猫同士の関係性
猫社会における上下関係
1990年代には、犬の群れには厳格な上下関係があり、「アルファ」という絶対的な権力を持つリーダーが存在するとしたリーダー論が支持されていました。しかし今では、犬の群れには家族のような関係性があり、絶対的なリーダーの存在や主従関係もなければ、ニワトリ社会に見られるような絶対的な社会順位性も存在しないと考えられています。
しかし猫は、基本的には群れで生活をせず、自分の縄張りをも守りながら単独で生活しています。そのため、縄張りの境界区域などで出会った他の猫との間で優劣を競い、序列を作ります。しかし猫の序列は、ニワトリのような直線的で絶対的な上下関係ではなく、相対的な序列のようなものだと考えられています。
たとえば2匹の猫が出会った場合、『出会った場所と時間によって、その都度順位が決まる』と言われています。そして、単純にその地点に最初に来た方の猫が優位に立つことが多いようです。
劣位の猫がすでに優位な猫のお気に入りの場所や見張り場所に陣取っていた場合、優位な猫はあえてそれを追い払おうとはしない、ということも観察されています。
そもそも猫同士の関係として、明確な敵対関係と親和関係(友好的な関係)があることが知られています。このどちらにも属さないグレーで微妙な関係性の場合、このような相対的な序列関係により毎回真剣な喧嘩をするのではなく、比較的穏便に暮らしているようです。
猫がみせる序列行動
親和関係や敵対関係のようなしっかりとした関係性ができていない猫同士が、お互いの序列を確認するために見せる行動を「序列行動」といいます。
優れたハンターである猫は意外にも平和主義者で、無駄な争いは避けようとする傾向があります。そのため、毎回真剣にケンカをして序列を決めるのではなく、これまでの緩やかな序列関係をベースに、お互いに序列行動をすることでその場を平和的にやり過ごすようです。
例えば優位な猫がいるところに劣位の猫が現れた場合、優位な猫が相手をじっと見つめると劣位な猫は目を逸らす、優位な猫が相手を押しのけると劣位な猫はそこにある物や場所を譲るといった調子です。
他にも、劣位な猫が道を譲り優位な猫が優先的に通るとか、優位な猫が劣位な猫を追いかけ回すなど、序列行動にもいくつかのパターンが見られます。多頭飼育の場合、こういった行動を見かけることで、相対的な上下関係を把握することができるでしょう。
ただし、3匹以上の多頭飼いの場合、特定の1匹だけが常に低い序列に追いやられてしまうケースがあるようです。そのため、そのまま敵対関係に発展して特定の1匹だけが他の猫達から常に攻撃を受けてしまうような関係性になった場合には、生活環境を分割して直接的な接触をさせない等の対策が必要になるでしょう。
猫は飼い主をどう思っているのか
猫
では、猫は飼い主のことをどう思っているのでしょうか。
犬は、飼い主のことを自分とは異なる種の動物だと認識していますが、猫は飼い主のことを『体が大きくて不器用な猫』と認識している、と考えられています。これは、犬は犬と人とではコミュニケーションの方法を変えますが、猫は猫とでも人とでも、同じコミュニケーション方法をとるからという理由で出された見解です。
本当に猫が飼い主のことを「猫」だと思っているのかどうかは分かりません。ただ、別の種だと認識しているにも関わらず、猫同士のように対等に付き合ってくれているのだとしたら、それはそれで凄いことだと思います。
ところで、なぜ人間は不器用だと思われているのでしょうか。それは、「猫にとって当たり前にできることが人間はできないから」です。
例えば、人間は猫の前では狩りをすることはめったにないので、狩りで獲物を捕まえることができないと思われている可能性があります。時々猫が自分の獲物を飼い主さんに持ってきてくれるのは、もしかしたら(こんなこともできないのね…)という憐憫の情なのかもしれません。
家族
また、猫は飼い主のことを「家族のように思っている」と考えられています。具体的には、ある時には母親のように思い、ある時には兄妹のように思っています。
日本の研究者による研究で、飼い主さんと飼い猫のコミュニケーションで、お互いが幸せホルモンと言われている「オキシトシン」の分泌が盛んになり、お互いに多幸感を得ているということが分かりました。これは、人間の母子間で見られる現象と同じです。
飼い主さんが愛猫を我が子のように感じるのと同じように、愛猫も飼い主さんのことを母親のように感じているのです。前肢で飼い主さんの体をフミフミする事がありますが、これは子猫が母猫のお乳を飲んでいる時の行動で、このことからも母親のように思われていることが分かるでしょう。
またゴロンと仰向けになって飼い主さんを遊びに誘い、兄妹達と行うような社会的な遊びをすることから、飼い主さんを兄妹のように思っていることも分かります。
まとめ
単独で縄張りを守りながら暮らしている猫は、自分の縄張りを守るために、他の猫と優劣を決めなければならない必要性があり、そのために上下関係を作ることが分かりました。しかし、もともと平和主義で無駄な争いを避けたい猫達は、あまり厳密で絶対的な序列を作っているわけではなさそうです。
その結果、猫が飼い主さん家族に対して順位をつけることもなく、飼い主さんやそのご家族を母猫や兄妹のように思っているようです。
いつまでも仲の良い家族として、お互いのことを思いやりながら一緒に暮らしていきたいですね。