猫にとって人間とはどのような存在か
犬の行動を見ていると、犬は私達人間を自分達とは異なる存在だと認識していることが分かります。犬同士とのコミュニケーションと、人間とのコミュニケーションには明らかに異なる点があるからです。
しかし猫達は、人間との時には鳴くことが多いといった違いくらいで、基本的には猫同士も人間とも、コミュニケーションの方法にあまり差が見られません。
その点から、猫は私達人間のことを、自分達よりも図体が大きな猫だと考えているようです。だからこそ、よくツンデレと言われるような、お互いに対等な距離感で付き合えるのかもしれません。
猫が人に強い愛着を抱いているのは犬と同じ
オレゴン大学の「心の安全基地テスト」
猫と人間との関係に関する研究が進んできており、猫と人間の関係性が、犬と人、人の子どもと大人の関係性によく似ていることが分かってきました。
オレゴン大学のクリスティン・ビターレ氏らの「心の安全基地テスト」をご紹介します。
<実験内容>
初めて入る部屋に子猫と飼い主を入れて合計6分間の様子を観察します。
- step1.
- 子猫と飼い主が部屋に入り共に2分間過ごします
- step2.
- 飼い主が部屋を出、2分間猫だけで過ごさせます
- step3.
- 飼い主が部屋に戻り、1箇所に座って残りの2分を一緒に過ごします
この時の子猫の様子を観察し、飼い主さんが猫にとって心の安全基地になっているかいないかといった、愛着の度合いを測る実験で、犬や人の子どもにも行う実験です。
強い愛着で結ばれている子猫は、step2で部屋に残されると不安げにドアを眺めて過ごし、step3で飼い主が戻ってくると飼い主の下に近寄って挨拶をした後、少しずつ飼い主が座っている場所を中心にしながら部屋の中を探索し始めます。
テスト結果
テストの結果、64.3%の子猫が強い愛着で結ばれていて、35.7%がそうではないという結果になりました。これは、犬の実験結果や人の子供の実験結果とほぼ一致しているそうです。
結論
2ヵ月後の追跡調査や、1歳以上の成猫による対照実験の結果でも、同程度の割合で猫が飼い主に愛着を持っていることが判明しました。
このことより、ビターレ氏は、猫と飼い主の絆は犬や人間の子供の関係と同様に強固なものであること、そしてその信頼関係は、猫が成長してからも維持され続けるものだという見解を発表しました。
猫の性質を決定づける要因
実際には、猫の性質が遺伝的要因と環境的要因で作られることは、皆さんご存知の通りです。
品種では、雑種の猫よりもシャムやペルシャが人に懐くと言われており、品種特性もあるようです。また、父親猫が人懐っこいと、子猫も人懐っこくなる傾向があるようです。
そして環境的要因も非常に大きく、生後6〜7週くらいまでの間に親切で優しい人間と接触したかどうかで、その後の猫の人への愛着度は大きく左右されることが多いです。
こういった要因による個体差はありますが、猫と人との間にも、犬や子供と同じように強固な絆を築けるということが、科学的にも証明されました。
まとめ
以前、犬は人に付き猫は家に付くとか、猫は餌をもらうために仕方なく人と暮らしているのだという考え方がありましたが、今や「猫と人の間にもしっかりとした絆が結ばれ、猫は人を心の安全基地だと感じてくれている」ということが分かりました。
決して猫と一緒に暮らしている人の思い込みではなく、科学的に証明されたのです。これからも、猫の習性や行動を理解し、より一層強い絆を築けるようにしたいものですね。