猫に関する研究は少ない現状
愛猫家は、愛猫が飼い主を他者と識別しており、コミュニケーションも取れていると感じているはずです。ただ、呼んでも返事をしたり無視したりと気まぐれな反応の多い猫のことなので、自信が持てずにいる方も多いのではないでしょうか。
猫と同じく伴侶動物を代表する犬と比べても、猫に関する研究は少ないのが実情です。しかし日本でも、猫を対象とした研究が増えつつあります。
今回は、猫の音声認識に関する研究を中心にご紹介します。
「猫は飼い主の声を聞き分ける」ことが判明
実験方法
一般家庭で飼育されている20匹の猫を対象に、各家庭に訪問して下記の実験を行いました。
- 飼い主と、飼い主と同性で猫と面識のない他人が猫の名前を呼ぶ声を録音しておく
- 猫だけを部屋に入れ、十分に落ち着いた状態にさせる
- 室外のスピーカーから、30秒間隔で3名の他人、飼い主、4人目の他人の声の順に再生する
猫の様子を撮影し、反応を馴化脱馴化法により分析し、猫が飼い主の声を聞き分けているかを判断します。
馴化脱馴化法
馴化脱馴化法とは、言葉を話せない動物等に、異なる刺激を区別できるかを調べる方法の一つです
対象個体に、同一あるいは同一カテゴリーの刺激を繰り返し提示すると、慣れてきて反応が減少(馴化)していきます。
次に新奇な刺激を提示すると、反応が回復(脱馴化)します。この際、刺激を区別できていないと反応は回復しません。
猫は自分の名前を認識しているか
斎藤慈子氏は、2019年に上智大学の准教授となり、さらに発展した実験を行いました。それは、猫が自分の名前を把握して聞き分けているかという実験です。
一般家庭の猫と猫カフェの猫を対象に、自分の名前と同じアクセントと長さの一般名詞と、同居猫の名前を4つ続けて聞かせ、次に自分の名前を聞かせる実験をしました。
その結果、一般家庭の猫は、自分の名前と一般的な単語および別の猫の名前を区別できることが分かりました。ただし猫カフェの猫たちは、自分と同居猫の名前は区別できていないという結果でした。人と猫の接し方が猫の認識能力に影響を与えているのでしょうか。
他にもこんな研究報告が
飼い主の顔の識別
かつて、猫は人の顔を認識できないという研究がありましたが、最近、麻布大学の高木佐保氏の研究で、猫は飼い主の顔を識別しており、飼い主の声を聞いた時に飼い主の顔を想像しているということが分かりました。
人の気持ちを読む
古い研究ですが、猫は人が落ち込んでいると普段よりも頭を擦り付ける行動が増えるという報告があり、このことから猫は飼い主の気分を読んで行動を変化させると考えられています。
まとめ
今日のねこちゃんより:マメ♂ / 1歳 / メインクーン / 5.8kg
猫の飼い主が経験的に感じていることが専門家の研究で立証されると、飼い主としては自信を持って愛猫と接することができ、それをベースにさらにコミュニケーションを深めることができます。
これからも、専門家による猫の認知や感情などの研究に注目していきたいですね。