猫の鼻の外観
猫の顔でどこからが鼻なのかは分かりにくいかもしれませんが、猫の鼻は眉間の辺りから始まっています。猫の顔を横から見た時に前方に出っ張っている部分が鼻(人の鼻すじ、鼻梁にあたる部分)で、そこより上側では毛が頭の方に向かって生えているのに対し、鼻では毛が鼻先に向かって生えています。
毛が生えていない鼻先の部分を「鼻鏡」と言います。鼻鏡の途中から縦方向に口まで、まっすぐに伸びている溝を「上唇溝」と言います。
空気の出入り口となる鼻の穴は、専門用語では「外鼻孔」と言います。
猫がにおいを感じる仕組み
動物がにおいを感じるためにはまず、鼻からにおいの分子を吸い込む必要があります。鼻腔の奥には嗅上皮で覆われた粘膜があり、そこでにおいの分子を捕捉します。嗅上皮はとても入り組んだ構造の上にひだを作りながらびっしりと敷き詰められているので、広げると約20平方センチメートルにもなるそうです。ちなみに、人の嗅上皮の面積は約2~4平方センチメートルだそうです。
嗅上皮中の嗅細胞の数は文献によって違いがありますが、猫の嗅細胞の数は人間の数倍あるそうです。におい分子を捉えた後反応する嗅細胞からの電気信号は、嗅球を通って大脳辺縁系の嗅覚野まで伝えられます。
猫の鼻のちょっと面白い話
猫の鼻は温かいものを敏感に感知する?
猫の鼻は0.5℃の違いも識別できるという記事を多く見かけますが、科学的な根拠ははっきりとは示されていないようです。もちろん、毛に覆われていない猫の鼻(鼻鏡)は人間の皮膚と同じように温度を感じますし、猫は食べ物を食べる前に臭いをかぎますので、その際に食べ物の温かさを感じることでしょう。
犬については、1.6m先にある31℃の物体を検知することができたとする実験結果があり、鼻が温度センサーとしても獲物を探すのに役立つ可能性が指摘されています。猫でも、子猫が母親の乳首を探すのに嗅覚に加え温かさを感知している可能性があったり、犬と同様に温かさをも感知できると獲物を探す際に役立つと考えられることから、猫の鼻が人間の皮膚よりも敏感な温度センサーとして働いている可能性は十分に考えられるでしょう。
【犬の鼻が敏感な温度センサーとして働いていることを指摘している論文】
Bálint, A., Andics, A., Gácsi, M. et al. Dogs can sense weak thermal radiation. Sci Rep 10, 3736 (2020).
https://doi.org/10.1038/s41598-020-60439-y
においを嗅ぐと鼻がヒクヒクするのはなぜ
においをよく嗅ごうとしている時は、におい分子をたくさん取り込もうと外鼻孔を広げます。外鼻孔を広げるために動かす筋肉によって、鼻自体もヒクヒクしているように見えるのです。
猫の個人認証は鼻で!?
鼻鏡の表面のざらざらした部分が作り出す紋様を「鼻紋」と言います。鼻紋は、人間の一卵性双生児でも異なる指紋と同様に、クローンでも違う紋様になり、かつ一生変わりません。鼻紋で猫の固体認証をする時代になるかもしれませんね。
猫に鼻毛はありません
人間の鼻毛は、鼻に入ったほこりや病原体などをキャッチし、鼻腔の温度と湿度を一定に保つ役割を果たしています。しかし、鼻毛を持つのは人間やチンパンジーなどのごく一部の動物のみで、猫には鼻毛はありません。鼻粘膜の線毛という非常に細かい毛が異物を捕捉し、線毛運動により排出しています。
猫の鼻が濡れている理由
鼻が濡れているとにおいの分子をキャッチしやすくなるため、活動時の健康な猫の鼻は、大抵湿っています。鼻鏡にある汗腺や鼻腔から出てくるその他の分泌液によって、また猫自身が鼻をなめることなどによって、鼻が湿っているのです。
昔はよく、猫の鼻が乾いていると体調が悪いとも言われていますが、鼻が乾燥していると必ず体調が悪いというわけではありません。睡眠時や起きたばかりの時などの鼻は乾いています。
ただし、皮膚病があったりとても体調が悪くて健康的な生活が送れていない場合には、鼻が異常に乾いてしまうこともあります。
猫の鼻が乾いていると何に困るのか
前述の通り、鼻が湿っているとにおいの分子をキャッチしやすくなります。逆に言うと、鼻が乾燥していると、においを感じにくくなってしまうかもしれないということです。
老化や病気により代謝が落ちたり、猫自身があまり鼻をなめなくなることで鼻が乾燥しやすくなります。猫に「食べたい」と思ってもらうには、においが大事なので、においを感じにくくなることは食欲が低下する原因の一つとなります。
老猫や病気の猫では、部屋を乾燥させないこと、複数箇所で水を飲めるようにすることがより重要となるでしょう。また、フード(ウェットフード)を人肌程度に温めるとにおいが強くなり、食欲が出ることもあります。
まとめ
今日のねこちゃんより:れもん♀ / キジシロ / 4kg
猫の健康チェックの際には、鼻の乾燥だけではなく鼻水がないかも確認しましょう。
透明でサラサラした状態の鼻水は、何かしらの異常の初期段階のことがあります。鼻血が混じっている時や、膿の混じった粘性のある黄色や緑色のような鼻水は、感染症や腫瘍の可能性があります。このような場合は、迷わずに動物病院で診てもらいましょう。