猫の意識障害
猫には意識混濁や意識消失を起こす病気があります。
意識を司っている臓器は脳なので、意識障害が出る場合はすべて脳に関する病気かというと、必ずしもそうではありません。脳以外の臓器の病気や中毒、外傷などさまざまです。
猫が「意識障害」を起こすとどのような症状が出るのか、また原因と考えられる病気にはどのようなものがあるのかについて、まとめました。
意識障害の主な症状
一言で意識障害と言っても、軽いものから命に関わるような重篤なものまでさまざまです。今回は、発作、失神、ショック状態の3つに分類して説明します。
1.発作
発作とは、全身性または部分的なけいれんや意識障害が起きることで、突然発症し、頻度は様々ですが多くの場合、繰り返し起きることが特徴的です。
<全身性の発作>
意識が消失し、全身を強張らせてけいれんします。発作中によだれや失禁が見られることもあります。後ろにのけぞる、横になったまま四肢をバタつかせて床の上を滑っていく、などさまざまです。
<部分発作>
顔面や手足など、体の一部にけいれんを起こします。意識がないか、あっても低下している場合があります。
<共通事項>
いずれの発作も突然起こります。通常は数十秒〜数分でおさまります。しばらくボーッとしたり、逆に異常興奮したりしますが、時間が経つと元の状態に戻りケロッとしています。ただし、後遺症のように様子がおかしい場合もあり、長いと数日間続くこともあります。
<すぐに病院につれていくべき判断ポイント>
初めてのけいれん、発作が5分以上継続する、連続してすぐに次の発作が始まる、1日に2回以上発作が起きるような場合は、脳へのダメージが強く危険なため、すぐ動物病院に連れて行きましょう。
発作が5分以上続く場合は、体温が上がってしまい熱中症のリスクがあるため、アイスノンや氷などで体を冷やしながら病院に向かいましょう。氷が家にない場合は、首から下を濡らすだけでも多少効果はあります。
2.失神
突発的に意識を失って倒れる一過性の意識障害が失神です。脳の血流が急激に減少したり一時的に停止したりすると、脳に必要な酸素や栄養分の供給が止まり、意識が消失し筋肉の緊張が解けて脱力状態になるのです。
<すぐに病院につれていくべき判断ポイント>
失神状態が30秒以上継続した場合は、至急連れて行ってください。すぐに意識を取り戻したものの、ボーッとしたままだと感じた場合や初めての失神の時も、原因特定が重要ですから動物病院で診てもらいましょう。
3.ショック状態
意識が低下し、立ち上がって体を動かせなくなるのがショック状態です。ぐったりと横たわり意識がありません。重度の感染症や主要臓器の病気など、あらゆる原因によって血液の循環障害が起き、全身の細胞に酸素や栄養分が行き渡らずに起きます。
<すぐに病院につれていくべき判断ポイント>
ふらつきやぐったりしているような時は、すぐに動物病院に連れて行ってください。特に、体温低下、歯ぐきが青白い、苦しそうな呼吸、失禁などを伴っている場合は大至急連れて行きましょう。
意識障害の原因となりうる病気
発作
発作を起こす猫に多い病気には、下記のようなものがあります。
特発性てんかん(原因不明のてんかん)、脳腫瘍、脳炎、水頭症、外傷による脳障害、脳出血、猫伝染性腹膜炎(FIP)、腎臓病、肝臓病、電解質など血液の異常など。
失神
失神を起こす猫に多い病気には、下記のようなものがあります。
心筋症、不整脈、先天性心疾患、貧血、心タンポナーデ、極度の緊張や恐怖など。
ショック状態
ショック状態を起こす猫に多い病気には、下記のようなものがあります。
- 感染症:敗血症、猫伝染性腹膜炎(FIP)、パルボウイルス感染症など
- 泌尿器系:尿路閉塞、尿毒症など
- 心臓・循環器系:心筋症、不整脈、血管障害、心タンポナーデ
- 脳:水頭症、髄膜炎、てんかん重責など
- 代謝系:肝性脳症、糖尿病、低血糖症など
- 呼吸器系:呼吸不全
- 中毒:鉛、不凍液(エチレングリコール)など
- その他:脱水、出血、腫瘍、熱中症、脳の外傷、内臓破裂など
まとめ
猫は高い所にいることが多いため、そういう時に全身性の発作などを起こすことで落下事故を伴うこともあります。
逆に、高いところから落下したことによる脳へのダメージが原因で発作を起こすようになる場合もあります。
飼い主さんがご在宅の時には、なるべく見えない場所にいても愛猫の様子を気にかけましょう。
また難しいですが、可能ならば発作の様子をスマホで撮影し、獣医師に見せてください。言葉だけの説明よりも、さらに正確な診断の役に立ちます。