猫に性差ってあるの?
人間の場合、もちろん個体差はありますが、体型や体格、性質などに男女の違いがあるといわれています。
違いの中には、遺伝的、解剖学的なものもあれば、社会的、文化的なものを背景に生まれたものもあります。
では、猫はどうでしょうか。
遺伝的、解剖学的な違いの他に、社会的、文化的な違いもあるのでしょうか。
現在、猫の性差として分かっていること、知られていることについて、外見、発情、性格・行動、病気の4つのポイントごとに整理していきましょう。
1.外見
毛色
猫の毛色や柄は、遺伝によって決まります。
遺伝に関する細かな要素を決定する遺伝子は、染色体の中に配列されています。
染色体には、常染色体と性染色体があり、性染色体によって性別が決まります。
複数ある染色体はいずれも、父親と母親から受け継いだ1本ずつの染色体をペアとして構成され、猫は常染色体18組と性染色体1組の合計38本の染色体で構成されています。
メスの性染色体はX染色体2本、オスはX染色体とY染色体1本ずつで構成されています。
猫の毛色や柄を決める遺伝子は複数あり、そのうちの1つがX染色体上にある「茶または黒い毛を作る」遺伝子です。この遺伝子は、茶色か黒色かのどちらかしか作れません。
そのため、「茶色と黒の両方の色を持つ三毛猫やサビ猫は、X染色体を2本持っているメス」だということになります。
性染色体異常という病気の場合を除き、黒と茶の両方を持つオスはいないのです。
体格
避妊去勢手術を受ける時期にもよりますが、同じ母親から生まれた猫の場合でも、一般的にオスの方がメスよりも大きくなりやすいです。
オスは骨格や筋肉がしっかりしたガッチリとした体格で、メスはオスよりも一回りほど小さく全体的にほっそりとした体格で、体重も軽いことが多いです。
顔つき
オスの方が、全体的に顔が大きくなる傾向があります。
縄張りやメスを争って喧嘩をするため、噛まれても大丈夫なように頬の皮膚が厚くなり、顔が横に大きくなるのだといわれています。
しかし、そのために最初から頬の皮膚が厚いのか、よく怪我をするために厚くなったのかは、定かではありません。
2.発情
メスの発情
メスには年に数回の発情期があります。
発情期のメス猫は、普段とは全く異なる大きな声で鳴き、背中を地面にこすりつける独特な動きでオスを惹きつけます。
1回の発情は1〜2週間で、交尾をすると排卵します。
発情期間中に交尾をしないと、1〜2週間後など間髪あけずに次の発情が来ることがあります。
オスの発情
オスには、いわゆる発情期はありません。
近くに発情しているメス猫がいると、それにつられて発情します。
発情しているメス猫の声やニオイなどに誘発されて、大きな声で鳴いたり、異性を探しに家出したり、ニオイの強いオシッコでマーキング(スプレー)をしたりといった行動をします。
3.性格・行動
縄張りへのこだわり
縄張りへのこだわりは、オスの方が強いといわれています。
庭先などに現れる野良猫を警戒して室内でしきりにマーキングを行い飼い主さんを困らせるのも、オスが多いです。
また、自由に外出している猫たちの行動範囲を観察すると、メスよりもオスの方が広かったという報告もあります。
子育て
猫は単独生活をする動物ですが、野良猫ではメス猫たちが協力して子育てをすることが知られています。
母娘だけではなく、血縁関係のないメス猫とも協力をしながら、グループでお互いの子を育て合うのです。
それに対して、ごく一部の例外はありますが、オスは子育てには関与しないことがほとんどだといわれています。
交尾が済んだらおしまいですので、オスには元々「家族」という認識がないのでしょう。
独立心
メスの方が独立心が強いと考えられています。
それは、やがて子猫を産めば育てなければならないからです。
ツンデレな性格はメス猫に多いと言われている理由には、この辺が関係しているのかもしれません。
それに対して、オスはいつまでも甘えん坊な子が多いといわれています。
いつまでも子猫の立場でいられる飼い猫の場合、飼い主さんへの依存心が強くなりすぎて分離不安症を発症することがあります。
この病気も、避妊済みのメスよりも去勢済みのオスの方が多かったという報告があるようです。
4.病気
オスに固有の病気
性別に関わらず猫に多い病気が、泌尿器系疾患です。
中でも特に膀胱や尿道に結石ができる「尿石症」には注意が必要です。オスは尿道が長いため、悪化しやすいからです。
他にも、前立腺肥大や精巣腫瘍などはオスに固有の病気です。
ただし、これらは去勢手術をすることで予防できます。
繁殖を考えていない場合は、去勢手術を検討しましょう。
メスに固有の病気
メスに多いのが、「子宮蓄膿症」や「乳がん」です。どちらも命に関わる病気です。
猫の乳腺腫瘍はその殆どが悪性です。いずれの病気も避妊手術での予防効果が期待できます。
特に、最初の発情を迎える前に手術を行うことで、乳がんをかなりの確率で予防できます。
繁殖を望んでいない場合は、早期の避妊手術を検討しましょう。
まとめ
猫にも個体差や品種差がありますが、外見や発情に関しては、遺伝的なものも含めてかなり性差が存在しているといえるでしょう。
特に、三毛やサビのオス猫がほとんどいないという事実は、大きな性差といえるでしょう。
人間の場合と同様に、猫の場合も性ホルモンの影響が大きいだろうと言われています。
しかし、避妊・去勢手術後でも性格や行動の違いがみられるケースがあると言われており、科学的に解明されていない点も多いようです。