入しようとしている不審者です。縄張りを侵そうとしていないか真剣に監視し、「よし、大丈夫だ」と安全を確認してホッとした時にも、ため息をつくことがあります。
2.自分で自分を落ち着かせようとしている時
猫は、ストレスや緊張状態が続くと、自分で自分を落ち着かせようとします。その際に、鼻から「フーッ」とため息をつくことがあります。いくつか、具体的なシーンを例示してみましょう。
毛繕い
猫は、強いストレスを受けるとそれを鎮めるために自分で自分の体中の被毛を舐めて毛繕いをします。しばらく真剣に毛繕いをしながら「フッ」と鼻からため息をついている場合、自分に対して「落ち着け、落ち着け」と言い聞かせているのかもしれません。
爪とぎ
セルフグルーミングと同じように、自分の気持ちを落ち着かせるために爪とぎをすることもあります。この時も、毛繕いと同様に溜息をつくことがあります。
3.鼻に詰まった異物をとりたい時
いわゆるため息とはちょっと意味合いが異なりますが、鼻に異物が詰まった時にも、鼻から強く息を吐きだして、ため息のように見えることがあります。
4.病気の時
前述までの例は、いわゆるため息やため息によく似た行為で、特に心配する必要のない行為でした。これらに共通しているのは、一時的な行為であるということです。しかしため息に見えて、実は病気が原因となって現れている症状だという場合があります。
ではどのようなため息の場合が、病気を疑うべきなのでしょうか。
人間は、通常鼻で呼吸をしますが、口での呼吸も普通に行います。犬も同じように、運動をした後や夏の暑い日などには、口でハァハァと呼吸をする光景が普通に見られます。しかし、猫は基本的には鼻でしか呼吸をしません。もし愛猫が口で息をしている場合は、異常事態であると考えて間違いないでしょう。
そのため、愛猫が口で息をしながらため息のようにハーとかフーといった音をさせている場合は、原因となる病気があると考えてください。最も考えやすい病気が、熱中症、心疾患、肺炎などです。すぐにかかりつけの動物病院に連れて行き、診てもらいましょう。
また、鼻から「フン、フン」と強く息を吐き出している状態が継続している場合も、早めの受診が必要です。猫風邪などが慢性化してしまい、鼻詰まりの状態が継続している事が考えられます。副鼻腔炎を発症している可能性もあります。
まとめ
人間のため息は、鼻からでも口からでも、かなり大きな音で長く息を吐きだすため、かなり目立つ行為になります。しかし、猫のため息は鼻から軽く息を吐き出す場合が多く、あまり目立たないことが多いため、気付いていない飼い主さんもおられると思います。
猫がため息をついていることに気がついたとしても、何かを憂えていたり、飼い主さんに不満をぶつけているというわけではありません。緊張状態からリラックス状態に切り替わった時や、自分で自分を落ち着かせようとしている時です。
愛猫が鼻からため息をついているだけで、気になるほど長く続けているわけでもないという場合は、特に心配する必要はありません。しかし、いつまでも続けていたり、口から息を吐いている場合には、裏に病気が隠れている可能性が高いので、速やかに動物病院に連れて行くようにしましょう。