ヒトとは異なる猫の目の不思議
ヒトの瞳(瞳孔)は大きさが変わっても形は丸いままです。ところが、猫の瞳は大きい時は丸く、小さい時は縦長の細い線のようになります。
猫は顔の割にとても目が大きくて印象的ですが、猫の眼球とヒトの眼球は同じくらいの大きさです。顔の大きさが全く異なるため、猫の眼はとても大きく感じるのです。
同じ哺乳類ですがヒトとは随分と異なる不思議な猫の眼を中心に、今回は瞳にまつわる豆知識をご紹介します。
猫の眼と犬の眼の違い
犬もヒトにとって身近な動物です。そして薄暗がりの中で小動物の狩りを行う、猫ととてもよく似た動物です。
ところが、犬の瞳はヒトと同じように丸い形をしています。また、獲物までの距離を正確に把握できる立体視野が猫は約120度、犬は約90度とかなり異なります。
同じ暗がりで狩りを行う猫と犬ですが、その狩りの方法の違いが眼の構造にも影響を与えているようです。
猫は、草むらに隠れて獲物を待ち伏せします。そのため、縦方向にピントを合わせられる縦長の瞳孔と、獲物までの距離を把握できる広い視野が必要になったのでしょう。
一方、犬の狩は追跡型です。草むらの縦長の隙間から獲物を狙う必要がなく、シビアに獲物との距離を把握する必要もないため、縦長の瞳孔や広い立体視野も必要なかったのでしょう。
瞳にまつわる豆知識
1.哺乳類の色覚の進化
猫は、赤や緑をしっかりと認識することができません。ヒトは3色型、猫は2色型の色覚を持っています。
魚類、両生類、爬虫類の色覚は、基本的に4色型です。哺乳類も、誕生した当時は4色型でした。
ところが恐竜の全盛時代、恐竜が寝静まった夜間にしか行動できなくなった哺乳類は、暗い場所に適した2色型に進化しました。
恐竜絶滅後、再び昼の生活を取り戻した哺乳類は、そのまま2色型を持ち続けました。しかし森で果実を食べて生活する霊長類だけは、3色型に進化しました。
果実の熟成度を判断し果実と葉を区別するために、赤や緑を識別する必要が生じたからだと考えられています。
2.暗闇でもよく見える光の活用
猫が顔の大きさの割に大きな眼球を持っている理由は、暗いところでも多くの光を取り込めるようするためです。そしてもう1つの特徴が、網膜の奥にある「タペタム」です。
光は角膜、瞳孔、水晶体を通って網膜に達します。網膜で捉えきれなかった光はそのまま通過しますが、網膜の奥にあるタペタムという反射板のような役割の層が通過した光を反射して網膜に戻してくれるので、その光を再利用できるのです。
タペタムのおかげで、眩しすぎるとよく見えないという弊害もあります。そこで細長い瞳孔を瞬時に調整し、眼に入る光の量を調節するのです。猫の瞳孔は、最小時は1mm以下、最大時は14mm程になります。
3.瞳孔の形あれこれ
瞳孔にはさまざまな形があります。瞳孔の形別に、代表的な動物をご紹介します。
- 【丸い瞳孔】
- カメ、鳥、ヒトを含む多くの哺乳類(大型猫科動物も含む)
- 【横長の瞳孔】
- ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、カバ、カンガルー、クジラ
- 【縦長の瞳孔】
- ネコ、キツネ、ワニ、夜行性のヘビ(比較的小型の夜行性肉食動物に多い)
- 【三日月形の瞳孔】
- エイ、イルカ
- 【大きさが変わらない瞳孔】
- ヤツメウナギ、硬骨魚の多く
4.猫の動体視力
猫の視力はヒトの近視に近く全体的にぼやけて見えます。しかし、動くものを見るための動体視力は優れています。素早い動きなら、30m離れた場所で1秒間に4mm移動する程度の小さな動きでもはっきりと認識できます。
5.感情で変わる瞳孔の大きさ
瞳孔の大きさを変えているのは、リラックス時に働く副交感神経が支配する瞳孔括約筋と、緊張時に働く交感神経が支配する瞳孔散大筋です。
そのため光量の調節とは無関係に、感情によっても瞳孔の大きさが変わります。
瞳孔が大きい時は恐怖や緊張、何かに興味を持っている時、小さい時はリラックスしていると知っていれば、愛猫の気持ちを汲むこともできますね。
まとめ
猫の瞳孔が変わる仕組みを中心に、さまざまな動物の瞳にまつわる豆知識をご紹介しました。
眼というとても小さな器官でも、その動物の習性に合わせて最適な形態に進化してきていることがご理解いただけたと思います。
愛猫との生活をより楽しく快適にするためにも、猫の習性をよく知り、それを活かして生活環境などの工夫を施してあげてください。