猫に生肉を与えても大丈夫か?
巷には、健康面にプラスの効果を期待できるため「猫にとって生肉は、注意は必要だが積極的に取り入れたい食材である」といった意見があるようです。
とはいえ、「本当に愛猫に生肉を与えても大丈夫なのか」と心配な飼い主さんも多いのではないでしょうか。
たとえば、飼い猫が外に出てしまい、不幸にも迷子になってノネコとなってしまったとしても、自ら獲物を捕まえて小動物や昆虫の生肉を食べて生きていくことになりますよね。
つまり、「猫に生肉を与えても大丈夫か」という問いに対する答えは、「大丈夫」ということになります。
しかし、「生肉を与えても大丈夫」と「飼い猫に積極的に生肉を与えるべき」とは、全く意味が異なります。
今回はいろいろと話題になっている「猫に生肉を与えるメリットとデメリット」について、再考してみたいと思います。
猫に生肉を与えるメリット
1.生肉は加熱した肉よりも消化が良い
猫に生肉を与えることのメリットとしてよく目にするのが、「生肉は加熱した肉よりも消化が良い」説です。
しかし、なぜ生肉の方が加熱した肉よりも消化が良いのかという理由については、細かく触れていないことが多いようです。
かつては私達人間の祖先も、狩りで仕留めた獲物を生で食べていたことでしょう。
しかし、人間は火を発見し、それを利用して調理をする技術を身につけました。
それは、肉は生で食べるよりも加熱調理した方が安全に食べられるからです。
調理する術のない野生の猫たちは、今でも生肉を食べています。
しかし、それが猫にとって加熱した肉よりも生肉の方が消化がしやすく体への負担が少ないという証拠にはなりません。
また科学的な証明も、まだされてはいないようです。
2.生肉の方がキャットフードよりも豊富な栄養素を摂取できる
もう1つよく目にするメリットが、生肉には豊富なアミノ酸やビタミン類、酵素などが含まれている点です。
これらは加熱により損なわれてしまうため、生のまま食べた方がキャットフードでは得られない豊富な栄養素をまかなえる、という説です。
しかし、「総合栄養食」を主食にしていれば、猫に必要な栄養素はバランスよく全て含まれているため、不足することはありません。
また「酵素」に関しても、食物として摂取した酵素が体内で元々の酵素としての効能を発揮する保証はありません。
なぜならば、食物として口に入った酵素は通常のタンパク質と同様に分解され、消化されてしまうからです。
そもそも、野生の肉食獣が肉食だけでバランスよく栄養を摂取できているのは、獲物をまるごと1頭食べているからです。
その中には、血液や内臓も含まれているのです。切り身の肉だけを食べて、必要な栄養がすべてまかなえるわけではありません。
猫に生肉を与えるデメリット
3.寄生虫や食中毒のリスク
猫に生肉は良い食材だという意見の方たちも、デメリットとして「食べさせた後に下痢や嘔吐が見られた場合はすぐに動物病院へ」と言っています。
人間も同じですが、生肉を食べるのであれば、必ず寄生虫や細菌性胃腸炎のリスクがつきまとうからです。
かつて人間の祖先が生肉を調理して食べるようになったのも、これが大きな理由ではないでしょうか。
味ではなく安全を優先するのであれば、やはり生肉ではなく、加熱調理した肉の方が安心できるでしょう。
4.鮮度の高い生食用の肉を入手するのが難しい
前述の細菌性胃腸炎のリスクは、肉の鮮度に関わってきます。
猫は、捕まえた獲物をその場ですぐに食べますので、鮮度は申し分がありません。
しかし、私達が入手できる流通経路にのった食肉は、そこまで新鮮ではありません。
実際、流通している食肉の殆どは、加熱調理をすることが前提となっています。
人間ですら加熱しなければ食べられない肉を愛猫に生で食べさせることは、あまりおすすめできません。
特に、生産過程で管理されていない鹿肉や猪肉などのジビエであれば、生食のリスクは相当高いと考えた方が良いでしょう。
まとめ
愛猫の食欲がなくなってしまい、何も受け付けてくれないという状況下の打開策として、普段のフードに肉をトッピングするという考え方に関しては否定しません。
うまくいけば効果を期待できると思います。しかし、それが生肉である必要性はないと考えます。
生肉を食べさせる方が、猫本来の力を取り戻し、健康面にプラスであるという考え方もあるのかもしれませんが、生肉を与えるデメリットもよく考慮するべきです。
愛猫に肉を与える時には、生肉ではなく細かく刻んで加熱したものを与える等の手段を選ぶ方が、愛猫の健康のためには良い選択なのではないかと考えます。