野良猫と飼い猫の寿命の違い
一般社団法人ペットフード協会が2021年に発表した調査結果によると、猫の平均寿命は15.66歳、その内家の外に出ない猫の平均寿命は16.22歳と長く、家の外に出る猫の平均寿命は13.75歳と開きがあることが分かりました。
野良猫の平均寿命に関する正式な調査結果はあまりありませんが、一般的に3〜5歳程度と言われており、特に成猫となる1歳を迎える前に亡くなってしまう子猫が多いと言われています。
このような調査から、飼い猫であっても自由に外に出られる猫は、完全室内飼いの猫よりも短命になる傾向があることが分かります。ましてや飼い主さんのいない野良猫ともなると、飼い猫の1/3程度しか生きられないのが現実のようです。
では、野良猫の寿命を短くしている要因とはいったい何なのでしょうか。
野良猫の寿命が短くなる要因
1.過酷な環境
野良猫の寿命を縮める大きな要因の一つが、過酷な住環境です。外で暮らす野良猫は、夏の暑さや冬の寒さ、強風や豪雨、豪雪なども自力で乗り越えなければなりません。
特に夏から秋の間に生まれた子猫は、まだ十分な体力もない状態で寒い冬を越さなければならず、成猫になることなく亡くなってしまうケースも多いのです。
2.餌の確保が不安定
食料確保の不安定さも大きな要因です。飼い主さんから年齢に見合った良質のフードを安定的にもらえる飼い猫とは異なり、野良猫は自力で獲物を捕まえるしかありません。
都市部で暮らしている場合は人からもらう、拾い食いをするといったこともあるでしょうが、良質のフードを安定的に摂取することは難しいでしょう。
3.事故のリスクが高い
外で暮らしていると事故のリスクが高まります。特に交通事故や、寒さをしのぐために入り込んだ車のエンジンルーム内での悲惨な事故です。
4.感染のリスクが高い
予防医療を受けられない野良猫は、ウイルスや細菌、寄生虫への感染リスクが非常に高いです。感染したりケガをした場合も、適切な治療を受けられません。栄養状態が悪く住環境も過酷なため免疫力も低く、病気やケガを克服することは難しい場合が多いでしょう。
5.虐待
野良猫は、虐待を受けることも多いです。糞尿や鳴き声を迷惑だと感じる方や、酔っ払って力加減がわからなくなっている方もおられるでしょう。いろいろな人間と出会う機会が多い分、残念ながら虐待に遭うリスクも高いのです。
6.ストレス要因が多い
これまで挙げてきたような厳しい状況の中で生きている野良猫は、飼い猫よりも遥かに高いストレスに晒されていると言えます。
少しでも居心地の良い場所見つけて縄張りを守り、他の猫や人間といった敵から身を守り、空腹を満たすための餌を探して狩りをしなければなりません。心休まる時間は殆どないといえるのではないでしょうか。
野良猫のいる社会といない社会
猫がネズミを狩る能力を見込まれて人と一緒に暮らすようになった歴史を考えると、野良猫や自由に外に出て暮らす猫がいることも、不思議ではありません。しかし、一見自由気ままに見える野良猫も、少なくとも日本では寿命が短く成猫になれる率も非常に低いというのが現実のようです。
野良猫がいる環境は、猫にとってもその地域に住む人々にとっても、あまり良くない環境だと言えるようです。日本以外にも、地中海沿岸のイタリアやクロアチア、ギリシア、エジプトやアジアの多くの国々で、野良猫は暮らしています。
しかしイギリスやドイツでは、「飼い主さんのいない不幸な猫をなくす」という目標を掲げて約半世紀をかけ、野良猫のほぼいない社会を確立したと言われています。野良猫を捕獲(TRAP)し、不妊手術(NEUTER)し、元の場所に戻す(RETURN)というTNRの成果です。
日本やイタリアの都市部でも、このTNRにより野良猫を減少させている地域が増えてきていると言われています。日本でも、飼い主のいない不幸な猫を減らし、かつ地域に住む人々と猫の関係性改善のために、今まで以上に野良猫を減らし増やさないための継続的な努力が必要なのではないでしょうか。
まとめ
同じ飼い猫と言っても、完全室内飼いの猫と自由に外に出られる猫では、平均寿命に差があることが分かりました。ましてや野良猫の場合は、飼い猫の1/3程度しか生きられないと言われています。
一見自由気ままに暮らしているように見えても野良猫の生活は厳しく、1歳を迎えられない子猫が多いのが現実のようです。野良猫が増えるということは、不幸な猫が増えるということだと言えそうです。
猫を愛する人が、皆TNRに参加をすることはできません。しかし、自分たちのできる範囲で野良猫を減らす努力や、愛猫を野良猫にしてしまうリスクを取り除く努力はできるはずです。これを機会に、自分には何ができるのかを考えてみるのも良いのではないでしょうか。