猫と飼い主の「絆」はどうやって作られる?4つの過程

猫と飼い主の「絆」はどうやって作られる?4つの過程

猫たちにも性格の違いがありますが、基本的に臆病な動物なので人間と信頼関係を築くまでには時間が必要です。今回は【猫と信頼関係を築くまでの過程】について解説いたします。なかなか仲良くなれなくてもどかしい状態でも、誠実に向き合っていけばきっと絆を結べるでしょう。

猫にとっての「信頼」とは

抱っこされるアメリカンショートヘアの子猫

ブランベルの5つの権利

1965年、イギリスのブランベル委員会が「ブランベルの5つの権利」というものを発表しました。これは人間と生きる動物たちの福祉を考えた権利で、

  • 1.疫病からの解放
  • 2.空腹や喉の渇きからの解放
  • 3.極端な暑さ寒さからの解放
  • 4.物理的な行動の自由
  • 5.自然な態度で表現できる自由

の5つが掲げられています。

マズローの欲求階層説に例えると

これをもっとシンプルに、人間の欲求をピラミッド状の階層に例えたアメリカの心理学者マズローの「人間の欲求階層説」に当てはめてみます。動物の欲求を"必要性の高い順番"に並べると、

  • 1.生理的欲求
  • 2.安全欲求
  • 3.行動欲求

と考えることができます。

「生理的欲求」とは生命維持に最低限必要な行動の欲求で、食べる、飲む、排泄、呼吸などを指します。「安全欲求」とはケガや病気から遠ざかって生命を維持し続けるという欲求です。最後の「行動欲求」とは遊ぶこと、探索すること、触れ合うこと、交尾をすることなどです。

安心安全が確保されて「信頼」が生まれる

マズローの欲求階層説の考えでは、これらは1~3の順で下からピラミッド状になっています。人間の場合は5段階ありますが、動物の場合は人間よりもシンプルに3段階と考えられます。このピラミッドの頂点まで欲求が満たされると幸福で満たされた状態である、というのがマズローの欲求階層説です。

猫の場合を考えると、人間よりもはるかに野生を強く残した動物です。そのため、身の安全への欲求が何よりも強く、自分の身が安全であると実感してから、ようやく他者との絆を結ぶことができるでしょう。

1. 生活に対する安心感

猫にごはんをあげる男性

猫と絆を結びたいと思ったとき、まず飼い主が行うべきは「生命維持の確保」です。当たり前でしょう?と思いますが、猫たちにとっては何よりも重要事項なのです。栄養失調と無縁のごはん、新鮮な水、清潔なトイレ、暑くも寒くもない部屋…。

そういった最低限の生活環境が整うことで、猫たちは初めて自分の身の安全を実感することができます。そして、猫たちは「この人は自分の世話をしてくれるのだ」とちゃんと理解します。自分の生命を守ってくれる存在のことを猫たちは信頼するのです。

2. 環境に対する安心感

布団の上で伸びて眠る猫

生命維持が保障されて少し余裕が出てくると、猫たちは環境の安全を確認し始めます。新しく猫ちゃんを迎え入れたときや引っ越しをしたときなど、猫たちは環境の変化に戸惑って隠れて出てこないことも多くあります。

しかし、しばらくすると恐る恐る家の中を探索し始めるでしょう。一通りチェックし終わって数日過ごすと、猫たちは「ここは安全チェック済みの場所だ」「この部屋は苦手だから、入らないようにしよう」などと理解して、くつろぎ始めるでしょう。

3. 人に対する安心感

飼い主の足にすり寄る猫

身の安全が飼い主さんへの安心感に繋がる

生活や環境に安心を感じて、初めて猫たちは飼い主さんに対して安心感を抱くことができるでしょう。猫は単独行動で自由気ままなイメージがありますが、猫にも「触れ合いたい」「甘えたい」という欲求があります。自分の身の保障ができて初めて、そういった愛情の欲求を叶えようとできるのです。

猫は家族を「役割」で認識することも多い

猫は人間に対しても「安心安全」を求めます。最初は「敵か味方か?」という警戒心で私たちを確認し、そこで敵ではないことがわかると徐々に「この人は遊んでくれる」「この人はごはんをくれる」というふうに私たちを認識していきます。

おもしろいもので、猫の中で家族一人一人の役割分担があることもあります。猫はそのときの要求に合わせて、いつもごはんを与える係の人を起こしに行ったり、遊び方が上手な人のところに率先しておもちゃを持っていったりすることもあります。

4. 意思疎通できる信頼感

本を読む人の膝で寛ぐ猫

猫の気持ちを理解してあげることが重要

猫に好かれるには「猫が嫌がることをしないこと」「猫の要求を叶えてあげること」が重要です。

そのためには、猫の感情を読み取る必要があります。例えばしっぽの様子や鳴き声、なぜ遠くから見つめてくるのかなど、猫の行動からその感情を読み取ってあげる必要があります。

「安心」が「信頼」に変わっていく

猫のサインに気付かず、悪気なく猫に不快感を与えてしまっている状態では、猫に「この人は敵ではないけど、ちょっと嫌だな」というふうに思われてしまいます。

猫の「こうして欲しい」「これはしてほしくない」という気持ちを理解できれば、猫たちは「この人は意思疎通ができる心地の良い人」と認識してくれるでしょう。そうすることで、猫と飼い主は信頼関係を築くことができるのです。

まとめ

ミモ

猫と信頼関係を築くには時間が必要です。猫ちゃんの性格や育った環境にもよりますので、一概にどのくらい時間を要するのかは言えません。2~3日でグデングデンの甘えを見せる子もいれば、2週間ほどでようやく甘えられる子もいますし、1か月以上警戒心を抱き続ける子も少なくありません。

まずはごはんやトイレなど、最低限の生活の質を保障してあげましょう。そして、猫にとって快適なお部屋を提供してあげることで、猫たちは安心して心をほどくことができます。

そうして安心して暮らしていく日々の中で、猫が飼い主さんのことを「この人は自分の気持ちを分かってくれる人」と理解することができれば、猫たちは徐々に飼い主さんのことを信頼してくれるでしょう。

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