1.ニオイ
猫の嗅覚はとても優れています。そのため猫は、ニオイによっても飼い主のことを見分けているのではないかと考えられます。
飼い主が猫カフェや友人などの家で、他の猫に触れてから帰宅すると愛猫が威嚇したり警戒したり…という話はよく聞きますよね。飼い主から発せられる知らない猫のニオイを感じているのでしょう。
また美容院や病院などから帰宅した時に愛猫から威嚇されたという話もSNSなどで話題になったようです。こちらもいつもの飼い主のニオイと違うことから「誰だよ!?」と思われてしまったのかもしれませんね。
猫を多頭飼いしていて、誰か1匹が入院したりホテルに預けられて帰ってきた時にも「誰!?」と他の猫が警戒することがあるそうです。1匹だけ違う場所に行っていて違うニオイをつけて帰ってきた時には、まずはキャリー越しで対面させて誰だか分かって落ち着いてから再び一緒にすると良いそうです。
2.声
猫は嗅覚以外に聴覚も発達しているため、飼い主の声もきちんと聞き分けていると考えられます。
飼い主が愛猫の名前を呼ぶとすぐに反応しますが、呼んだのが飼い主以外の人間だと反応しないことも多いようです。
飼い主の友人の方がいくら猫の名前を呼んでも無反応だった…というエピソードもありました。
こういったエピソードも多く耳にすることから、猫はニオイ以外に飼い主を見分けるための判断材料として「声」も利用しているのではないかと考えられます。
マスクをしていても声は変わりませんので、猫が見た目で飼い主さんを怪しんでいるようでしたら声をかけてあげると良いと思います。
3.顔、動き
では、猫は見た目によっても飼い主を認識しているのでしょうか?猫の視力は人間より悪いと言われていますが、どうなのでしょうか?
答えとなる科学的なデータはとても少ないようですが、一般的に猫が何かを判断するのに視覚も重要な役割を果たしていると考えられています。猫の視力が悪いと言われるのは、人間ほどに物の輪郭をはっきりと見たりすることができなく、猫が見ている世界の色が人間より少ないからでしょう。
その代わり猫は、少ない光しかない場所でも物を見る能力と動くものを目でとらえる能力などは人間よりも優れています。猫に見えている飼い主の体や顔の輪郭はそんなにはっきりしていないかもしれませんが、多分猫が飼い主を識別するには十分なのでしょう。飼い主の見た目のうち、なにを判断材料としているのかについては、顔や体の動きなど、様々なものが考えられると思います。
飼い主がマスクなどをつけると、誰だか分からなくなって威嚇したり、誰だか分かっていても異様な姿に警戒したりする猫もいると思います。
顔で飼い主を見分けていなければ、普段は素顔の飼い主がマスクをつけただけで威嚇はしないと思います。
物陰に隠れてしまうほど警戒する猫から、その場でかたまってしまう猫まで色々でしょうが、こちらの顔をじっと見てきたり、警戒心が少し緩めばニオイを嗅ぎに近づいてきたりするでしょう。マスクで隠れていない部分の飼い主の顔や飼い主の動き、ニオイ、飼い主さんの声によって「あ、飼い主だ!」と気付いてくれるでしょう。
マスクをしていると、感情を表す大事なパーツである口元が見えずに人間同士でも相手の感情を読み取るのに苦労しますよね。猫も同じかもしれません。マスクをしていて猫に警戒されている時は、状況が許せばマスクを外してにっこりとして見せ、穏やかな口調でゆっくりと話しかけてあげましょう。
まとめ
猫を飼っている人は経験的に感じていると思いますが、猫は声やニオイ、視覚的な情報など色々な部分から飼い主と知らない人間を見分けているのだと考えられますね。
顔をどの程度他の人と区別しているのかどうかは分かりませんが、私たち人間の中にも、人の顔を覚えるのが得意な人とそうでない人がいますので、飼い主を体のフォルムや動き方で覚えたり主にニオイや声によって判断しているなど、もしかしたら猫の中にも何をもって飼い主を認識しているのか、色々な猫がいるのかもしれないと思います。
しかし、愛猫が飼い主とそれ以外の人をしっかりと見分けているということに違いはありませんので、マスクをつけた時に威嚇されたとしてもショックを受けずに「いつもと違うからだ」と流してあげてくださいね。そして猫が「飼い主だ」と気付けるようにやさしく声をかけてあげたりニオイを嗅がせてあげたりしましょう。飼い主だと分かっていてもマスク姿を怖がる場合には、マスクに慣れてもらうために、使っていないマスクを置いておいて猫が「マスクは怖くないもの」だと確認できるようにしてあげると良いかもしれません。
《参考記事》
犬についてのこちらの記事もぜひお読みください。
「犬はマスクを着けた人を気にするだろうか?研究者による考察」
https://wanchan.jp/column/detail/23809
人間の表情を読み取れるのか、顔だけで飼い主を区別することができるのかなどの認知科学に関する分野の研究は、猫は犬よりも科学的なデータが少ないのですが、「猫は人間の表情を読むことができる」ことを調べた以下の論文があります。
Galvan, M., & Vonk, J. (2016). Man's other best friend: domestic cats (F. silvestris catus) and their discrimination of human emotion cues. Animal cognition, 19(1), 193–205.
https://doi.org/10.1007/s10071-015-0927-4