猫の急死を招く『心筋症』とは?主な症状や早期発見のポイント3つ

猫の急死を招く『心筋症』とは?主な症状や早期発見のポイント3つ

健康に過ごしていた愛猫がある日突然体調を崩し、慌てて動物病院に連れて行ったが手遅れで命を落としてしまった…。そのような経験をされた飼い主さんは、きっと一生悔やんでも悔やみきれないことでしょう。そうなる可能性の高い病気が「心筋症」です。心筋症とはどういう病気で、早期発見のために飼い主さんにできる事は何かについて説明します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の突然死

猫のお墓

猫の平均寿命は15歳程度です。しかし、平均寿命に関係なくある日突然命を落としてしまう猫もいます。

室内飼いが当たり前になり、交通事故のリスクが激減した現代の猫にとって、突然死のリスクが高い死因は『心筋症』です。

心筋症の症状は気付きづらく、一般的な診察だけでは見落とされがちです。しかも、病気のために心臓の中でできた血栓が、いつ体内の血管を詰まらせてしまうか分かりません。こういったことが、突然死のリスクを高めている要因です。

そして、心筋症は完治できません。発症したら、生涯投薬により症状の緩和や進行の抑制が必要となるのが一般的です。そのため、飼い主さんがいかに早い段階で心筋症に気付き、治療を開始できるかが、愛猫の突然死を防ぐポイントになります。

心筋症とはどんな病気か

猫の循環器系

概要

心筋症とは心臓の筋肉に異常が起きる病気です。

心臓は全身に血液を送り出すための動力として欠かせない、ポンプの役割を担っています。肺で新しい酸素を沢山取り込んだ新鮮な血液を、心臓が全身に送り出すことで、細胞が生きていけるのです。

猫の心筋症には、大きく3つのタイプがあります。

心筋の内側の組織が固くなりうまく動けなくなる「拘束型心筋症」、心筋が薄く伸びて収縮力が弱まり血液を送り出せなくなる「拡張型心筋症」、そして、心筋が分厚くなり心臓の中にある血液を溜めておく空間が狭くなって送り出せる血液量が減ってしまう「肥大型心筋症」です。

ここからは、猫に最も多いタイプの肥大型心筋症を中心に、説明していきます。

原因

アメリカンショートヘアー

心筋症は、年齢に関係なく子猫から老猫まで、幅広く発症します。そして、心筋症の発症原因はまだ解明されていません。

自己免疫疾患やウイルス感染症なども疑われていますが、好発品種が見られることから、遺伝的な要因が関与していると考えられています。

好発品種は、アメリカンショートヘアー、メインクーン、ブリティッシュショートヘアー、ペルシャ、スフィンクス、ラグドール、ノルウェージャンフォレストキャット、ヒマラヤンなどです。

ちなみに、拡張型心筋症の好発品種はアビシニアン、シャムなどです。

しかし、拡張型心筋症は市販のキャットフードにタウリンが添加されるようになって以降、発症数が激減しました。

拘束型心筋症に至っては、発症数そのものもあまり多くなく、好発品種についても不明な状態です。

症状

具合の悪い猫

心筋症に罹患している猫の約77%が「無症状」だと言われています。

ただし症状が出てきた場合は、すでに緊急処置が必要な状態であることが多いです。

それでも、比較的初期の頃から見られやすい症状として、下記が挙げられます。

  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 運動不耐

「運動不耐」とは、すぐに疲れるため動かずににじっとしていることが増える状態をいいます。

また、心筋症がある程度進行している際に見られやすい症状には、下記が挙げられます。

  • 口呼吸
  • 繰り返す失神
  • 後ろ足を引きずって歩く(後肢麻痺)
  • 後ろ足が冷たい
  • 肉球の色が白っぽい
  • 歯肉や舌の色が青白い(チアノーゼ)

早期発見のためにできること

抱かれる猫

1.健常時の基礎数値を知っておく

心筋症になると、心拍数や呼吸数が早くなります。しかし猫は神経質で臆病なため、動物病院では興奮して、病気に関係なく心拍数や呼吸数が急上昇する傾向にあります。

そのため、普段から自宅で愛猫がリラックスしている状態の心拍数や呼吸数を定期的に計測することをおすすめします。

安静時の正常な心拍数は130〜160拍/1分です。運動や興奮により240拍程度まで上がります。安静時に200拍以上の状態が続く場合は心臓の異常が疑われます。

心拍数は、猫の背後から両脇の下に両手を入れて抱っこすることで、拍動が手に伝わってきます。20秒間の拍動数を数えて3倍にすれば、1分間の数値になります。

呼吸数は、猫に触れずに胸やお腹が呼吸により上下する回数を数えます。20〜30回/1分が正常値で、安静時に40回以上だと心臓の異常が疑われます。

2.日々の観察

飼い主と猫

先にご紹介した症状を参考に、日々の暮らしの中で愛猫をよく観察し、少しでも違和感を感じたらかかりつけの動物病院で診てもらいましょう。

食事量や飲水量、排泄量や回数、歩き方などを普段から幅広く観察しておくと、心筋症に限らずさまざまな病気やストレスに早い段階で気付きやすくなるでしょう。ノートに記録しておくと、後で役に立ちます。

3.定期的な健康診断

心筋症の症状は、心臓病以外の病気で現れる症状と同じため、さまざまな検査を行った上で総合的に診断する必要があります。

そのため、一般的な聴診、触診だけではなく、レントゲン検査、超音波エコー検査、血圧、心電図、血液検査などを行う必要があります。そこで、最低でも年に1回は総合的な健康診断を受けることをおすすめします。

何の症状が現れていない場合でも、これらの検査で心筋症が見つかることも少なくありません。

まとめ

エコー審査を受ける猫

猫の突然死を引き起こす可能性が高い「心筋症」について説明してきました。

なかなか気付きづらい病気ですが、日頃から愛猫と接する中で様子をよく観察し、体調の微妙な変化にもいち早く気付けるようになることで、1日でも長く、愛猫と一緒に楽しく幸せに暮らすことができるでしょう。

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