猫の性格
最近の研究では、猫の性格について、5〜6程度のタイプに分類する考え方が増えてきているようです。例えば、「人と一緒に家にいることを好む、狩りを好む、人よりも猫と一緒にいることを好む、神経質、好奇心旺盛」といったような分類です。
また「驚きやすい、外交的、支配的、自律的、友好的」といった分類や、「やんちゃ、ナーバス、親しみやすい、支配的、わがまま、まぬけ」といった分類もあります。
しかしとことん付き合っていくと、1980年代頃の研究で分類され一般的に言われていた「大胆な猫か臆病な猫か」という2分類が根幹にあるようにも感じます。
こうした猫の性格は、どのような要素で決まっていくのでしょうか。いくつかの研究で解明されたり発表されている実験結果などを参考に、考えられている5つのポイントをご紹介します。
1.遺伝的要因
「蛙の子は蛙」とか「鳶が鷹を生む」ということわざがあります。いずれも、子の性質は親から遺伝するというものです。猫の性格も親からの遺伝に影響されることが分かっています。遺伝と猫の性格に関する実験や調査をご紹介します。
1995年の実験で、友好的か非友好的かという性格において、父猫の遺伝が大きく影響していることが分かりました。非友好的な父猫の子に人との触れ合いを経験させても、友好的な性格にはならなかったそうです。
2016年の調査では、左右どちらの場合でも利き手のある猫は「自信があり愛情深く活動的で友好的である」のに対し、利き手のない猫は「愛情が薄く友好性が低く攻撃性が高い」傾向が見られたということです。
2021年の調査では、ロシアンブルーは怖がりで、シャム猫は人との社交性が高いなどのように、品種毎に特定の性格が強く現れることが明らかにされました。
2.母猫や兄弟姉妹猫、他の動物との関係
生後2〜9週齢頃の期間は社会化期と呼ばれており、子猫の性格を決定するためにとても重要な期間であると言われています。この期間の生活環境や体験が、子猫の学習能力や性格の形成にとても大きな影響を持つことが分かっています。
子猫は母猫の行動を真似てより多くの行動を学習していきます。母猫の行動を真似る時期は、生後5週齢頃から始まり8週齢頃にピークを迎えます。また生後2週齢で母猫から隔離された子猫は、恐怖心が助長され行動や情緒面、身体面でさまざまな異常が認められたという報告もあります。
生後3〜6週齢の間に兄弟姉妹達と一緒に暮らすことで、自分が猫であるという自己認識が生まれ、一緒に遊ぶことで噛んだり叩いたりする時の力加減も学習します。この期間に鳥や犬など他の動物種とも触れ合うと、猫としての自覚を持ちながら他の動物とも仲良くなれるようになる、とも言われています。
3.人との接触
社会化期において、母猫や兄弟姉妹、また他の動物との触れ合いが性格の形成に大きく影響するという説明をしました。それは、人間との触れ合いでも同じです。
さまざまな実験により、社会化期の子猫にトータル4人以上の人間と1日1時間程度の触れ合いを持たせることで、誰に対しても分け隔てなく友好的な性格になりやすいことが分かっています。
ただし、中にはどうしても心を開かない頑固な猫も15%程度はいるとのことです。前述の父猫の性格が関係しているのかもしれません。
4.体験
「三つ子の魂百まで」のように、社会化期で形成された性格がずっと続くように感じるかもしれません。しかし、それはあくまでもベースであり、その後の経験が猫の性格に変化を与えることもあります。
例えば、飼い主さんのいない外で暮らしていた猫が保護されてご家庭に迎えられ、ご家族の愛情を受けながら室内で安全に暮らせるようになると、それまでピリピリしていた警戒心が解け、驚くほど穏やかな性格に変わったりすることがあります。
逆に、それまでちょっとしたことには動じない性格だった猫が、震災を体験して非常に臆病になってしまうこともあります。飼い主さんのライフスタイルが変わり、常に一緒にいられるようになったら今まで以上に甘えん坊になるなど、生活環境の変化や体験が、成猫の性格に影響を与えることも多いのです。
5.去勢・避妊手術
最後のポイントが、去勢・避妊手術です。本来これらの手術の目的は、望まない妊娠と生殖器関連の病気予防です。しかしこの手術を行うことで、ホルモンバランスが変わり性衝動が抑えられるため、発情に関連する行動や性格にも変化が見られます。
特にオスの変化が顕著で、性格が穏やかになり、尿スプレーによるマーキング行為の抑制にも繋がります。
まとめ
よく猫の性格の話になると、「茶トラの猫は〜」のように毛色や柄との関連性についての話が多く聞かれます。毛色や柄に関する遺伝子が性格にも関与している可能性がないとはいい切れませんが、まだ科学的な確証は得られていないようです。
しかし、白猫は自然界の中では目立ちやすいために警戒心が強くなる等、毛色と関連した体験から性格が似たような傾向になる可能性はあるかもしれません。
いずれにしろ、人懐こい猫を育てたいと考えておられる方は、社会化期を理想的な環境で過ごせるように整えることを考えてみてください。
もちろん成猫になってから迎えた猫も、その後の環境や体験が性格に影響を与えますので、時間はかかりますが根気よく愛猫との良い関係を築いていけるように努力してみてください。