飼い主の喫煙が飼い猫に与える影響

飼い主の喫煙が飼い猫に与える影響

喫煙が健康に悪いことを知らない人は皆無に等しいでしょう。一昔前と比べると、喫煙者を見かけることがだいぶ少なくなりました。しかし、それでも喫煙者がゼロになった訳ではありません。飼い主が愛煙家だった場合に飼い猫にどのような影響を与えるのかについて整理しました。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

喫煙による健康被害

猫と喫煙者

喫煙が、がん、循環器疾患、呼吸器疾患などに罹るリスクを高めることは、周知の事実です。また、喫煙者が吸い込む主流煙よりも、タバコの先から流れ出る副流煙の方が多くの有害物質を含むことも知られています。

法律も整備され、最近は喫煙者をあまり見かけなくなりました。禁煙された方も増えたのでしょうが、実際には肩身の狭い思いをしながら、ご自宅などの限られた場所で喫煙を続けておられる方も多いと思います。

では、猫の飼い主さんが愛煙家だった場合、副流煙が飼い猫に与える影響はどうなのでしょうか。

飼い主の喫煙が猫に与える影響

病気の猫

飼い主の喫煙が猫に与える健康被害についても、人への影響同様、心臓循環器系、呼吸器系、皮膚系やアレルギー、目や鼻腔内の炎症など、様々な疾病の発症リスクを高めることが分かってきました。

そして、愛煙家の飼い主にとってショッキングな、飼い主の喫煙状況が猫のリンパ腫発生率に与える影響について、明確な数値も示されたのです。

非喫煙者を飼い主にもつ猫の発症率を1とした場合、飼い主が喫煙者の場合のリンパ腫発生率は2.4倍、その飼い主の喫煙歴が5年以上だと3.2倍、その飼い主の喫煙本数が1日に20本以上だと3.3倍、家族に2人以上の喫煙者がいる場合は4.1倍になるというのです。

猫は私たちよりもサイズが小さいので、人と同じ量の副流煙で何十倍もの影響を受けてもおかしくありません。

喫煙が猫に影響を与えるしくみ

グルーミングする猫

それでは、喫煙中に出される有害物質を含んだ副流煙が猫の体内に入るまでのしくみについて整理してみましょう。

副流煙の行方

タバコの先から出た副流煙の中には、主流煙以上の有害物質が含まれています。有害物質は重いので、落下していきます。通常、猫は床の上で生活していますので、副流煙は床にいる猫たちに吸い込まれます。

直接猫の被毛や皮膚に付着した有害物質は、猫のセルフグルーミングにより口から直接体内に取り込まれます。

なお、室内に空気清浄機があった場合でも、すべての有害物質を除去することはできませんし、換気扇の下で喫煙した場合も、床に落下する有害物質をすべて外に排出することは不可能です。

残留有害物質の行方

人の手を舐める猫

タバコの煙は時間が経つと消えますが、有害物質は消失しません。有害物質は、床の上、猫の被毛や皮膚だけではなく、ソファや喫煙者の洋服など、いろいろな表面に付着したまま残留します。そして、その残留物を猫が舐めれば、そのまま体内に取り込まれてしまうのです。

猫は飼い主に対してグルーミングをしてくれますので、たとえ飼い主が猫がいる部屋とは別の場所で喫煙したとしても、有害物質が付着した手や洋服のまま愛猫と触れ合えば、猫へのリスクがなくなる訳ではないのです。

まとめ

パイプをくわえる猫

タバコの煙に含まれる有害物質が猫の体内に取り込まれるまでのしくみを見たことで、愛煙家の飼い主が取るべき手段は禁煙しかないことをご理解いただけたのではないでしょうか。別室や換気扇の下、ベランダなどでの分煙も、愛猫に対しては何の効果もないのです。

猫のリンパ腫は悪性です。苦しい思いをするのは愛猫です。自分の健康のためだとできなかった禁煙も、愛猫をリンパ腫にさせないためだと思って禁煙に再チャレンジしていただければ幸いです。

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