有害食材を口にしてしまった場合の対処法
普段私たちが食べている食材の中には、猫に中毒症状や病気を引き起こす有害なものがあります。その数はかなり多く、もしかすると飼い主さんが思っているよりも多いかもしれません。
愛猫が中毒症状を起こした場合、ご家庭でできる対処はありません。誤食に気づいたらすぐに動物病院で、愛猫の状況に応じた催吐処置(吐かせる)、胃洗浄、便と一緒に排出させる、点滴(体内の毒物濃度を下げる)などの治療を受けさせる必要があります。
飼い主さんの何よりの責務は予防です。そこで今回は、特に代表的な、少量でも猫が食べてしまうと危険な状態になりやすい食材を厳選してご紹介します。
猫にとって少量でも危険な食材
1.ネギ類
【食材例】
タマネギ、長ネギ、ニラ、らっきょう、ニンニク、球根を持つ植物全般
【原因成分等】
有機チオ硫酸化合物が赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こします。熱に強く、加熱済みでも与えるのは危険です。致死量は猫の体重1kgに対して15〜20g程とされていますが、実際に症状が出る量には個体差があるため、「少量なら大丈夫」と思わないことが重要です。
【症状】
呼吸困難、黄疸、血尿、けいれんなど。
2.ソラニンが含まれる野菜
【食材例】
ナス
【原因成分等】
実以外の部分に含まれるソラニンは神経に影響して中毒症状を引き起こします。実の部分のアク(クロロゲン酸)に反応して嘔吐などの消化器症状を起こす猫もいます。
【症状】
嘔吐、血便、呼吸困難など。
3.チョコレート
【食材例】
カカオを含む製品(チョコレート、ココア等)、マテ茶
【原因成分等】
テオブロミンが中毒を引き起こします。文献によって用量は異なりますが、症状が出る摂取量は体重1kgに対して20〜100mg、致死量は80〜200mg程度とされています。
体重4kgの猫が高カカオのブラックチョコを1枚を食べてしまうと致死量になる可能性があります。
【症状】
摂取後1〜2時間:興奮状態、頻脈(尿失禁を伴う場合あり)
摂取後2〜4時間以降:嘔吐、下痢、呼吸の乱れ(発熱を伴う場合あり)
重度の場合は全身性のけいれん発作が生じ、命を落とす場合あり。
4.人の嗜好飲料
【食材例】
コーヒー、紅茶、滋養強壮剤などのカフェインが含まれる飲料、酒類
パンの生地も胃の中でアルコールを発生させるため危険です。
【原因成分等】
コーヒーや紅茶のカフェインが中毒を引き起こします。
紅茶に含まれるシュウ酸は過剰摂取で尿路結石の原因になり得ます。
猫の肝臓はアルコールを分解できず、命が助かっても内臓にダメージが残る場合もあります。
【症状】
カフェイン:痙攣、嘔吐、ふらつき、頻脈など
シュウ酸:過剰摂取で尿路結石
アルコール:嘔吐、下痢、意識障害、心肺停止など
5.魚介類
【食材例】
アワビ、サザエ、アサリ、ハマグリ、イカの内臓、青魚等
【原因成分等】
アワビやサザエに含まれるピロフェオホルバイドαは紫外線で活性化し、光線過敏症を発症させるリスクが上がります。
また、アサリ、ハマグリ、アワビなどの貝類や青魚、イカの内臓はチアミナーゼを含み、ビタミンB1欠乏症の原因になります。なお、チアミナーゼは熱に弱いです。
【症状】
ピロフェオホルバイドα:耳や目の周りなどの毛が薄い部分の皮膚の炎症、壊死
チアミナーゼ:嘔吐、ふらつき、けいれん等
6. 脂質の多い果物
【食材例】
アボカド
【原因成分等】
脂質が多いため、胃腸障害や膵炎のリスクが高まることが考えられます。
【症状】
嘔吐、下痢、食欲不振等
7.スパイス
【食材例】
胡椒、唐辛子、カレー粉、タバスコ、わさび等
【原因成分等】
スパイスの中には中枢神経を麻痺させたり、興奮させたり、幻覚を引き起こしたりする成分が含まれていることがあります。刺激性もあり、体の小さい猫の内臓(胃腸、肝臓など)は強い影響を受けることがあります。
【症状】
下痢、胃腸炎等
まとめ
今回は代表的なものを選んでご紹介しましたが、まだ原因成分や猫への影響が正確には解明されていないものも含めると、猫に有害な食材はたくさんあります。間違えて食べさせたり、知らぬ間に盗み食いさせたりしないように注意しましょう。
そのためには、まず飼い主さんが猫に有害な食材を正しく知り、それらを置きっぱなしにしない、ゴミ箱は蓋付きにする、特に知人との食事の際には猫を別室に移動させるなどの対策が必要です。
大切な家族の健康を守るため、どのような時にも冷静に注意を払えるように、片付けや確認を習慣化するようにしましょう。